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【書籍】記憶に残る営業術: 本物の信頼を得る12のルールを人事にも活かすー福島靖氏

 福島靖著『記憶に残る人になる――トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』(ダイヤモンド社、2024年)を拝読しました。

 本書は、営業の経験を通じて得た教訓をもとに、単なる技術的なセールストークではなく、「人としての魅力」や「信頼関係」の重要性を強調しています。営業職に限らず、様々な仕事や人間関係において他者から信頼を得るためのヒントを提供する一冊といえます。内容から、人事の立場としてのアウトプットを考察してみたいと思います。

著者の営業キャリアの始まり

 福島氏は、31歳で営業職に挑戦しましたが、当初はまったく成績が振るわず、営業チームの中で最下位に甘んじていました。自信を失い、やがて営業を辞めるべきかと悩む日々が続きました。携わった法人営業は、特に競争が激しいもので、新規顧客の開拓や法人カードの提案など、高いスキルと忍耐力が求められました。

 そのため、多くの営業本を読み、成功している同僚の真似をしてみたものの、結果は一時的なものでしかありませんでした。DM(ダイレクトメール)を大量に送り、セールストークを練習し、終電まで資料作成に励む日々。しかし、お客様との信頼関係を築くためのものではなく、「売上を上げるためだけの営業」になってしまっていました。その結果、心のどこかで空虚さを感じ、やがて「もっと誠実な営業がしたい」と強く思うようになります。

信頼される営業への転換点

 営業成績が低迷する中で、一つの転機を迎えます。それは、ただ契約を取るための営業をするのではなく、もっとお客様と人間的なつながりを持つことが大切だと気づいた瞬間です。ある日、ひとりの中小企業の経営者と出会い、仕事の話ではなく、プライベートな会話を通じて意気投合しました。その結果、その経営者は契約を申し出るだけでなく、別のお客様も紹介してくれました。この経験から、「人として信頼されること」が営業の成功の鍵であることを実感します。

 この出来事をきっかけに、「自分が商品を売るのではなく、相手の記憶に残る人になる」という新しい目標を立てました。営業という職業においては、商品やサービスの優位性だけでなく、その提供者としての「人間性」が非常に重要だと考えるようになったのです。この「人間性」は、単に優れたトークスキルや外見的な魅力を指すのではなく、相手と誠実に向き合い、信頼を得るための真摯な姿勢を意味しています。

「12のルール」とは

 本書で紹介される「12のルール」は、福島氏が営業活動の中で学び、実践してきた具体的な行動指針です。これらのルールは、どれもシンプルでありながら深い意味を持っています。

1. 顧客より先に「ファン」をつくる

 営業の世界で成功するためには、単に顧客を増やすだけではなく、「ファン」をつくることが大切です。ファンとは、商品やサービスだけでなく、提供者としての「あなた」に信頼を寄せ、応援してくれる人々のことを指します。

 例えば、商品を売るためだけに接触するのではなく、相手に対して人間的な関心を持ち、心の通じる会話や交流を行うことで、自然とファンが生まれるのです。著者は、自身が苦境に立たされていた時に、偶然一緒に飲みに行った経営者との会話がきっかけで、顧客がファンになってくれた経験を述べています。ファンを増やすことで、顧客の紹介も増え、信頼関係が広がります。ここで重要なのは、無理に営業をかけるのではなく、「人と人」としての関係を築くことです。

2. すべてに対して「意味づけ」をする

 営業や日常の行動において、ただ単に形だけの行動をするのではなく、その行動に「意味」を持たせることが非常に大切です。

 例えば、お辞儀一つ取っても、単に形式的に行うのではなく、そこに誠実さや感謝の気持ちを込めることで、相手に深い印象を与えることができます。著者は、自分のお辞儀の時間を「4秒」にするというこだわりを持っていました。それは、相手に対してしっかりとした印象を与えるためです。行動に意味を持たせることで、相手に自分が誠実であること、真摯に向き合っていることを伝えやすくなります。

