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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ小説No.7



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前回までのあらすじ…


美術の福良先生から仮面についての話になり
そこへブッダも加わった。何か秘密を知っている先生から遂に仮面の手紙文が明かされた…

マスケラの招待状

・17の歳10月31日から始まる

・その日上流を中心に3人選ばれる

・それは近しい同性と異性と近しい遠き者

・上流とは血筋である

・上流は関係のある又は未来に関係を持つ者が仮面となる

・選ばれた3人は全ての人が仮面となる

・名を呼べるのは仮面の見える人のみである

・名を呼び外した者はその者の顔が見える

・名を呼ばれた人はもう2度と仮面を見ることはない


「…先生、どういうことですか?もっと詳しく教えてください。まず最初の17の歳は僕らの現在で、始まりも全員この日からでしたので招待状通り起きています。問題は次の文です。上流の本人を中心に3人選ばれるとはどういう事ですか?上流とは血筋であるとも書いてありますが…?」
上流とはある一人の人物を指します。その人物を含めた4人が選ばれるという事です。それはその上流の人物とその人に近い同性、異性、遠き者の4人です」
「待って下さい!上流の人物は分かりました。その人に近い同性と異性も分かる。最後の遠き者とはどういう事ですか?」
「それは上流の人物の近くにいる人の中で離れた性格とでも言いましょうか。もっと正確に言いますと上流の人物と「遺伝子的に離れた人」が選ばれます」
「「「「????」」」」
説明を聞いたが言葉の意味を頭に入れても根本的な理由が見えてこない。そもそも選ばれるって何だ?何の為に仕組みを作ったんだ?周りの3人を見ても誰も納得してなさそうだがそれでも先生は話を続ける。
「そしてこの招待状は上流の人物に届けられます。つまりたちばなさん、あなたの事です」
「えっ?俺が上流?」
ここで栗原が話しだす。どうやらこの手の話は得意なようだ。
「先生、分かりました。まず17の歳の10月31日からたちばな君を中心に私達も選ばれた。そして招待状と人物を照らし合わせると…」
「上流の人物がたちばな君」
「近しい同性が袴田君」
「近しい異性が安和ナミさん」
「近しい遠き者が私」
「そういう事ですね、先生」
「ええ、私もそうだと思います」
4人で顔を見合わせた。
「じゃあそもそもたちばなが何で上流なんだ?それと上流と血筋ってとこもよくわかんねえし。先生、もっと分かりやすく教えてくれ〜?」
どうやらブッダも何とかついてきてるようだ。上流が自分である以上、僕にとってもここが一番重要な意味を持つ。仮面の違いについての理由の意味も。さらに耳を傾けた。
「上流と血筋については私ではなく水口先生から詳しくお話があると思いますので一度置いといてもらい他のを説明していきますね。次の文ですが…」
このあと福良先生は、上流と血筋以外の全ての意味を説明してくれた。しかし肝心の部分が抜けて話し半分といった程度しか理解出来ていない。
「私からの説明は以上です。残りの詳しい説明は後日、水口先生から教えて貰ってください。そしてもちろん水口先生は今でも仮面が見えています。皆さんならこの深い意味も理解してくれると信じています」
「⁇⁇」
そうか!水口先生はあわナミの名前を呼んで仮面を外した。つまり17の歳から…よく考えたらとんでもない事だ!今まで仮面の生活をしてたなんて…。とにかく明日は水口先生に会わないと詳しい上流(自分)の事は知れない。
「皆さん今日は一気に情報を入れたので相当疲れが溜まったと思います。それにもうこんな時間ですのでここで終わりにしましょう。私が車で送りますね」
時計を見るともう19時を過ぎていた…。先生は一度職員室へ戻り僕達は先生の車へ向かった。4人は一緒に下駄箱に行き靴に履き替えてたところであわナミが話しかけてくる。
「たちばな、今日は栗原さんをありがとう。水口先生に会うまでたちばなは仮面生活が続いていくけど絶対3人でカバーするから。もう少しだから…」
「私も一生この事は忘れない。たちばな君に救われたことを…ありがとう」
「俺からもありがとうを言うよ。俺は偶然一番最初に取れたから…」
急に3人がお礼を言ってくれた。自分が名前を呼んでからはもう栗原の表情を読み取れるようになり心が満たされていた僕は直ぐに言葉を返した。
「確かに俺はまだ仮面生活が続くけどもう大丈夫。3人が味方だから。栗原に喜んで貰えて素直に嬉しい。今まで人の役に立てたことなんてなくて…でもブッダのだけは誰かが外したのかなあ?俺は外した覚えもないし。もしかしてあの日どっかでブッダの名前呼んでたっけ?」
