発達障害を持つ人や生きづらい人に必要な「愛着」について
医学部医学科卒で力動的精神医学と精神病理学専攻の精神医療従事者にして、YouTube Musicに趣味で自作曲をアップさせていただいていますKoki Kobayashiです。
私のページをご訪問くださいまして、まことにありがとうございます(*^_^*)
今日はメンタルクリニックがこれだけ増えているのに、発達障害や心の病に苦しむ人たちの生きづらさが捗々しく改善しない理由について、現代病とも言える「愛着障害」の観点から記してみたいと思います。
そして、発達障害を持つ人が児童精神科医や精神科医にかかる時に留意しておくと良いことや、患者さんのセルフケアについて分かち合いたいと思います。
それでは今日もよろしくお願い申し上げます(*^_^*)
激増するメンタルクリニック
人工知能の発達にともない、iPS細胞や遺伝子工学の研究の劇的な発展が起こりつつある現代医学ですが、医学がいくら進歩してもこの国の人々の幸福度は下がる一方ですね。
こころを病む人は益々増え続けています。
そして、医学部医学科を卒業後に精神医学や精神療法の訓練を専門的に受けて専門医の資格を取るに至っていない(=精神科専門医・指導医ではない)医師によるメンタルクリニックは、雨後の筍のように増えています。
これほどまでにメンタルクリニックが激増しているということは、この国のメンタルヘルスが危機的な状況に陥っていることを表していますね。
では、それらのメンタルクリニックが、悩める人たちの苦悩や症状、さらには患者さんやそのご家族の方々の抱える生きづらさの改善にどこまで貢献できているかと言いますと、その点については患者さんサイドからはけっこう手厳しい評価をいただいているのが現状ではないでしょうか。
愛着の傷やトラウマを癒す術を正統医学は持っていない
メンタルのお医者さん達もそれぞれに誠意をもって患者さんやそのご家族の相談に応じて治療に邁進しておられることと思いますが、どうして患者さん達とお医者さん達との間にこのところ特にすきま風が吹いているのでしょうか。
それにはいくつかの要因があると思いますが、今日はそのファクターの中でも特に「患者さんたちの傷ついた愛着の傷やトラウマを癒す術を正統医学(Orthodox Medicine)は持っていない」ことに注目してみたいと思うのです。
患者と医師のすれ違いはなぜ起こるのか
患者さんたちは、勿論昔も今も多種多様な症状や苦悩を感じてメンタルクリニックの門を叩きますよね。それでも、このところ精神科や心療内科を訪れるようになった患者さんには、一つ顕著な傾向があるのです。それは、患者さん達が愛着の傷を抱えていることが目立つようになったということです。
現代社会で愛着システムの構造的な破壊が急速に起こった結果、今どきの患者さんの症状や苦悩の背景にはかなりの頻度で愛着障害が秘められているようになりました。
しかしながら、正統精神医学で大きな発言権を持っている生物学的精神医学も、あるいは最近流行りの脳科学に知恵と知見を借りた精神医学の新しい潮流のドクターたちも、未だに愛着障害に対するエビデンスのある医学的な処方箋を持っていません。
愛着理論はもともと患者さんと治療者の心の動きを重視して治療に当たろうとする力動的精神医学のトピックとしてその名を知られていました。
こんにちのようにメンタルクリニックに押し寄せる患者さんたちの家庭環境や親子関係やトラウマ(外傷体験)が混迷を極めていますと、医師としては患者さんの病歴を聴取するだけで精いっぱいで、患者さんの抱えている愛着の傷にまでコミットするようなムンテラを構築しているゆとりが医師サイドにないのが実情です。
このような現代精神医療の危機の中で、臨床心理学という「心の科学」を標榜する臨床心理学者がさまざまな心理療法を創案していますが、今でもトラウマのケアや愛着障害の治療について決定打となるものは見当たらないようです。
この医療関係者の愛着障害に対する治療上の閉塞状況こそ、現代の精神医療の現場で医師と患者さんの間にすれ違いを起こしている要因の一つなのではないでしょうか。
