見出し画像

【柔整国試】学校では教えてくれない ICIDHとICFの“本質的な違い”


皆さんこんにちは。

ICIDH(国際障害機能分類)と
ICF(国際生活機能分類)の違い

理解できていますか?

ただ各構成要素を丸暗記するだけでは
近年の国家試験は解けません。

ICIDHやICFは教科書を見ると、
「ほとんど記載がない」
言ってもいいほど内容が薄いです。

じゃあ学校の先生は?
「暗記でいいよ」って言われて
そのまま
ではありませんか?


ならば、、、

私が
メチャメチャわかりやすく
ICIDHとICFの本質をお伝えします。

これでリハビリテーション医学
一般問題の1点ゲットです。


それでは参りましょう。

【柔整国試模試PDFダウンロード販売中!】
詳細はコチラ





ICIDHとICFのイメージを変える

ICIDHとICF、

どちらもなんとなく
「障害の評価的なやつ」
ぼんやり思っていませんか?

まずはそのICIDHとICFを
一緒くたにしたイメージから改めましょう。


ICIDHとICFを区別しよう

はい。

ICIDHとICF
「まったく別ものを取り扱っている」
と考えてください。

今日はこの結論をゴールにして話していきます。

ぼんやりと
「何となく似たもの」とイメージすることが
ICIDHとICFの理解で
ミスリードを生む最大の要因です。





ICIDHは●●、ICFは●●

仮にここに、

「生活」

という言葉をここにおきます。


「生活」って色々ありますよね。
歩く、仕事する、話す、寝る、遊ぶ。

日常あらゆるものすべてを含んだ言葉、
それが「生活」
です

この広範な領域をもつ「生活すべて」のうち、

「膝が痛い」なんてものは
生活全体のごくごく一部に過ぎません。

ICF(国際生活機能分類)は、
この「生活全体」を評価します。
ゆえに病気や障害以外も評価できます。

例えば介護などは
ICFの適応が高い場面だと思います。

その生活のうち一部分、
障害のみを純粋に評価するもの。
それがICIDH(国際障害機能分類)です。

これは純粋に機能回復と社会復帰を目指す
リハビリテーションの考え方です。

ICIDHは
「障害の全体像」を表すもので
障害のレベルを3段階で分類します。

ICFは
「生活の全体像」を表すもので
生活の要素を分類し、
病気や障害以外にも適用できる考え方です。

では、
ICIDH、ICFそれぞれについて解説しつつ
その本質的な違いに迫りましょう。




野球選手に例えたICIDH

ICIDHは障害を3つに分類します。

  1. 機能障害・形態異常

  2. 能力低下

  3. 社会的不利


①機能障害・形態異常

機能障害・形態異常は
身体の正常な機能が
損なわれたことを指します。

いわゆる「症状」とよばれるような状態
ここに分類されます。

肘を怪我した野球選手で例えると
「肘が痛い」
「外反ストレステスト陽性」
などは機能障害・形態異常にあたります。

跛行、疼痛、関節運動制限、検査の陽性、外観的な異常や損傷、内臓の症状、etc…


②能力低下

機能障害や形態異常によって
作業能力が低下したものを指します。

ここでいう「能力」の解釈が難しく
受験生泣かせです。

能力とは
「行動のクオリティ」です。

例えば
単なる「握力低下」は「機能障害」ですが、

握力低下により
・腕相撲で負ける
・箸で食事が出来なくなる
・ペットボトルの蓋が開けられない

など
文化的な意図を持って行った
行動の成果と質
が低下したもの
それが「能力低下」です。

肘を痛めた野球選手でいえば
「球速が下がる」
「打たれる」
「制球力が下がる」
などは能力低下です。

□跛行(機能障害)
 ▶︎移動に時間がかかる(能力低下)
□聴力の低下(機能障害)
 ▶︎説明が一度で聞き取れない(能力低下)
etc…


③社会的不利

機能障害や形態異常
もしくは能力低下によって

社会生活上のデメリットを負ったもの
「社会的不利」と分類します。

他者との関わりが減少するケースや
就労に関する不利益などが相当します。

肘を痛めた野球選手でいえば
「戦力外通告を受ける」
「主力メンバーから外される」
「メディアの露出が減り知名度が下がる」
などは社会的不利といえます。

障害により転職が必要となった
仕事を失った
収入が減った
点字タイルが無い区域への外出ができない
人と顔を合わせるのが怖くなった
etc…




機能障害▶︎能力低下は必発か?

①能力低下が起こらないケース

機能障害・形態異常が生じたら
能力低下は必ず起こるでしょうか?

答えはNoです。

例えば何らかの事故で顔を負傷し
大きく顔貌が変化してしまった例を
考えてみましょう。

外観的な顔貌が変わってしまったとしても
「能力低下」は起こりますでしょうか?

