春

落ちた。

当時　受験生だった私は、私立の高校には受かっていたものの

一番行きたかった公立に落ちたのだ。

ショックだった。

自分にもショックだったし、応援してくれていた

親にも申し訳なかった。

中学校の友達には、

「落ちちゃったよ〜笑」

と、言っていたものの

当時まだ中学生。内心ズタボロだった。

将来もよく分からなくなっていた。

最後の3学期、ずっと隣の席だった男の子にも

落ちた事をへらっと伝えると

「悪い事の後には必ず良いことがある。
だから、次は君の身にはいい事が起こるって事だね。」

と返された。

少しいい事を言った自分に酔っているのか？

とも思ったが、そんなんじゃなかった。

本当に私を励まそうと思っていってくれたんだと分かり

「そうかな、ありがとう。」

と返したのを数十年経っても覚えている。

今、彼が何をしているのか知らないし

あの時どこの進路を選んでいたのかも覚えて

いないけれど、あのやりとりだけは鮮明に

覚えている。

どうでもいい時にふと思い出しては

ほのかに春の香りがする。