愛着形成と「三つ子の魂百まで」の妥当性
愛着というものは、初めは乳幼児期の母子のこころと情緒の通い合う温もりの中から紡ぎ出されてくるのです。
しかし、現代社会では、お子さんが生後間もなくから、親御さんのお仕事の関係などでやむなく保育園に預けるようなケースも多々あります。
そのような場合には、お子さんが愛着を親御さんとの間にしっかり形成できるように特に配慮なさった方がいいと思います。
お母さんとお子さんの間の愛着にしても、それから派生するお父さんとお子さんとの間の愛着形成にしても、「三つ子の魂百まで」と思っていた方がよろしいかと存じます。
今日はその論拠を詳らかに申し上げている余裕がないのですが、いずれ別稿で「愛着形成に関しては子どもが乳幼児の頃からしっかり配慮してした方が良い」と私が考える根拠を申し上げたいと考えています。
発達障害を持つ人やキレやすい人にこそ必要な愛着の修復
現代は、キレやすい人々がひじょうに増えました。キレやすい方の中には、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、それだけではなくて、その方の生い立ちの歴史の中で、愛着に傷を負っておられるケースが目立つのです。
精神医療の現場においても、正統医学的な精神医学のメソッドで患者さんにフォーカスして治療するよりも、むしろ患者さんのご家族に焦点を当てて、臨床心理士や公認心理師の助けを得ながら、家族の中の傷ついた愛着の立て直しをした方が遥かに患者さん本人の治療がはかどることが知られてきています。
わが子を発達障害の二次障害から守るためにも、また親御さんご自身が自分の中に潜む傷ついたインナーチャイルドや愛着の傷のケアをするためにも、子どもの頃に養育者との間に醸成されるべき温かい愛着と心地よい安心感を私たちの心身に取り戻すことが必要だと言えるでしょう。
現代人は、それぞれの愛着の故郷との関係を立て直したり見直したりすることを総じて迫られていると言えそうですが、発達障害を持つ人やキレやすい人、情緒や感情に不安定性を持つ人は特に自らの内なる愛着を見直して手当てされた方が良いと私は思います。
愛着の問題の取り扱い~患者さんが精神科医とどう付き合うか
愛着を取り戻すためのメソッドを提唱しているのは今のところ臨床心理畑の臨床家の方々が主流ですが、トラウマケアの達人であられる杉山登志郎先生は独特のトラウマ・ケアの手技(TSプロトコル)を開発しておられます。
タッピングを応用した杉山ドクターのTSプロトコルとバタフライ・ハグなどによるトラウマ・ケアの方法は、簡便な方法ですけれども確実な治療効果があるようです。
ただし、杉山先生の考案なさるトラウマや愛着障害の治療法があまりにも斬新なため、その効果やエビデンスに関して懐疑的な精神科医も少なくありません。
ですから、今ご自分のお子さんの発達障害やその二次障害のことで~あるいはご自身のトラウマや愛着の問題で~メンタルクリニックのドクターの診察を受けておられる方は、この「愛着の修復」というテーマについて主治医の先生がどのようにお考えなのかを、一度それとなく探る必要もあろうと思います。
愛着障害なんて問題にしないという立場のドクターも決して少なくないのです。
愛着障害が現代の精神疾患の背景に底流していることを洞察しておられるドクターは稀にいらっしゃいますが、よほどのつてがない限り、そういうドクターに診ていただくことは至難の業でしょう。
金銭的に余裕のある方であれば、愛着の傷やトラウマの問題を話す相手として、臨床心理士や精神分析医の腕の鳴る先生をご一考なさると良いと思います。
私の暮らしている横浜市では、各区に精神科の生活自立支援センターが備えられていまして、そこで嘱託の精神科医の先生の面談を申し込むこともできますし、精神保健福祉士の方に話を聴いてもらうこともできます。
いずれも料金はかからないようになっていますので、横浜市と同様のシステムを備えている地域にお住まいの方で、今の精神医療についてお悩みのある方は、そちらで一度お話を聴いてもらうという手もありますよ。