顔の見た目が変わるだけでは
行動のクオリティは低下しません。

しかし人前に立つ仕事から
外れざるを得なくなったり

周囲の人から
視線を向けられるようになったり

機能障害・形態異常により
能力低下は生まれないが
社会的不利は生じる

というケースは現実に起こりえます。



②機能障害と能力低下は比例するか

大怪我をして著明な機能障害を
負ってしまったとして

だからといって
同じだけ大きな能力低下が
生じるとは限りません。

例えば
手をたくさん使うパソコン作業の人が
足の指を骨折しても、
生活上の能力低下は
あまり大きくないでしょう。

しかし
徒歩や車で営業をする仕事で
足の指を骨折した場合は
・車の運転ができない
・移動に時間がかかる
といった能力低下が色濃く客観化されます。

【ICIDHの超重要ポイント】

①機能障害・形態異常が生じても、
 能力低下するとは限らない。

②機能障害・形態異常の大きさに、
 能力低下が比例するとは限らない。

③能力低下がなくとも
 社会的不利が生じることがある



障害についてよく考えよう

前項では
「機能障害・形態異常」
「能力低下」
「社会的不利」
この3項目を必ず満たすとは
考えにくい例が実在することを述べました。

ここでは
さらに踏み込んで考えていきます。

・目が悪いのでメガネをかける
・妊娠して動きづらい
・病気はないが体力が低下して要介護である

このようなトラブルがあった際
「障害」と呼ぶべきでしょうか?

また、
「機能障害・形態異常」
「能力低下」
「社会的不利」
この3つが生じるとは言えますでしょうか?

妊娠を「お腹の形態異常」とは言えませんし、メガネやコンタクトレンズを着用できる現代において、社会的不利が生じる可能性はほぼありません。

このように
「障害」に対する考え方から変えなければ
正しく捉えることができない

QOLを下げている生活上の困りごと
があ現実には存在します。





生活を分類しよう

そこで
「障害」を対象とするのではなく
「生活全体」を対象とする
ことで
解決を図りました。

「生活全体」を

  • 心身機能・身体機能

  • 活動

  • 参加

この3つに分類し

この3つの状態が良いことにより
「健康」が作り出される
と考えました。



ICF(国際生活機能分類)

障害のみを分類していたICIDHでは
捉えることができなかった
さまざまなトラブルの解決策として

生活として広く捉え
「心身機能・身体機能」
「活動」
「参加」

の3つに生活を分類しました。

■心身機能・身体機能

心身の機能が
正常に働いているかどうか評価します。

いわゆる「症状」のトラブルは
こちらで分類されます。

■活動

活動とは単なる関節運動ではなく
「意図を持って起こす行動」を指し
その状態が良好かどうかを評価します。

■参加

社会参加を意味します。
他者と関わる、集団と関わることが
どれだけ良好なら行えているかを評価します。




ICIDHと対応する部分

このように、
ICIDHの各項目と似通った要素によって
構成されていることが分かります。

【ICIDHとICFの「言い換え」部分】

ICIDH「機能障害・形態異常」
▶︎ICF「心身機能・身体機能」

ICIDH「能力低下」
▶︎ICF「活動」

ICIDH「社会的不利」
▶︎ICF「参加」

その違いで大切なのは、
「評価している幅」の考え方です。

ICIDHは
「障害の有無」と「その程度」を
評価しています。

イメージとしては
障害がない「0」と
障害がある「マイナス」のあいだで
評価するようなものです。

これが
「ICIDHは障害のネガティブな側面しか評価しない」と指摘される点であり、ICFを生み出す議論の起点となりました。

対してICFは
健康である「プラス」から
障害がある「マイナス」まで
幅広く評価する
ことで

身体をより健康にし
より良い状態を作るための
考え方としてふさわしい構造となっています。

そのため、

ICIDH「機能障害・形態異常」
▶︎ICF「心身機能・身体機能」

ICIDH「能力低下」
▶︎ICF「活動」

ICIDH「社会的不利」
▶︎ICF「参加」

といったように
ネガティブだった言葉の表現が
より中立的な表現に改められています。




健康状態と個人環境要因

ICFでは、
・健康状態
・個人要因と環境要因

が生活に影響を与える要素として
組み込まれています。

例えば

【健康状態】
・変形性膝関節症
・筋力低下
・慢性胃炎
・肝臓がん

これらがあることにより、心身身体機能、活動、参加の状態が悪くなることが起こりえます。

またその逆で、心身身体機能、活動、参加の状態が悪ければ、より健康度が下がり疾患が進行しやすくなるはずです。


【個人環境要因】
・過疎地域
・医療介護設備に乏しい

このような環境要因があるとすれば
それだけ心身身体機能、活動、参加の状態を改善させるチャンスが乏しくなります。


このように

健康】←→【生活】←→【個人&環境】

といった
「相互影響」を考慮されているのが
ICFの重要な特徴です。




活動の評価方法

生活の3要素である
「心身機能・身体機能」
「活動」
「参加」のうち

「活動」を評価する方法として

  • FIM(機能的生活自立度評価表)