ブッダが考え込んでから思い出したかのように言った。
「思い出した!あん時だ!二人で渋谷のメイド喫茶に入っただろ?そんとき渡されたネームプレートに俺はフルネームを書いたんだ。それをたちばなが読んだんだよ。普通は偽名か名前だけにしねーか?なんて言って。間違いない!あん時だ!」
「あーあの時かー…っておいバカ待てっ…」
僕が止めようとしたころには時すでに遅し、女子達が軽蔑の目でこっちを睨めつけている。そしてすぐさま仮面のあわナミ爆弾が僕達に向けて投下する…
「へ〜わざわざ渋谷にコスプレして行くだけでも鳥肌級なのに高校生二人が揃いも揃ってメイド喫茶に行っただあ〜?」
まずい…来る!僕達は身構えた。
「キモい、馬鹿、雑魚、親父、クサイ、ミジンコ、三元豚、アホガッパ、はげワシの双子の出来損ない!さっきまでの言葉は撤回するわ!何てスケベ男達なの〜?もう行きましょう栗ちゃん!」
あわナミは栗原の手を取りスタスタと歩いて行った。玄関の影から栗原は僕の方を振り向いてこう言った。
「最低です…たちばなさん!」
その一言が一番命中した。
「わ、悪い…せっかくの雰囲気を…」
ブッダが言った。
「いいよ…俺達、終わったな…」
僕は暗い空を見上げて言った。
 そのまま最悪の空気で福良先生の車に乗ると全員の様子を見て先生が言った。
「どうしたの?なんだかさっきまでの4人とは大違いね?」
「先生、気をつけてください!あまり呼吸をすると馬鹿が移ってチンパンジーになりますから」
「なにそれ。おもしろいわね」
「特に先生は美人だから気をつけて!運転中は決して後ろの鼻の下伸びウ~タン達と目を合わせない様にして下さい。すぐに飛び付いてくる恐れがありますので!」
「ふふふっ。さては男子達何かやらかしたみたいね」
「そうなんです。どうして男子ってどいつもこいつも…ブツブツ」
僕達二人は家に着くまでただあわナミの好きなように言われ続けることにした。
気がつくと誰かの家に着いていた。どうやら栗原の家だ。僕達は車から覗き込んで驚いた。大きな門に普通の家の3倍以上はある家、外壁は夜でも分かるほどの白いレンガの建物。3階には軽くバーベキューができそうなバルコニーが見える。
「ちょっと待て!!やたらデカくね~か?栗原ん家!お前の父ちゃん仕事何してんだよ?」
ブッダが聞くと外に出ながら栗原が言う。
「父も母も病院の先生。じゃあ皆んなまた明日学校でー」
そういうと栗原は帰っていった。
「なるほどな」
栗原の過去を少し聞いてた僕は一人で納得した。
その後、車はあわナミとブッダを送って僕の家に着いた。なぜか先生も降りてくる。
「お母さん、家にいるかしら」
「あ、ちょうど今日帰ってきたんで居ると思います」
玄関には灯りが点いていた。
「ただいまー」
そう言ってドアを開けると久しぶりに返事が返ってきた。
「あ、お帰りー、乃斗(ないと)、お兄ちゃん帰って来たよー」
「ダダダダーお兄ちゃん!」
「おおナイト〜久しぶり。元気だったか?」
「うん!」
弟の乃斗が抱きつき僕は頭を撫でた。残念ながら予想通り仮面だったが…。母も後から玄関に顔を出した。
「おかえり…あら後ろの方は…ミサトじゃない。来てくれたの?」
「お久しぶりです。景子ちゃん」
「えっ?どういう事?母さん先生と知り合いなの?」
「知り合いどころか同級生よ。うちの子をいつもありがとねぇ」
「いえいえお世話になってますから」
衝撃だった。母と福良先生が同級生だったとは。という事は先生も38歳?若い、若過ぎる。ある意味今日一番の衝撃だ。
「じゃあ今ミサトに渡しとくね。例のあれ」
「あっはい」
そういうと母はリビングに戻りカバンから何か取り出し先生に手渡しした。
「確かに受け取りました。それではまた今度ゆっくりお話ししましょう。橘君、今日はお疲れ様。弟君ももまたね」
そう言いながら先生は帰って行った。 
「母さんが何で福良先生を知ってんだよ」
僕は乃斗を抱っこしながら言った。
「あんたの美術の先生でしょ?そりゃあ知ってるわよ同級生だし。ホント昔から美人よねミサトは」
そういうとキッチンへ戻って行った。僕は弟の手を取りリビングに入った。するといきなり何かが脚に飛び付いてきた!
「ワンワンワン!」
「うわぁぁぁーなんだこれー?」
小柄な茶色の仮面の犬だ!どうやらミニチュアトイプードルの様だ。しかし家にペットなんていなかったはず…。不思議に思ってると乃斗が教えてくれた。
パパがプレゼントしてくれたのー。おどろいたー?ジョンって言うんだよ!かわいいでしょ?」
本当に驚いた!まさか父さんに会いに行った旅行のお土産が仮面犬のプレゼントだとは…。もちろん家族が増えて嬉しいがよりによって犬まで仮面なんて…。いい加減、明日こそ水口先生に来てもらわないと家でも仮面の生活が…そう思うと耐えれるのかがだいぶ不安になってきた…。

