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AIで自分の自動思考を捕まえる【認知行動療法】

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AIを活用した認知行動療法の可能性を探っています。

自動思考を捕まえてみた

連日の雨がやっとやみ、久しぶりの晴天がやってきました。また外はひんやりと肌寒いですが、春らしき爽やかな陽気が広がっています。

と言いたいところですが、今日はどうも朝からメンタルがいまいち。どうにも心がザワザワします。どうでもいい小さなことが不安のタネになり、不安が別の不安を呼んで雪だるまのように大きくなっていく、たぶん分かる人には分かってもらえる、あのイヤ~な感じです。

うーん、どうしたものか、スタバでカフェラテでも頼んで気分を落ち着かせるか…と思ったところで「そうだ!自動思考を捕まえよう」と自作のAIチャットを開くところに思いが至りました。

そう、「ザワザワ」だったり「イライラ」だったり「ムシャクシャ」と言った擬態語で表せる穏やかならぬココロの状態が生じた時って自動思考を捕まえるいいチャンスなんです。

自動思考が捕まえられれば大抵なんとかなる

昨日に引き続き、伊藤絵美先生の「世界一隅々まで書いた 認知行動療法・認知再構成法の本」という書籍を読んでいます。

その中にこんな一節がありました。

自動思考をリアルタイムでモニターできるようになることそれ自体が大事、そして不可欠なんです。それができるようになること自体が、さまざまな効果をもたらします。

世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本 伊藤絵美 著

家族のため(そして自分のため)に認知行動療法を学んでいる身として、深く同意する一言です。自動思考をモニターする、つまり捕まえることが大事、捕まえてしまえば何とかなる、、、んですがそれが本当に難しい。

「言うは易く行うは難し」ってやつです。

認知行動療法がなかなか普及しない(少なくとも私の周りではほとんどやっている人はいない)理由については色々な要因が考えられますが、やはりこの「自動思考を捕まえるのが難しい」というのも一つの大きな理由かな、と思ったりします。

そこで今日は、認知行動療法の中核的な概念である「自動思考」について解説しつつ、自動思考の捕まえ方もちょっとまとめてみることにします。(記事の最後に今日の私の「自動思考探し」がどうなったかも載せておきます)

同じ状況でもストレスになるかどうかは自動思考しだい

アーロン・ベックやアルバート・エリスといった心理学者によって開発された認知行動療法は、私たちの感情や行動は、状況そのものよりも、その状況をどのように受け止めるか(認知)に大きく影響されているという考え方に基づいています。

試験の点数

例えば、試験の点数について 同じ70点という点数でも、「自分は頭が悪い」と受け止める人と、「次は頑張ろう」と前向きに捉える人とでは、その後の行動や感情が大きく変わってきます。点数という状況は同じなんですが、その受け止め方で結果に変化が生じます。

雨が降った

他の例で、遊びに行く予定だった日に雨が降ったとします。「せっかくの休みが台無しだ」と嘆く人もいれば、「家でゆっくり過ごせるから良いことだ」と喜ぶ人もいるでしょう。同じ雨という状況でも、捉え方次第で感情が変わります。

「いいね」の数

SNSでの「いいね」の数が、同じ10個の「いいね」でも、「もっともらいたかった」と不満に感じる人と、「10人も反応してくれて嬉しい」と喜ぶ人がいます。状況は同じでも、考え方次第で満足度は異なります。

部活のきつい練習

部活動のきつい練習メニューも、「苦痛だ」と捉えるか「強くなるチャンスだ」と捉えるかで、取り組む姿勢が変わります。つらい状況でもプラスに考えれば、行動が変わりますよね。

こんな感じで、同じ状況でも捉え方次第で感情や行動が変わってきます。認知行動療法では、こうした認知、その中でも特に「自動思考」に注目しています。自動思考とは、ある出来事に直面したときに、無意識のうちに頭に浮かんでくる考えのことを指します。

試験の点数の例では、「自分は頭が悪い」もしくは「次は頑張ろう」というのが自動思考ですね。

自動思考を捕まえると幸せになれる?

こうした自動思考を捕まえ、吟味し、修正するプロセスこそが、認知行動療法の中核を成すもの(認知再構成法)です。いくつかの研究によれば、このプロセスを繰り返し練習すると、脳の働き自体も変化が見られることがわかってきています。

研究1:認知行動療法で脳にプラスの変化が現れた

例えば、吉村晋平による2014年の磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いた研究によると、認知行動療法を受けた人の脳では、感情調整に関わる領域の活動が増加したという報告があります。

CBT後、うつ病患者の自己言及処理中のMPFCおよび腹側前帯状皮質(vACC)の活動は、ポジティブな刺激に対して増加したが、ネガティブな刺激に対しては減少した。

Cognitive behavioral therapy for depression changes medial prefrontal and ventral anterior cingulate cortex activity associated with self-referential processing

つまり、自動思考に働きかける練習を重ねることで、感情をコントロールする脳の力が強化されるのです。

研究2:認知行動療法は抗うつ薬に匹敵する効果がある

また、Cuijpersらによって2013年に行われたメタ分析では、認知行動療法が抗うつ薬と同等の効果を持つことが示されており、特に長期的な予防効果の面で優れていると報告されています。

CBTがうつ病の再発リスクを軽減することがいくつかの研究で判明している

A Meta-Analysis of Cognitive-Behavioural Therapy for Adult Depression, Alone and in Comparison With Other Treatments