3. 「5秒間」だけ立ち止まる

 商談や営業活動において、ただ一方的に話し続けるのではなく、「立ち止まる」ことが重要です。この「立ち止まる」とは、物理的な意味だけでなく、相手の反応を見て適切に間を取ることを指します。

 例えば、相手の表情や態度から、興味や疑問があるかどうかを見極め、それに応じた対応を取ることが大切です。立ち止まることで、相手に考える時間を与え、自分の話に耳を傾けてもらいやすくなります。また、相手に配慮した気遣いが自然と生まれるため、商談の成約率も高まります。

4. 「傘」を持っていてもささない

 営業活動で、相手を無理に説得しようとするのではなく、必要なときにだけ提案するという姿勢が重要です。たとえ素晴らしい提案や商品があっても、相手がそのタイミングで必要としていなければ、無理に押しつけることは逆効果です。

 例えば、傘を持っていても、雨が降っていないならささないように、相手が必要と感じていないときには、無理に説得するのではなく、相手の状況やタイミングに合わせることが大切です。この姿勢が相手に対する信頼を築き、結果的に長期的な関係性を構築することにつながります。

5. 素朴な「鏡」へと姿を変える

 営業において、ただ商品を売るのではなく、相手のニーズや希望を「映し出す鏡」になることが求められます。つまり、自分の意見や提案を押し付けるのではなく、相手の話に耳を傾け、相手の望むものを見極め、それに応じた提案をするということです。福島氏は、リッツ・カールトンでの経験を活かし、ホスピタリティ精神を営業に応用しました。相手の心の奥底にある潜在的なニーズを引き出すためには、相手をよく観察し、共感しながら、相手が本当に求めているものを見つけ出すことが重要です。

6. 「無駄」を追究して効率化を実現する

 効率を重視するあまり、無駄を排除しすぎることは、逆に相手との関係性を損なう可能性があります。「無駄」に見える行動の中にも価値があると考えます。たとえば、商談の合間に交わされる雑談や、ビジネスとは関係のないプライベートな話も、信頼関係を築く上で重要です。無駄のように見える行動こそが、相手との関係を深め、効率的な仕事の進め方に繋がることがあります。単なる効率化ではなく、相手との関係性を重視することで、長期的なビジネスの成功が実現します。

7. 「感謝」の方法を決めない

 感謝の気持ちは、どのようなビジネスシーンでも重要ですが、その表現方法を一つに固定しないことが大切です。営業で契約を断られた際にも、お礼状を書いたことで顧客から感動された経験を持っています。このように、契約が成立しなかった場合でも、感謝の気持ちを伝えることが信頼関係を築く鍵となります。感謝の方法やタイミングは一つではなく、相手に応じた柔軟な対応が必要です。また、感謝を伝える対象も広く持つことが重要で、顧客だけでなく、同僚や上司、部下にも感謝を伝えることで、周囲との信頼関係が深まります。

8. 「緊張」できる場面を自らつくる

 営業活動において、常に安定した状況に甘んじるのではなく、時には自ら「挑戦する」場面を作り出すことが重要です。挑戦することで新たなスキルや経験を得るだけでなく、周囲からも評価され、信頼を得ることができます。福島氏は、リッツ・カールトン時代に得た経験を活かし、営業の現場でも新しい挑戦を続けることが成功への鍵だと述べています。緊張感のある場面に自ら飛び込むことで、自己成長が促され、結果的に信頼される営業マンとなることができるのです。

9. つねに「Unko」でいる

 ここでの「Unko」とは、決して軽蔑的な意味ではなく、謙虚であり、自己評価を見直し続ける姿勢を指しています。営業の現場では、成功を重ねると自信過剰になりがちですが、常に自己を省みて謙虚でいることが大切です。福島氏は、学歴や経歴に関わらず、自分の弱点を認め、それを改善する努力を続けることが、結果的に強みとなると考えています。自分を「Unko」だと思うことで、常に成長を求める姿勢を保ち、相手からも信頼される存在になることができるのです。

