ビジョナリーカンパニー ZEROを読んでみたら、日本企業の真逆だった
先日『ビジョナリー・カンパニーZERO』という本を読んだ。
ビジネス本を久しぶりに読んだので、その感想を書いていきたいと思う。
まずこの本を読むに至った経緯だが、この本を読みたかったわけではなく、ヤフーのフリマアプリの半額クーポンを使いたくて利ざやが稼げそうな価格帯の本を探していた。
全く読まずに売るのも嫌なので、自分の知識になりそうな本かつ、クーポンが使える最安の2000円くらいかつ、購入後に読み終えて確実に売れそう需要があるものとして選ばれたのがビジョナリー・カンパニーZEROだった。
自宅に届いてわかったが、これは厚さ3cmくらいある本で、結構な読み応えがあった。私はもう売ることはわかっていたので、到着後からすぐに読み始めて、夜寝る前に出品して翌朝には2000円で売れていた。
そんで、翌日も丸一日読んで読み終えてから夜に発送した。
なんというか、図書館で無料で借りれるのもいいが、買ってからすぐ売って少ないお金で最新の本を回し読みするのも良い。
そんで肝心の内容だが、私は中学や高校、大学時代からこの手の本を読みまくってきたので、今更何か大切なキーワードみたいなものを得られるとは期待していなかった。
ただ、メルカリなどを見ても完売するくらい、みんなSOLDのマークが付いていたので、中身は気になっていた。
単刀直入に言うと、数々の世界で有名な企業がどのようなビジョンを持って経営して、どんな感じに成長していったかを知れる本である。
そして、大企業に成長する過程で大切なことなどを事実を元に紐解いている。アップルやその他いろいろな企業の名前が挙がっていた。
ただ、内容としては真新しいものはなく、カンブリア宮殿とかをよく好きで見てる人なら、なんか聞いたことあるな。という感じかもしれない。
コアバリューなどを設定するときの注意点や具体的にやることなど、わかりやすく書かれていたので、そこまで具体的に知りたい人は、立ち読みで探してそのページだけ読んでも良いかもしれない。私は自宅で読みながら写真を撮って保存した。
具体的なエピソードなどは飛ばし読みしたが、総じて素人ビジネスマンにも理解できることは、日本企業が現状でやっていることと、全て逆ということである。
ものの見事に全てが逆だった。
・社員が活き活きして働くことにモチベーションがある、
・上司が社員が働きやすいように環境を作ってくれる
・社長や上司がオフィスを見回り、社員が元気よく働いているか声掛けして、信頼関係を構築してくれる、
・ダメ出しばかりをして、部下のやる気を削いでないか、
・ミーティングで意見を言いやすいように雰囲気作りをしているか
・形式だけのミーティングで、議論無く賛成意見を確認するだけの時間になっていないか。
・会社のビジョンが社員全員に伝わっているか、
羅列すれば、そんな特別なことではない。むしろ当たり前のことである。
もし、喫茶店でも会社でも、経営者になろうとすれば全てこれらを実践するはずである。一般的な人間であればあるほど、特別なことではない。
しかしながら、日本の多くの企業がこれほど簡単なことができていない。そして、日本企業は目に見えて没落していった。
そう考えると、日本企業の生産性がどうとか、DXがどうとか、確かに一因ではあるだろうが、おそらく「働く」とか「会社」とは何か、という根本的な考え方がどこかへ消えているんだと思う。
働き方とかDXとか、FAXがどうとかハンコがどうとか、そんなものは意識が変わった後に付いてくるものかもしれない。要はやる気がないから変わらないし、仕事する目的がないから変わらなくて大丈夫だと思っている。
働いてベーシックインカムを貰っているような状況に近いかもしれない。お金がなぜか降ってくる状況になっていて、その生活に疑問を感じていない。
会社とはなんだろうか。私の考えとしては、会社とは経営理念を達成するために集まった組織である。
では、なぜ働くのだろうか。それは働きたいからである。あるいは、自分が人生で達成したい目標を、自分個人では達成できなくても、会社に所属することで達成できる見込みがあるからである。あくまでもその行動の後にお金が付いてくるのであって、お金を貰うための行動が仕事ではない。
こんなことは言われるまでもなく、当然ながら働いている人全員が理解していることだと思っていた。それは私が中学・高校と電車に乗って「日本のおっさんハゲすぎじゃね?」と違和感を感じで、電車ではしたない寝方をして、なんでこんなになるまで働いているのか考えた末にたどり着いた答えでもある。
日本人の多くは勝手に働かないといけないものだと勘違いして、勝手にお金を稼いでない人間をバカにしている。自分が会社に行くだけで働いているものだと勘違いしているし、言われたことをやればお金がもらえると勘違いしている。
それは海外の人もそうだろう。だが、根本的に違うのは、海外の人は仕事が嫌だったら辞めるし、自分に意思がある。そもそもジョブ型雇用なので、自分の専門である仕事と全く別の仕事をやる羽目になったりしない。頼まれても断るだろうし、断っても別に他の人に誰かが頼むだけで、評価が下がることもない。転職を何回しても、転職が不利になることはない。
自分のやるべき仕事が何で、何をして給与を貰っているのか把握していないと、言われたこと全てを引き受けてしまう。
それを考えていないと、客の立場になったらモンスタークレーマーになるわけである。労働者に頼めばなんでも引き受けてもらえると勘違いしてしまう。