精神科医の先生は、総じてご自身の治療に対して患者さんが口を挟んでくることを嫌う傾向があります。ですから、愛着に傷やトラウマがあることが苦しみの源泉ではないかと思われる方も、主治医の先生にはあまり愛着の問題を前景に出して強調してお話にならない方が賢明かもしれません。
そういう内的な葛藤や苦悩に関しては、精神科医の諸賢よりもむしろ臨床心理の先生たちの方が対応技術に関しては秀でていることもありますので、臨床心理士の方や精神分析医の先生にコンタクトを取ってセッションを持っていただくなり、さもなくば生活自立支援センターや電話相談で心理士の方や精神保健福祉士に共感的に話をしっかり聴いてもらうことをお薦めせざるを得ない場合もあるのです。
発達障害の二次障害に備えて親もセルフケアを学びたい
発達障害を持つ方というのは、繊細で傷つきやすい感受性を豊かにうちに秘めていますので、自分がひとと違うことに内心傷ついていることが多いのです。
ですから、発達障害の子どもは、発達障害そのものというよりは、発達障害を持っていることによる二次的な症状としての抑うつや自傷行為、不登校や引きこもりなどに苦しみやすい傾向があります。
これを発達障害の二次障害と言うのですけれども、ものの本ではとにかくこれを予防するよう奨励されていますよね。
確かに発達障害の二次障害は予防できたらそれに越したことはないと私も思います。その点では、児童精神科医の本田秀夫先生にもろ手を挙げて私も賛意を示したいと思います。
しかし、現在のいじめとルッキズムのはびこる学校の中で発達障害の子どもが暮らしていくなら、かなりの確率で子どもに何らかの学校に対する不適応症状が出ることは、やむおえない部分もあると私は思います。
また、今の親世代もまた必ずしも十分に愛着を形成していない節もありますから、わが子のケアに心を砕くだけではなくて、親御さん自身のセルフケアもまた必要になりましょう。
今日は時間の関係で詳しく申し上げられませんが、タッピングという手技は、経絡上のツボの数か所を一定の手順で指でたたくだけのものですけれども、これが案外とトラウマ症状を和らげたりもします。関心のある方はTFT(思考場療法)のタッピングの書籍にも親しんでみてくださいませ(*^_^*)
発達障害を持つ子の二次障害のケアのためにも、またその子を抱えて奮闘しておられる親御さん自身を労わるためにも、きちんとしたセルフケアの方法論を身につけていただけることを願ってやみません。
結びに~現代は発達障害と愛着障害の時代かもしれません
以上、愛着について、そのいわれや理論的な枠組みについては詳細には触れずに、ややイメージ的にその輪郭を申し上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。
論旨を詰めずにイメージをなぞるようにお書きしましたので、私の思う所が皆様に上手く伝わっているとは限りませんし、異論や反論のある方もおありかと存じます。
今後の予定ですが、別稿で「愛着と愛着障害がどうして発達障害と関係があるのか」についてお書きしていくとともに、先だってよりお書きしております「認証を活かした家庭療育」のシリーズについてもまたお書きいたしますので、乞うご期待です(^^;
現代は発達障害と愛着障害の時代かもしれません。この時代のパラダイムを精確に読み抜いて、この時代にどのような「星座」が布置しているのか、そのコンステレーションを洞察する狭路の中を医師と患者さんが懸命に潜り抜けることによって、現代の発達障害を持つ人と愛着のトラウマが癒されていく道も見えてくるのかもしれません。
長くなりました(^-^;
最後までお読みくださいましたあなたに、天からの豊かな祝福と恵みと必要な助けが与えられますようにお祈り申し上げます。
今日は抽象的な話題でしたが、次回は具体的に「認証による家庭療育のメソッド」についてお書きしたいと思います。
読者の皆様の変わらぬご指導をよろしくお願い申し上げます。
Koki Kobayashi拝