10. 誰よりも自分がいちばんに「感動」する

 相手を感動させるためには、まず自分自身が感動を感じることが重要です。営業の場面でも、相手に感動を与えるためには、自分が心から感動を覚えるような体験や経験を大切にすることが必要です。感動は人を動かす力を持っており、それを自分自身が実感することで、自然と相手にも伝わるのです。福島氏も、自分自身が感動を感じた瞬間を振り返り、それを営業活動に活かしてきました。感動を大切にすることで、相手との信頼関係が深まり、長期的な成功を手に入れることができます。

11. 「最後尾車両」に乗ってカーブを待つ

 営業活動において、常に前に進むことが求められますが、時には「待つこと」も重要です。「最後尾車両に乗ってカーブを待つ」という例えを使い、相手のペースに合わせた営業活動の重要性を説いています。焦って相手を急かすのではなく、相手が準備が整うまで待ち、その時に適切な提案をすることで、相手から信頼される営業マンになれるのです。タイミングを見極める力も、営業活動においては重要なスキルです。

12. 「人間」になる努力を怠らない

 最後に、最も重要なルールとして、「人間としての成長」を忘れないことが挙げられます。営業という職業に限らず、あらゆるビジネスや人間関係において、相手との信頼関係を築くためには、まず自分自身が「人間らしくあること」が必要です。福島氏は、営業という役割を超えて、人としての魅力や誠実さを大切にし、相手に対して真摯に向き合うことが、結果的に大きな成果を生むとしています。「人間力」を磨くことで、単なる契約を超えた深い信頼関係が生まれ、それが長期的なビジネスの成功に繋がるのです。

営業活動の本質

 本書で著者が繰り返し述べているのは、営業活動の本質は単なる商品やサービスの売り込みではなく、「人と人」としての信頼関係を築くことにあるという点です。営業の成功は、顧客との長期的な信頼関係を築き、顧客が自ら「この人と付き合いたい」「この人から買いたい」と思ってくれることによって得られるものです。

 福島氏も、営業の技術やスキルに頼らず、相手に対して誠実であること、そして常に自分らしく振る舞うことが重要だと強調しています。営業の場面で「セールストーク」に頼らず、むしろ「売らない」という選択肢を取ることさえあるといいます。相手にとって最適な提案をするためには、時には商品やサービスを売らず、相手にとって必要な時期を待つことも大切だと著者は説いています。

 また、リッツ・カールトンで学んだホスピタリティの精神を営業活動に取り入れることで、自分自身が提供する価値を見出しました。リッツ・カールトンの哲学である「クレド(信条)」に基づき、相手にとっての最適な対応を自分で考え、行動することが営業の成功に繋がると考えています。

まとめ

 本書は、営業の現場に限らず、どのような職業や状況においても活用できる「人間関係の構築法」を提示しています。単なる営業スキルではなく、相手との信頼関係を築くための「人としての在り方」に焦点を当てたこの本は、仕事だけでなく、日常生活においても非常に有用な考え方を提供してくれます。

 「12のルール」を実践することで、誰でも「記憶に残る人」になり、信頼される存在になれるでしょう。そして、仕事の場面でも、プライベートでも、人との関係性を大切にし、長期的な成功を収めるためのヒントが詰まった一冊でしょう。次に、早速人事の立場での応用を考えてみたいと思います。

「12のルール」を人事の立場から考察してみる

 福島氏は営業の立場で本書を執筆されていますが、「12のルール」は万人に応用が効くものです。ここでは、人事の立場での応用を考察してみたいと思います。

 本書を人事の立場から応用することで、組織における信頼関係の構築や、従業員の成長支援、さらには組織の長期的な発展に向けた人材育成ができるようになります。
 営業の世界で培われたルールは、人事においても有効に機能し、特に人材マネジメントや人事評価、コミュニケーションの場面で活かすことができます。ここでは、それぞれのルールを人事の立場に置き換え、応用例を考え、組織全体にどのような影響を与えるかを考察してみます。