 木曜日の朝、目が覚めるとすぐにリビングへ向かい家族の顔を確認した。母、弟、ジョン皆んな仮面。久しぶりの賑やかな朝なのに。今日こそ水口先生に合わなくては…。そういうと不意に昨日のことがよみがえってきた。
そういえば昨日栗原の名前を呼んで仮面が外せれたんだ。ならペットもいけるはず、何で昨日気付かなかったんだ。僕は試してみた。
「ジョン!ジョン!」
ダメだ。仮面のままだ。いやまだ諦めるのは早い。もっと試そう。
「ジョン!ジョーン!たちばなジョン!ジョンたちばな!トイプードルジョン!おいジョン子!くそ〜ジョン・ワン太郎!」
「ワオ?」
仮面犬が首を傾げている。そういえばジョンが仮面に見えてないといけないことを忘れてた。
「あんた大丈夫かん?乃斗がジョンって名付けたんだからそれでいいでしょ。そんな変な呼び方してないでさっさと朝ごはん食べて行きなさいよ」
「あはははっ、ジョンぱんだろーあははは」
弟が笑ってる。
僕はしぶしぶ机に座り母が作った目玉焼きチーズパンをかじった。
仮面の話を当然母に言えば馬鹿にされるだけ。今さらだが何で僕がこんな目に…いや朝からネガティブになるのはやめよう。早ければ今日にでもこの生活は終わる。そう思いながら食べ続け気持ちを日常に戻した。
「母さん今日粉チーズ買っといて」
「はいよ」
これで明日にはいつものルーティンが戻る。そう思って学校に行く準備をした。
「あ、そう言えば隣のおばさんが来てカレーとお菓子くれたから母さんからも直接お礼言っといて」
「カレー?本当だ冷蔵庫に入ってる!あんた何で昨日言わないの?晩ご飯作らなくてもよかったじゃない」
「わりー、じゃあ行ってきます。乃斗、ジョン行ってくるから」
「いってらっしゃい〜」
家を後にした。
昨日の雨は止んだみたいだが空には雲が掛かり地面は湿っている。だいぶ肌寒くなってきた。俺は体を暖めるため肩を丸め足早に学校へ向かった。
いつもの曲がり角に来るとブッダに会った。
「おはようたちばな、なあお前俺の顔は見えてんだっけ?」
「残念ながら見えてるぞ」
「残念は余計だろ!でも大変だなぁ。俺も手伝うから」
「ありがとう。とりあえず4人のなかで俺が顔を見えてないのがあわナミだけ。あわナミのは水口先生が外したから俺にはまだ仮面のままだ」
そう話しているとあわナミも合流した。
「おはよう!今日、水口先生来るといいね」
「そうだな。でも複雑なんだ…俺のが外せるとなると先生が…。だってよく考えたら17歳から今の今まで仮面生活だったなんて…」
「何か先生には理由があるのよきっと。それにたちばなを外した後に直ぐ外すんじゃないかな?方法があるのを知ってるとか?」
「きっと研究してたんだぜ今まで。たちばなが考え込む必要はねーよ。難しいことは大人に任せてまずは普通の生活に戻そうぜ」
「うん、そうだな。俺が外れた後に先生の手伝いをすれば…」
「そうよ。その後は皆んなで先生を手伝うから!たちばなは自分をまず優先して。それが私たちの望み。きっと栗原さんもそう言うよ」
「実は少し悩んでたんだ…。スッキリした。二人ともありがとう…」
「へへっ」
「いつも一人で背負い込み過ぎなんだよたちばなはー。昔からカッコ付ける癖があるし」
「あわナミの言う通り。よし!元気よく学校に行こう!」
「…お前は元気良すぎなんだよブッダは」
二人に救われた。もう悩まない。これで気持ちの整理が出来た僕は学校に向かった。

