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秋桜やそれぞれ違ういろかたち|佐々木彩夏・花井悠希・坂本冬美を比較する

コスモスの花がきれいな季節です。実物のコスモスも大好きな花のひとつですが、私にとって思い出深いのはさだまさしさんの歌う「秋桜」です

わたしと「秋桜」の出会い

山口百恵さんなど他の歌手へ提供した曲を自らカバーした「私花集(アンソロジー)」に収録されているのが、さだ氏による初録音です。ギターのイントロで始まり普通にバンドやオーケストラが加わるアレンジでした。

その後のコンサートや別のアルバムでは、ギターのみをバックに歌うバージョンが披露され、フォークギターの練習曲としても親しまれます。このギターを練習が秋桜との出会いです。

練習曲として選んだその曲に、わたしはすっかり魅了されてしまいます。メロディも歌詞の内容にも。なぜ独身男性が、娘を嫁に出す母の気持ちや母を思う娘の気持ちをこんなにもリアルに描けるのか。

さまざまな人に話しを聞いたり、本を読んだり、そういう情報収拾の成果でしょうが、アーティストの想像力(創造力)に改めて驚かされる1曲です。

さだまさし3枚組のベストアルバム。3枚組ならお得価格ですよね。2枚目に「秋桜」のギター中心バージョンが収録されています。2コーラス目から弦がかぶってきますが、あくまでギター主役のアレンジです。

間奏のギターが一応見せ場なのですが、Amのバリエーションだけなので、実はそんなに難しくないです。弾けるとはいってませんよ。(3カポタストでハ短調にします)

肝心の「」をさだ氏はどのように解釈し、表現しているかは別の機会に。本日はその他のアーティストによる「秋桜」を紹介します

ももいろクローバーZ 佐々木彩夏さんの歌う秋桜

さだまさし4,000回記念コンサートで共演もしています。共演なので、2番はさだ氏が歌っていますが、この映像は最初から最後まで佐々木彩夏さん歌唱のものです。

他の歌手にない大きな特徴は彼女独特の歌詞ののせ方です。

歌い出しの歌詞は「うすべにの こすもすが あきのひの」です。最後の音だけ倍の長さであとは同じ音価です。

彼女は「あきのひぃの」と歌っています。他の歌手は「あきのひの」と同じ音価で歌います。彼女は「ひぃ」と倍の音価で歌うため「ぃ」が次小節に食い込んで、「の」が裏拍に移動しています。

このような箇所は他にもあり「アルバムをひらいてぇは」や「おもいでをたどったあら」、「にづくりにてをかりいて」と曲のAパートの最後はもれなく独特の符割になっています。

そして2番の最後。「あなたのこどもでいさせてください」も「くださあい」となっています。1番の最後「しんぱいいらないとわらった」も多少聞き取りにくいが「わらぁった」と聴こえなくもないです。

よく曲を覚えていなかったのでしょうか?

ところがwikipediaによると、2012年8月に同曲の歌唱で大失敗をしたため、同年11月の再挑戦に向け、

歌詞を読み込み、登場人物の設定や物語の解釈を熟考。曲との距離感を縮め、歌詞とコード進行の関係性も頭に入れてからボイストレーニングに臨み、万全の態勢で本番を迎えた

そうです。 (本人のブログからの情報)

このyoutube映像はその再挑戦のもの。それでも、メロディと歌詞ののせ方が頭に入っていなかったのでしょうか。

わたしは、むしろ逆でいれこみすぎた結果ではないかと推測しています。正直ももクロも佐々木彩夏さんもよく知らないです。さっきWikiでみたら「神奈川出身」とあり関西じゃないんだ、と驚いたくらいです。

なぜ関西と思ったかというのが、この歌詞ののせ方。

関西では、1音節の単語の後、母音をひっぱり2音節で発音することがあります。ひをひぃ、てをてぇなどのように。標準語で「手を貸して」が関西流だと「手ぇ貸して」になります。

でも、彼女の歌唱をよく聴き直すと、1音節の単語を伸ばしているのは最初の1ヶ所「あきのひぃ」だけです。

最初に1音節を2音節で歌うメロディで覚えてしまったので、後もそれで通してしまったのか。それとも、普段の彼女の話し方が歌詞のイントネーションに影響してしまったのか。

正解はわかりません。さだ氏はこの再チャレンジエピソードを耳にして、自身の4,000回コンサートのゲストに彼女を呼びました。(同wikiによる)

1番を佐々木さん、2番をさだ氏が歌っていますが、佐々木さんの歌い方は作曲者本人を前にしても、「あきのひぃの」でした。

神奈川出身ですが、関西出身の知人がいて2音節の話し方も特別なものではなかった。生真面目にメロディを覚えたので、Aパートは全部同じになってしまった。音程や抑揚を完璧にするには曲のキーが高すぎた(山口百恵さんと同じへ短調、ライブでも少し辛そうようすが伺えます)

このような理由がごちゃまぜになった結果、あーりんオリジナル秋桜が誕生したのでしょう。。2音節メロディはユニークなので、もうそのままでよいと思います。ただ、キーは彼女の声に合わせてニ短調くらいに下げた方が、楽に歌えるのでないかと思います。(山口百恵もライブでは変ホ短調に下げていたといいますし)