1. 顧客より先に「ファン」をつくる

従業員や経営陣の「ファン」を作るための信頼構築
 営業において、顧客を契約に導く前にまずは「ファン」をつくることが重要であるとされますが、人事においても同様の考え方が当てはまります。従業員や経営陣、さらには外部の候補者など多くのステークホルダーと関わるため、単なる「管理者」や「手続き担当者」ではなく、信頼できるパートナーとして認識されることが求められます。従業員が「この人事担当者なら、相談してもいい」「この人の提案を受け入れたい」と思うような信頼関係を築くことで、業務の円滑な進行が可能になります。信頼される人事担当者は、従業員からのフィードバックも自然と集まりやすくなり、組織全体の課題解決に繋がる貴重な情報を手に入れることができます。また、従業員が抱える問題や不安に対しても適切に対応でき、結果的に組織全体のエンゲージメント向上に貢献することが可能です。

 さらに、経営層との関係においても信頼が重要です。人事は経営戦略の実行を支援し、組織の発展を後押しする役割を担うため、経営層に対しても自分を「ファン」として捉えてもらうことが効果的です。例えば、経営層が人事の意見を信頼し、その提案に耳を傾けることで、組織全体が柔軟に変化し、成長できる環境が整います。

2. すべてに対して「意味づけ」をする

人事施策や制度に明確な意義を持たせ、従業員に理解させる
 人事部が行う施策や制度には、ただ形だけの導入ではなく、その背景にしっかりとした「意味づけ」を持たせることが重要です。例えば、評価制度の変更や新しい研修プログラムの実施、組織改編などが行われる際、その施策の目的や意図を従業員にしっかりと説明し、理解してもらうことが必要です。背景にある「意味」を従業員が理解することで、制度に対する納得感が生まれ、積極的に参加する姿勢が育まれます。特に評価制度においては、その公平性や透明性が重要視されます。従業員に対して、「なぜこの評価基準が導入されたのか」「どのような成長を期待しているのか」を明確に伝えることで、従業員のパフォーマンスを引き出し、モチベーションを高めることができます。

 また、「意味づけ」をすることで、従業員は自分たちの役割や目標を理解し、組織に対するコミットメントを深めます。単に「指示されたから」や「ルールだから」ではなく、「この制度は私の成長に繋がる」「この評価は公正に行われる」といった納得感を得ることで、従業員は積極的に制度を受け入れ、結果的に組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。

3. 「5秒間」だけ立ち止まる

従業員の声を聞くために、時間をかけて対話する
 施策や制度を進めるにあたって、効率性を重視しすぎるあまり、従業員の意見を聞き漏らしてしまうことは避けなければなりません。ここでの「5秒間立ち止まる」という考え方は、従業員とのコミュニケーションを取る際に、急がず、相手の反応をしっかりと確認しながら対話を行うことを示唆しています。人事の立場からすると、従業員一人ひとりの声に耳を傾け、意見やフィードバックを得ることが非常に重要です。

 従業員が何かしらの不満や疑問を抱いている場合、それを適切に解消するためには、まず話を聞く時間を設けることが必要です。ヒアリングを通じて、従業員の悩みや提案を把握することができれば、それに応じた施策や対応を取ることが可能になります。
 また、フィードバックを得る際には、相手が本音を話せるような環境を整えることが重要です。例えば、面談時にただ形式的に話を聞くだけでなく、従業員が自分の意見を自由に話せる雰囲気を作り、必要に応じて立ち止まりながら会話を進めることで、より深い理解が得られます。

4. 「傘」を持っていてもささない

必要以上に干渉せず、従業員に任せる姿勢を取る
 人事施策を推進する上で、時には「強制」や「管理過剰」にならないよう配慮することが大切です。たとえ良い制度や施策があっても、すべての従業員に無理に適用しようとすると、逆に反発を招く可能性があります。著者が「傘を持っていてもささない」と言うように、人事も、従業員に対して「必要なとき」に「必要な支援」を提供することが求められます。

