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SDGsから考察する「マグロ」の研究レポートその2

まず、伝統的な「一本釣漁」です。

 この漁は熟練を必要とします。
大間の漁師がすごいのは、この技術が職人の域だからです。

だいたい一人から二人の小型漁船で漁に出ます。
最近のマグロ超高値のブームに乗って、
他漁協や未熟な漁師も参入しているようですが、
一本釣りだからと言って品質が必ずいいわけではありません。

 なぜなら、クロマグロは漁獲した直後から、
漁獲のてぎわ、〆の処理、神経抜き、血抜き、内臓の処理、
冷やし込みという一連の作業を的確に素早く行わなければ、
品質に大きな差が出てしまいます。


これを行うには、漁師の職人芸と「秘伝のシステム」があり、
これがブランドになります。
一本釣漁には、このバックボーンが必要です。

 一本釣漁でのマグロ漁は、船上では〆の処理しか行いません。
そのあと漁協まで首にロープを通して海中を曳航します。
この時に波でバウンドしてマグロに血栓が出来たり、
他の船と接触したり、海水温によって魚体を傷めるリスクは
往々にしてあるそうですが、そこを職人芸で乗り切るわけです。

 そして陸揚げ、漁協での血抜きと神経抜き内蔵抜きと
冷やし込みといった一連の作業が行われるのです。
しかし、この工程のどこかで不具合があれば
もう品質に影響してしまいます。


釣り上げたらあっという間に〆て、
決して暴れることのないようにするのが腕であると言えます。
未熟な漁師が増えると、一本釣り自体への不信感にもつながるわけです。

 次に「延縄(はえなわ)漁」です。

 延縄漁は大型の漁船を使用し、船団で漁をします。
やり方としては、漁船から1000m~3000mの幹縄を流し、
その下に100本から500本の針を吊し、活イカなどの餌をつけて、
1時間から1昼夜の間でそれを海中に仕掛けて漁獲します。

 大型の漁船には最新の設備機器を装備して、
たとえば水際で引き上げる際に
電流による即殺法(電流ショッカー)を使い、
出来るだけマグロを暴れさせない工夫を行います。

こうして釣り上げたマグロを船上で
通常10分から15分程度で素早く
〆処理、神経抜き、血抜き、内臓も処理して、
冷やし込みまで船上で行い、
陸揚げの時にはすでに処理が終わっているという方法をとります。

 このことから、身肉の保全や鮮度保持に関しては
このやり方が理想的だとも言われており、
同じく津軽海峡の三厩漁協や、松前さくら漁協でも
この「延縄漁」で行っているほか、
一本釣漁メインの大間漁協においても、延縄漁は取り入れられています。

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 海峡マグロでは取り入れられてはいませんが、
その他の「漁法」も、とりあえず紹介しておきます。

まずは「巻き網漁」。

この漁法は、クロマグロ漁専用では行われません。
サンマやイワシなどの他の魚を獲っている漁船が
シーズンにクロマグロ漁を行うといったかたちになります。

しかし、巻き網船にはマグロ処理のための
高度な設備はありませんから、漁獲されたマグロの
〆から冷やし込みまでの処理が遅れることが多々あります。

漁場も沖合が遠く、鮮度おち、身やけ、
変色劣化のものも多く混じりますが、
だいたいは市場への出荷まで3日くらいかかり、
その間に旨みが増す熟成の日にちが早く訪れることになります。

血抜きをしてないため劣化は早く、市場での評価は低いのですが、
巻き網漁ものは熟成した段階で市場に出ることから、
買ってすぐ食べると旨い。という評価を受けることもあります。

次に「定置網漁」


 半日から丸一日、一定の場所に網を仕掛け、
そこでマグロを漁獲するというやり方です。
このやり方は、どうしても処理てあての〆から冷やし込みが
手遅れという形になり、不要な暴れ方による
体温上昇による「やけ」、褪色や緩みが生じてしまいます。

サクにしてからの熟成期間もコントロールがとりづらく、
お寿司屋さんにはきわめて不評です。
むしろ、寿司職人さんによる、
熟成の見極めのプロの技に依存する品物になります。

最後に「引き網漁」

 引き網とは、二艘の船で網を渡し、
通過する海域の魚をごっそり丸ごと獲ってしまうやり方です。

この漁法によってクロマグロを獲ることはほとんどありません。
なぜなら、魚体が確実に傷むからです。

しかし、近隣の外国の漁船がごっそりやらかすこともあります。 
国内の漁協でこれを行うところはほとんどありません。

結果的に鮮度は落ち、
身焼け、変色、劣化のリスクは本当に多いやり方です。
この漁法で捕られたマグロはもっとも評価が低くなっています。

私が過去に食べたマグロは、
これだったのかも知れないと今は思っています。
いくら安いと言っても、こんなのにしか出会えず、
「マグロはまずい」と思ってしまうことほど
不幸なことはありませんね。

マグロは実に特殊な魚で、
身肉はむしろ「牛肉」に近いとも言われています。

それよりも様々な「縁」によって、
味が本当に変わってしまうと言う極めて「仏教的」な魚でもあるな
というのが私の今回の感想です。

さて、次回は、先ほどまで言っていた「後処理」の作業は
なぜ大事なのかを詳しくご紹介いたしましょう。

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