ヴァイオリニスト花井悠希さんの演奏する秋桜

プロモーション映像なので1コーラス分だけです。この映像は2分20秒くらいですが、フル演奏(アルバム)では4分20秒くらいあります。

ヴァイオリニストなので当然歌はありません。かつてさだ氏も志したヴァイオリニスト。そのヴァイオリンとピアノだけで奏でられる秋桜に、さだ氏がどう感じたかなどとといらぬ想像をしてしまいます。

妙に値段が高いです。プレミアでもついたかな。全編さだまさしの人気曲を収録したアルバムです。さらにアレンジャーとして、初期のさだまさしのアレンジをほとんど手がけてきた渡辺俊幸氏を招いています。

ある意味当時のさだメロディを最も理解していたひとりが渡辺俊幸氏です。彼が、ヴァイオリンとピアノというシンプルな編成でどのようにさだメロディをアウトプットしなおしたのかが聞きどころです。

編成がシンプルな分、演奏を単調にさせず、メロディを印象的に聴かせるテクニカルな工夫が随所に見られます

秋桜の場合、サビの入りにダブルストップ(同時に2本の弦を弾く)を取り入れる、拍の裏でカウンターメロディを弾きこなすなど、高度な演奏力も聞きどころです。

秋桜は明るい雰囲気の曲ではありません。それがヴァイオリンの切ない音色も相まって、他のバージョンよりも激しく悲しい情感を訴えてきます

日本の歌姫5本の指のひとり、坂本冬美の歌う秋桜

何かの番組の企画だと思います。最初から少々涙ぐみ気味の坂本冬美とさだまさしのデュエット。しかも中華版かな?

本調子の坂本冬美さんの秋桜は、

このアルバムに収録されてます。Amazonストリーミングでも聴けます。

日本の歌姫5本の指のひとり、と断言しました。どんなジャンルの曲でも冬美流に歌いこなす器用さと自分らしさを生み出す創造力では右にでる人はいないのではくらいに思っています。

5本の指。残り4人は、岩崎宏美、吉田美奈子、あとはあなたの好きなあの人です。

秋桜のスタンダードな表現パターンは、サビに向かって徐々に盛り上げ、サビは切なくそれでいて力強く訴えかけ。歌の終わりはやさしく語りかけるように締める。多くの歌手(山口百恵さんはじめ、さだ氏も同様)がこのパターンです。

坂本冬美はサビの頭でこそ、少し声量をあげて盛り上げますが、早々にトーンを落とし、淡々とした雰囲気で終わります。盛り上がりに欠ける、淡白すぎるような印象もあります。ですが、あえて無理してお母さんに笑顔を作っているような不自然さかすかな動揺が声の消え方に現れているようにも思えるのです。

深読みのしすぎか、坂本冬美の秋桜の新解釈か。わたしも最初は期待ハズレに感じたのですが、繰り返し聴くうちに新しい解釈ではと思い始めました。

山口百恵さん、さだ氏と聴き比べて、もっともユニークなカバーバージョンだと思います。

まとめ|3人3様の秋桜

ちょっと佐々木彩夏さんの解釈に字数を割きすぎましたが、3パターンの秋桜を比較してみました。

佐々木彩夏さんは決して歌唱力が優れているわけではありません。しかし、音節の件も含めて、独自の曲の捉え方、伝え方を工夫されています。キーが合ってないのではなどの懸念もありますが、どうか歌い続けて自分の歌にしてほしいと思います。

花井悠希さんは、3人の中で唯一のヴァイオリン奏者として、その表現力を活かした演奏を聴かせてくれます。ヒット曲はよくBGM用にアレンジされたものが出回ります。そういったものと一線を画した母と娘の切ない心情をヴァイオリンとピアノのシンプルな構成で切々と心に響く演奏です。

坂本冬美さんは大御所の貫禄もある、余裕のある歌いっぷりです。ただ、やや単調にシンプルにも聞こえてしまいます。しかし、そのさりげなさが晴れの娘を見送る母、その母に心配かけまいとする娘の仮面によるものだったら。時折、仮面の下の動揺を伺わせる器用さに、あらためて脱帽です。

秋桜は、平原綾香さん、夏川りみさん、福山雅治さん、やなわらばー、由紀さおり・安田祥子さん、ご子息である三浦祐太郎さんなど多くのアーティストがカバーされています。

さすがに全部は聴き比べられませんが。機会があればまた3人くらい、なるべく異なるジャンルで比較してみたいと思います。

古ーい昭和の歌謡曲ですが、未だに多くの歌手がカバーしているという事実。コスモスの花のきれいな時期、もしかしたらお気に入りのあの歌手もカバーしているかもしれませんよ。どなたのバージョンでもよいので、ご存知なければ聴いてみてほしいおすすめ曲です。

本日も長くなってしまいました。最後までのおつきあい感謝します。

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ウールーズ(heureuse)
本質的に内向的で自分勝手なわたしですが、世の中には奇人もいるものだなぁーと面白がってもらえると、ちょっとうれしい。 お布施(サポート)遠慮しません。必ずや明日への活力につなげてみせます!