 例えば、新しい評価制度やスキルアップのための研修を導入した際、その施策が全ての従業員にすぐに受け入れられるわけではありません。従業員がそれを必要と感じ、成長に繋がると実感したときに初めて、施策が効果を発揮します。したがって、無理に押し付けるのではなく、従業員の成長やニーズに合わせた柔軟な対応が大切です。これは、信頼関係を築く上でも重要であり、従業員が自ら進んで制度を活用できる環境を提供することが望ましいでしょう。

5. 素朴な「鏡」へと姿を変える

応用: 従業員のニーズや課題を反映する「鏡」となる
 
人事の役割は、従業員のニーズや課題を正確に把握し、それに基づいた支援を行うことです。このルールは、単に指示や制度を与えるだけでなく、従業員の意見やフィードバックを受け止め、それを「反映する鏡」として機能することを意味しています。従業員にとって何が必要なのか、どのようなサポートが最適なのかを見極め、その要望に応じた提案や施策を実行することが求められます。

 例えば、人事評価制度の見直しや新たな福利厚生の導入に際しては、従業員が本当に必要としているものを把握することも重要です。単なる一般的な施策ではなく、従業員の声を反映した、組織のニーズに合った制度を整備することで、より効果的な成果が期待できます。さらに、従業員の潜在的なニーズを引き出し、適切なサポートを提供することで、彼らのパフォーマンス向上やモチベーションの維持に繋がります。

6. 「無駄」を追究して効率化を実現する

「無駄」に見える時間を大切にし、従業員との関係を築く
 業務効率を追求する一方で、従業員との「無駄」と思われる時間や雑談も大切にすることが重要です。人事業務は往々にして効率的に進められることが求められますが、効率ばかりを優先しすぎると、従業員一人ひとりとの信頼関係が希薄になる危険性があります。例えば、面談や評価の際、短時間で結論を出すのではなく、従業員が抱えている問題や意見にじっくりと耳を傾ける姿勢が重要です。

 また、組織全体を効率化する上で、従業員同士のコミュニケーションや雑談、非公式な場での交流が意外な形で成果を生むことがあります。これらの「無駄」な時間こそが、信頼関係を強化し、組織内での協力体制やチームワークを向上させる要素となるのです。したがって、人事担当者としては、単なる効率化に囚われず、従業員との「無駄」な時間を大切にすることが、長期的な成果に繋がると考えるべきです。

7. 「感謝」の方法を決めない

感謝の気持ちを柔軟に表現し、従業員のモチベーションを高める
 従業員の努力や貢献に対して感謝を示すことは、人事の重要な役割の一つです。しかし、その感謝の方法を一つに決めつけず、柔軟に対応することが求められます。例えば、日常的な業務に対する感謝は、言葉だけではなく、具体的な形で示すことも効果的です。従業員一人ひとりの貢献を評価し、それに応じた感謝の形を選ぶことで、彼らのモチベーションやエンゲージメントを高めることができます。

 また、感謝の気持ちを伝えるタイミングも重要です。例えば、年度末や四半期ごとの業績評価の際にはもちろん、日常の些細な場面での貢献にも感謝を示すことで、従業員は自分が常に組織にとって必要な存在であると感じやすくなります。感謝の気持ちを柔軟に伝えることで、従業員との信頼関係がさらに深まります。

8. 「緊張」できる場面を自らつくる

従業員に挑戦の機会を提供し、成長を促す
 従業員が成長するためには、新たな挑戦の機会が必要です。従業員に適度な緊張感を持たせ、自己成長を促すための場を提供することが重要です。例えば、新たなプロジェクトのリーダーシップを任せたり、責任ある役割を与えることで、従業員は新しいスキルを習得し、自分の能力を発揮できる機会が得られます。

