違いを強みに変えるキャリア戦略:ニューロダイバーシティの視点から(1)
1. ニューロダイバーシティとは?
「自分らしく働くって、どういうことだろう?」
「周りと何かが違う気がするけれど、それが自分の強みになるのだろうか?」
そんな思いを抱えたことはありませんか?
もしこれまで、自分の特性をどう活かせばいいのか悩み、キャリアにおいて行き詰まりや戸惑いを感じていたなら、それはあなただけではありません。特に他の人と異なる感性や感覚を持っていることで、周囲に合わせるのが難しく、理解してもらえないまま、自分の内に秘めてきた方も多いかもしれません。
そうした方々にとって、「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という考え方は、特性を捉え直す手がかりになるかもしれません。筆者は、キャリアコンサルタントとして6,000人以上の方々と向き合ってきた中で、ニューロダイバーシティの特性を持つ方々が、一般的なキャリア支援では十分に支援されにくい現状を見てきました。
ニューロダイバーシティとは、「脳神経の多様性」を意味し、人間の認知スタイルや思考には幅広いバリエーションがあることを示す言葉です。従来の社会の枠組みでは「困難」と見なされてきた特性も、ニューロダイバーシティの視点から見ると、それはただの「違い」であり、一人ひとりの個性の一部として尊重されるべきもの、になります。
たとえば、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム)などの診断を受ける方も、診断がつくまでの道のりや心の抵抗は容易ではありません。また、診断に至らなくても似たような特性を持つ方も多く、そうした方々にとってもニューロダイバーシティは自身を見つめ直すヒントとなり得るのです。
これまで、キャリアや仕事の適性を考えるとき、多くの人は「社会的な基準」や「一般的な成功像」にとらわれがちです。しかし、ニューロダイバーシティの視点で考えると、自分の特性こそが独自の価値を生む鍵であると気づくでしょう。そして、その特性を強みとして活かすことで、自然とキャリアの可能性が広がっていきます。
また、組織にとっても、この視点は新たな可能性をもたらします。今、企業経営の世界では「人的資本経営」という考え方が重視され、一人ひとりの人材が企業の競争力を支える存在となっています。多様な特性を尊重し、各人の潜在力を活かすことで、組織はイノベーションを生み出し、変化の激しい時代を生き抜いていけるのです。
この記事では、ニューロダイバーシティの概念を通じて、自分らしいキャリアを築くためのヒントや実践的なアドバイスをお伝えします。
特性を理解し、それを活かせる働き方や環境を見つけることで、ストレスが軽減され、持ち前の強みが自然と発揮されるようになるでしょう。
なお、この記事は、大学院での研究知見を踏まえ、今まで支援が行き届かなかった方々を勇気づけ、新しいキャリアの視点をできるだけわかりやすくお伝えするために執筆しました。
この連載を通じて、あなたの特性や強みが新たな可能性を開くきっかけとなることを願っています。
さあ、ニューロダイバーシティの特性を活かしたキャリアに向けて、新たな扉を開きましょう。