  • バーセル指数

を用います。

どちらもADLの評価方法で
・しているADL
・できるADL
を評価するものです。

詳細はこの記事では
割愛させていただきますが

「なるほど!
 FIMとバーセル指数は
 ここで出てくるのか!!」


といったように
ここでようやく点と点が線で結ばれます。

以上

ここまでがICFの全体像の説明です。




学校では教えてくれない、ICIDHとICFの「本質的な違い」

さてここからが
学校では教えてくれないポイントです。

ICIDHとICFの本質的な違いとは何か?

そして我々学生がなぜ
ICIDHとICFに苦手意識を感じるか?

そこについて説明していきます。

ここまで説明した通り

ICIDH(国際障害分類)は
障害に限定した分類であり、

ICF(国際生活機能分類)は
生活全体を分類したものです。

ICIDHは「狭義・限定的」な考え方
ICFは「広義・包括的」な考え方といえます。



これが両者の本質的な違いです。


例えば、
痛みの原因について

「猫背が痛みの原因です」
という主張があるとします。

これは「狭義・限定的」な考え方であり、分かりやすいぶん猫背以外の影響を度外視してしまいます。

考慮しなかった他の要因にも原因が隠れていた可能性があります。分かりやすくした代償として「正確性」を落とします。



それに対して
「痛みはいくつもの
 要因が影響しあって起こる」

という考え方が上に示した図の右側です。

「複合要因」といい
人体が感じる痛みのほとんどが
この性質をもちます。

これは非常に分かりにくいもので
1つ断定的に原因を示された方が
人間は分かりやすく

その反面、
多様なパターンを示されると
人間は分かりにくさを感じます。

その代わり
要素の取りこぼしが少ないのが
この「広義・包括的」な考え方
です。

プロフェッショナルとして
何かの真実に近づきたいなら
この「広義・包括的な考え方」が
できなければなりません。

ICFはこの「広義・包括的」な考え方であるから、我々学生が苦手意識を強く感じます。





ICIDHとICFどっちが優劣?

ICIDHとICFを学ぶと
よく混乱させられるポイントが

「で、結局どっちが良いの?」

…かと思います。


ではズバリ答えましょう。


適応がある
(ただし世間の流れはICF)

これが本記事での答えです。



例えばいまケガをして
リハビリをすることで
回復の見込みがある方がいたとします

その方に対して
・何の症状が問題で
・どんな困りごとが生まれていて
・どうしたら社会復帰できるか?

を考えていくだけなら
ICIDHの方が適応度は高いです。

障害について
整理することが必要だからです。

いわゆる回復を目指した
リハビリテーションらしい考え方としては
ICIDHが一番分かりやすく整理できます。

しかし

障害に満たないトラブル
・明確な完治や終わりがない治療
・介護

などのシーンでは
QOL向上を第一に考える必要があります。
そんな時にはICFが適応します。


生活の質向上を図り、
健康度を高めていく
健康度を高めていく
総合的な取り組みが必要だからです。



最後に

ICIDHの不足点を補う目的で
ICFは作られましたが、

決してICIDHが欠陥品というわけではなく

あくまで適応となるシーンが
ICIDHは限られてしまう
という問題があったためです。


世間の流れとしては
ICFを重用するようになってきています


根本的に理解度が低いまま
安易に優劣をつけて覚えてしまうのは
学生の将来を考えると不利益
です。

「ICIDHを覚える意味」は
このようにちゃんとありますので、

「ICFに劣るものなら
 覚えなくていいじゃん」

と学ぶ意欲を削ぐような解釈をせずに

その本質と適切な用い方を
この記事から学んでいただけたら嬉しいです。


柔整国試模試PDFダウンロード販売中



北海道・若手治療家コミュニティ

Facebookにて無料グループ「北海道・若手治療家コミュニティ」を運営しております。
若手・学生が交流し、いま悩んでいることに対するヒントや、良い出会いを得るためのグループです。
卒業後、いざ現場に出ると、若手がディスカッションする場はなかなか少なく、一方的に経験ある人から話されて、何となくで終わってしまいがちです。若手が必ず通る疑問や課題に、「職場の先輩に聞くよりタメになる」をコンセプトに、視野を広げること、思考力を養うことを目指しています。

道外の方もウェルカムですので、ご共感頂けましたら、ぜひご参加下さい。


▼コチラから花田に「投げ銭」が出来ます。 いただいたお気持ちは、次回コンテンツに使用する有料画像素材の購入や、文献準備代に充てさせていただき、より良い発信づくりに役立てさせていただきます。