こうした研究成果は、私たちが自分の考え方と向き合うのがいかに大切かを示唆しています。

自動思考を捕まえる習慣を身につけることで、ストレスへの対処能力や、感情のコントロール力が向上していくということですね。

自動思考を捕まえるのは難しい

とは言え、自動思考の厄介なのは、それが瞬間的に生じ、ほとんど意識されずに通り過ぎていってしまうことです。

それはまるで、夜空を一瞬で駆け抜ける流れ星のよう、と言えばロマンチック……とかうっとりしている場合ではありません。なにしろ、その一瞬の思考が、私たちの感情や行動に大きな影響を与えているのですから。

自動思考を捕まえる=流れ星を捕まえるようなもの

自動思考を捕まえるのは簡単ではありません。最初のうちは、夜空を駆け抜ける流れ星を捕まえるかのように、到底ムリと思うかもしれません。しかし、粘り強く観察を続け、練習を重ねるとその「流れ星」を捕まえることができるようになります。

流れ星を見逃さないためには、夜空をじっと見つめ、流れ星が現れるのを辛抱強く待つ必要があります。同じように、自動思考を捕まえるためには、自分の内面をじっと見つめ、自動思考が浮かんでくるのを根気強く待つことが求められます。

自動思考を捕まえるコツ

とは言え、この素早い流れ星、つまり自動思考を捕まえるには幾つかコツ・ステップがあります。それぞれのコツを身に着ければ、少なくとも流れ星を捕まえるよりは格段に楽に自動思考を捕まえられるようになるはずです。

感情の変化に注意を払う

自動思考は、感情の変化と密接に関連しています。この記事の冒頭でも書いた「ザワザワ」「イライラ」「ムシャクシャ」などがまさにそうです。

急に気分が落ち込んだり、イライラしたりしたときは、「今、どんな考えが浮かんだのだろう?」と自問してみると、感情の変化をきっかけに、自動思考を意識することができるはずです。

自動思考を言葉にする

頭の中に浮かんだ自動思考を、言葉で表現してみる(言語化する)のもいい方法です。

心の中でつぶやいたり、紙に書き出したりすることで、自動思考がより明確になります。もちろんスマホに書き出すのもOKです。AIチャットに投げてみるのもいいですね。

言語化することで、自動思考を自分の外に出し、客観的に観察することができるようになります。最初はものすごく抵抗がありますが、できるようになると心がスッと軽くなるのを実感できるはずです。

自動思考を記録する

捕まえた自動思考を、日記やメモに記録しておくと、記録を振り返ることで、自分の考え方のパターンや傾向が見えてくる良い方法です。記録には、自動思考が浮かんだ状況や、そのときの感情も添えておくとなお良いと思います。

自動思考を吟味する

記録した自動思考を、客観的に吟味してみる、つまり「その考えが本当に正しいのか、根拠はあるのか」を考えてみましょう(私は姿を表した自動思考を擬人化して、とことん問い詰める感じでやっていますw)。

自動思考は、しばしば極端で、現実を反映していないことに気づくと思います(ほとんどの場合がアホらしく思えるほど)。そこまできたら、自動思考を置き換えるチャンスです。

代替思考を探す

その(非現実的な)自動思考にとって代わる、より現実的で適応的な考え方を探してみる、というのがこの自動思考探しの最後のステップです。バランスの取れた見方や、ポジティブ・前向き・建設的な考え方を意識的に作り出してみましょう。

最後に、流れ星を見つけたときの感動を忘れないように、自動思考を捕まえられた、という体験を大切にしましょう。自動思考と向き合う中で、自分自身についての理解が深まり、新たな気づきが得られるはずです。

捕まえた自動思考はどうなった

さて、「ザワザワ」から始まった私の自動思考探しはどうなったのでしょうか。

何しろ詰まっている予定をこなしながらの自動思考探しですから時間がかかります。でも、AIが覚えていてくれるので時間が空いても諦めずに探し続けられます。

この時点ではまだ自動思考に気がついていないです。でもミスを犯しやすいから注意しようということに気がつけたのは良い副産物でした。

AIと話していてもしかして、と思ったのが私の「春季うつ」傾向。うつと断定するほどでもないのですが、どうにも春は気分が沈みがちです。

ただ、春のうつはたいてい新生活のストレスという文脈で語られていることが多いので「自分はフリーランスだからこれとは違うんだよな」とずっと思っていました。

「春季うつっぽい感じになる」から「人とちょっと違うことがしんどかった」という点に思い至りました。自動思考を捕まえるまで あとちょっと、という感じです。

やっと自動思考を捕まえることができました。春の陽気で調子がイマイチという状況を、「自分は怠けているんじゃないだろうか」という自動思考でさらにマイナスに捉えていたので、色々なことが不安になって「ザワザワ」していたようです。

さらに追い詰めるとその根底には「自分の価値は人からの評価による」というスキーマ(不適切な信念)が出てくるのですが、スキーマは今回のテーマではないので省略します

ザワザワに気がついてからおよそ4時間(!)。かなり時間がかかりましたが、ここからは捕まえたこの自動思考を建設的な代替思考で置き換えていけばOKです。

なんとか無事に朝の「ザワザワ」をAIチャットの助けを借りて解決することができました。


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