やりたい仕事をしていないのに、やる気が出るわけがない。
これを書いている時でも、三菱電機のETC設備の検査で不正をしていたとニュースになっている。日本企業は仕事で言われたことさえも出来なくなってしまった。クリエイティブとか、そんなこと以前の問題である。ルールを守るだけが取り柄の日本人がそれさえも出来なくなったら、没落以外に何があるのだろうか。
このような企業には必ず一生懸命真面目に働いている人がいる。ただ、上が腐っていればいるほど、下の真面目に働く人が搾取されるという構造になる。
真面目な人は物事がうまく行かないことを他人のせいにしない。なので、置かれた環境で必死に努力してしまう。それが最悪の結末を招くこともある。
そういう人間はトップにならなければ、多くの人が不幸になる。だが、トップになるには30年働かなければいけない。不幸な組織が通常運行されてしまうせいで、さらなる被害者が増える。
ビジョナリー・カンパニーZEROには、仕事の責任を果たす重要性について書かれていた。要は形式的な仕事をするのではなく、自分が与えられた仕事の責任が何なのか考えて、それを全うする。ということである。
リーダーであれば、その組織や部隊を守らなければいけない。自分の判断ミスで自分の班が全滅する可能性もある。その覚悟を持って仕事に臨まなければいけない。
ただ残念ながら日本のリーダーでそんな気概のある人はほとんどいない。何も考えていないし、この三菱電機のニュースのように簡単にカネを稼いで、責任を隠蔽することしか考えていない。
原発をどうするのか東日本大震災以降はずっと議論されているが、あれも結局は東電が当初想定していた震度や津波に対する計算通りに設計・維持していれば、問題なかったはずである。
だが、メンテナンスや万が一のときの備えを怠ったせいで、万が一が起こってしまって大変なことになってしまった。
このビジョナリー・カンパニーZEROを読み進めていくうちに、本の中には書かれていなかったが、私は日本企業を成長させるひとつのヒントを見つけたような気がした。
アフリカなどの開発途上国では、発展に取り残されすぎてリープフロッグ現象というものが起こる。
パソコンや各家庭に有線のネットの設備が普及していなかったが、スマホが普及したことで、電波塔を建てれば多くの人がスマホでネットを使えるようになり、それによってキャッシュレス決済などが日本より大幅に早く普及するといったような現象である。
先進国が踏んできた段階を数段飛ばして、先端技術にたどり着く現象というイメージに近い。
私は日本にもそのリープフロッグ現象が起こるんじゃないかと考える。
ただ、そんなテクノロジーが進んでないとはいえ、日本もそんなアフリカ程無いわけではない。それは至極まっとうな意見だと思う。じゃあどこにリープフロッグ現象が起こるのかというと、日本企業の意思決定者がリープフロッグ現象でAIに入れ替わると考えている。
今は人口の多い世代が上にいて曇天になっているが、彼らが排除された後はAIに取って代わられる可能性がある。AIなら自己保身に走らないし、感情に揺さぶられることもない。合理的に数秒で判断ができる。もしかすると、政治の世界でも起こり得て、AIを通じて国民の意思が反映されるような、スイスの直接民主制に近い状況になるんじゃないかと考えている。
無駄なミーティングも必要ないし、従うことが得意な日本人の性格にかなり合っていると思う。
AIの技術は残念ながら日本企業が作ることは叶わないだろうが、おそらくイスラエルかインド、米国か中国企業が作ったものをそのまま使うことになるかもしれない。
合理的な判断がAIと人間でどちらのほうが優秀なのか、という疑問を抱く前に、そもそも日本企業の意思決定権を持つ人間は、その会社の一般的な人間の中でも勝てていないのである。モラルを守れない人間に意思決定者が務まるわけがない。言うまでもなくAIに勝てるわけがない。
年功序列で排除出来ない層は、希望退職を募ることしか出来ない。ならば、AIを導入しますといって、上司の意思決定権を剥奪するのが一番手っ取り早い。あとは全員平社員にして、給料も均せばそれで事が収まる。
若い世代は真っ先にそれを望むだろう。わけのわからない法を当然のように破る独裁者の帝国が崩壊して、普通の人間が普通だと考える働き方に収まるのだから。
こんなビジネス書を熟読しなくても、普通に考えて良いと思う当然のことをみんなで話し合いながらやればいいだけの話である。
それを日本企業は出来なかった。挙句の果てに犯罪まがいの行為も行えるほどのコーポレート・ガバナンスになっている。
何のために自分が働いているのか考えるだけで、それを防げる。
あえて筆者が、日本人に刺さるように日本企業の逆のことを書いたんじゃないかと思うほどだった。
外資は仕事に対して真剣だし、人を大切にするんじゃないだろうか。仕事の責任が果たせない人には去ってもらう。考えてみれば当たり前のことをしている。同じ目的を持つ人同士が集まったら、それは仕事が楽しいだろう。
何も考えていない人は、目の前に問題が転がっていても他人事である。何も考えずに動いて金をもらうことにしか興味がない。
私はずっと社員が働いて世界一楽しい会社を作りたいと思っていたが、あながちそれは正しかったのかもしれない。
どれだけストレスを抱えて努力したところで、本気で心の底から楽しんでいる人間には到底敵わないのである。