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♨漫遊記#5 満天の星空・乳頭温泉郷

 何故だか心をくすぐる”秘湯”の響きは、温泉ファンでなくても憧れます。日本全国には、数々の秘湯がありますが、”秘湯”の代名詞と言えば秋田県の”乳頭温泉郷”です。乳頭温泉郷は、多様な泉質の湯が湧き出ている山奥の温泉地です。

 秋田大学で学会があった時に、その日の講演が終わった後に、何人かで乳頭温泉郷に行くことになりました。レンタカーを借りて出かけましたが、出発したのが遅かったので、現地に着いたのは夜でした。いまでもそうかもしれませんが、乳頭温泉郷には電線がありません。流石は秘境です。ここには電気が届いていないのです。

 車を降りると、足元さえ見えない暗闇でした。あんなに真っ暗な暗闇は、生まれて初めてでした。暗所恐怖症ではありませんが、少し不安になるくらいの漆黒の暗闇でした。ふと空を見ると、満天の星空が広がっていました。周囲に灯りが全く無いので、星がきれいに見えるのです。空にはこんなに星が存在しているんだと思えるくらいの、密集した星々でした。たぶん、5等星や6等星くらいまでの星が見えていたのだと思います。

 宿には自家発電の装置があり、灯りが必要な部屋や湯船だけは、薄暗い灯りが確保されていました。たしか、鶴の湯温泉という乳頭温泉郷の中で一番古い温泉に入ったと思います。ここの温泉には4つの源泉と多くの浴槽があって、それぞれ違う泉質のお湯が楽しめました。

 我々のグループは日帰りでしたが、宿には二時間サスペンスドラマ(通称ニサス)のスタッフさんたちが泊まっていました。たぶん、秘湯と殺人を題材にしたサスペンスドラマだったのでしょう。その日には帰っていませんでしたが、前日までは出演者たちが来ていたみたいでした。

 乳頭温泉郷の温泉は素晴らしいですが、肉眼で星を見たいならここが最高です。

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