 教室に入るといつもの仮面の光景。だが僕は下を向くことなく自分の席に座った。
もし今日も来なくても大丈夫。仮面に恐れない。そう思うと少しだけ教室の空気が変わった気がした。そして4人は水口先生が来るのを待つ。
「ガラガラガラ」
チャイムが鳴る前に福良先生が入ってきて僕たち4人を廊下に呼んだ。
「4人とも今から美術室に行って待っててくれるかな?」
「今から?」
そういうとそのまま先生は教室へ入って行った。
「どういう事?」
「分からん。とりあえず先生に言われた通りに美術室へ行くか」
4人は美術室へ向かった。
 誰もいない美術室へ入ると窓側の所に椅子が4つ並べてあった。そこへ座って待つことにした。辺りはいつも通り色んな油絵や粘土作品、針金で作った顔の模型などが不揃いに並んでる。状況が分からない4人は一言も喋ることなく座り先生が来るのを待った。そこへ足音が近づいてくる。
「お待たせ!」
勢いよく入ってきたのは担任の水口先生だ。
「先生!!!!やっと会えた」
「お前たち元気だったかー?だいぶ大変だったろー?話は色々福良先生に聞いたから後は俺が話すだけだな」
そう言って僕たちの前に椅子を置き座った。ようやく仮面が外せれる。この日をどれだけ待ったか。
「待って先生。その前に何で休んでたの?そこから説明して下さい」
「悪いな、ある人と会っててな。それもこれから話していくから。まずはたちばな!お前だけが今仮面が見えてるのは間違いないよな?」
「はい。4人では自分だけです」
「よし!では単刀直入に言う!」
「わりいが先生は今、仮面が見えてないんだ!」
「「「??えっえっ!!??」」」」

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