 従業員が成長するためには、快適な領域に留まらず、少しの不安や緊張感を持って取り組むことが大切です。従業員が自己成長できる環境を整え、その中で支援を行いながら、成長のサポートを続けることが求められます。挑戦の機会を与えることで、従業員のモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンスも向上します。

9. つねに「Unko」でいる

謙虚さを持ち、常に自己成長を追求する姿勢を保つ
 人事として、常に謙虚さを持ち、自分の仕事や役割に対して見直しと改善を続ける姿勢が重要です。従業員や経営陣とのコミュニケーションにおいても、自分の知識や経験を過信せず、常に他者から学び続ける姿勢を保つことで、より良い提案や対応ができるようになります。

 人事業務においても、組織のニーズや環境が変化する中で、自己を省みて、常に最適な方法を模索することが求められます。また、従業員との信頼関係を築く上でも、自分が謙虚であることが重要です。謙虚な姿勢を持つことで、従業員も安心して意見を述べやすくなり、結果的に組織全体の改善に繋がることが期待されます。

10. 誰よりも自分がいちばんに「感動」する

従業員の成果に感動し、その努力を認める
 従業員が成果を上げた際には、ただ形式的に評価するだけではなく、心から感動し、その努力を称えることが重要です。自分自身が感動し、それを従業員に伝えることで、彼らのモチベーションはさらに高まります。例えば、従業員が予想以上の成果を上げた場合や、困難なプロジェクトを乗り越えた際には、その努力に対して率直に感動を表し、評価することが必要です。

 感動する姿勢を持つことで、従業員は自分の努力が組織にとって価値があると感じ、次のチャレンジにも積極的に取り組む意欲を持ちます。従業員の成長や成功を心から喜び、その成果を共に分かち合う姿勢が求められます。

11. 「最後尾車両」に乗ってカーブを待つ

従業員のペースに合わせてサポートを提供する
 人事施策を推進する際には、従業員それぞれの成長ペースや状況に合わせた柔軟な対応が必要です。すべての従業員が同じ速度で成長するわけではないため、個々の進捗に合わせて適切なサポートを提供することが重要です。「最後尾車両に乗ってカーブを待つ」という発想は、従業員のタイミングを見極め、焦らずに適切な時期を待つことを意味しています。

 例えば、スキルアップ研修や昇進のタイミングについても、一律に施策を進めるのではなく、従業員の準備が整ったタイミングで適切な支援を行うことで、より効果的な成果が得られます。従業員一人ひとりの成長を見守りながら、タイミングを見極めて施策を実施することで、従業員との信頼関係を深めることができます。

12. 「人間」になる努力を怠らない

人間としての魅力を持ち、従業員に真摯に向き合う
 単に仕事をこなすのではなく、「人間らしさ」を大切にし、従業員一人ひとりに対して真摯に向き合う姿勢が求められます。評価やフィードバックの場面でも、従業員の感情や立場に寄り添いながら、誠実に対応することが信頼関係の構築に繋がります。

 従業員が人事担当者に対して信頼を寄せ、悩みや課題を率直に話せるような関係を築くためには、自身が「人としての魅力」を持ち、組織全体に対して正直で誠実な姿勢を示すことが重要です。例えば、面談の際には、従業員の話をただ聞くだけでなく、共感や理解を示しながら、従業員の成長やキャリアに真摯に向き合う姿勢を持つことで、信頼を得ることができます。

 このように、「12のルール」を人事の視点で応用することで、組織内での信頼関係を築き、従業員の成長を促進し、結果的には組織全体の発展に寄与することが可能です。人事担当者は、単なる施策の実施者ではなく、「人」として従業員に向き合い、信頼を得ることが、組織の成功に繋がる鍵といえるでしょう。

営業担当者がクライアントと親身に話しており、温かい信頼関係が伝わってくる場面です。モダンでシンプルなオフィスの中、自然光が差し込み、植物や本が知識と成長を象徴しています。この一瞬が、プロフェッショナルな環境での心の通じ合いを表現しています。

以下、竹内明仁さんと福島靖さんのスペースもすばらしい内容でした。


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