カロリー計算に振り回されることなかれ
私は栄養の知識には少し長けている自負があった。
別に栄養学を学生時代に学んだわけではないが、
昔から栄養のことを学ぶのが好きで
色んな本を読んだりしてきた。
そして、20代後半の頃には
筋トレに真剣に取り組んだ時期があり、
この頃に私の中での栄養への知識は一気に
実践を伴うようになった気がしている。
とはいえ、知識があるからと言って
それにガチガチに縛られているわけではない。
日ごろは自分が食べたいと思うものを
素直に食べるようにしているし、
とても広いスパンで偏りがないようにだけ
意識をしている程度である。
そんな私が先日図書館でこんな本を見つけた。
2017年に出版された本なので
少し内容的には古いかもしれないと思いながら
読み進めていくと、
そこには以前から私が栄養について
疑問に感じていたことがたくさん書かれていた。
この本の趣旨はいわゆるロカボを勧めるもの。
そして、タイトルからしてカロリーを計算しながら
食事をすることに対する反対意見が書かれていることは
想像していたものの、
書かれていたのはそれだけではなかった。
たんぱく質、脂質の摂取の仕方については
以前から色んな説が言われてきた。
たんぱく質の摂取は腎臓へ負担をかける。
脂質の摂取は悪玉コレステロールを増加させる。
オメガⅢ脂肪酸のみが効果的。
これらのいずれかを一度は見聞きしたことが
ある方も多いだろう。
だが、本書ではこれらの説も
エビデンスをもって否定されていた。
栄養の摂取の仕方による人体への影響を
テストすることの難しさは素人の私でも
容易に想像することができる。
試験に協力いただける人を集め、
その人たちの健康状態を見ながら
栄養摂取の状態をコントロールして
その変化をみなければならないからである。
しかも、その検体となる人たちはそれぞれ
性別や年齢、体質など色々なファクターが
異なっている必要があるので
仮に同じ栄養摂取の仕方をしても
明確な結果が出るものもあれば、
そうでない場合も多々あることであろう。
その代替として同じ哺乳類であるラットなどで
データを取るという方法もあるが、
当然ラットと人間では体の大きさが全く異なるので
その影響がどの程度人間に当てはまるのかは
推測にしかならない。
つまり、そもそも栄養に対する基本的な考え方は
検証試験が難しいうえで作られているのだ。
では、その考え方は何を基本に作られたかというと、
現状の日本人の食生活をもとに
推測で作られたものなのである。
推測といっても適当に作ったものではないだろう。
そこには何かしらの背景となるデータがあるはずだが、
その一つの考え方としてカロリー計算があるのは
言うまでもない。
私達が理想的と教えられてきた栄養バランスで
食事を摂取した結果、
カロリーが明らかにオーバーするのであれば
つじつまが合わなくなってしまうからである。
つまり、私達日本人に必要なカロリーをもとに
現状の食生活を考慮して逆算したのが
私達が教えられてきた理想の栄養バランスなのだ。
だが、本書ではそのカロリー計算自体に
意味がないことが書かれている。
そうなると、そもそも栄養バランスの考え方自体が
大きく変わってしまうことになる。
本書の中では極端な糖質制限ではなく、
あくまで糖質を抑えた食事をしつつ、
たんぱく質と脂質を好きなように食べる食事を
勧められている。
この食事の仕方は従来の栄養学の考え方からすれば
明らかにバランスが崩れていることになるが、
私としては試してみる価値は十分にあると感じた。
年齢を重ねるごとに糖質に対する
自分の体の反応が強くなっている気がしていた。
以前は感じなかった食後の眠たさを感じるのは
まさに血糖値上昇のスパイクが起きているからであり、
それはインスリンの働きが加齢に伴って
落ちているからであろう。
本書にも書かれていたように
私達日本人のインスリンの分泌は欧米の方に比べて
かなり低いそうなので、
そもそも私達日本人にとって糖質に偏り過ぎた食事は
あまり向いていないということなのである。
この2年ほど適度に筋トレをしながら
ベストな栄養の摂り方を模索していた私にとって
本書は目からうろこが落ちるような内容が
沢山書かれていた。
ネット上にも色んな情報が転がっているが、
ダイエットや健康のために栄養の摂取方法を
見直したいと思っている人がいれば、
ぜひ一度読んでみても損はない一冊である。