はたらくってにゃに?
「なぁ、教えて欲しいんだけど」
見回す。辺りに人けはない。
「聞いてる? あたしだけど」
はっ! おかゆさん!(飼い猫)
「しゃべってる訳じゃないから。直に脳に飛ばしてる。さっさと適応」「え、あ、はい」
「はたらくってなに?」
「は、働くですか。そうですね‥‥‥『社会において何らかの利益を生み出す、または役に立つことで、個人または親族を生かす手段』でしょうか。とは言いましてもまずは『最初から自分にしか出来ないことを提供する』タイプと『その集団に適応した段階で収益または収益を生み出すための動きを提供する』タイプに分類され、前者は主に医者、弁護士、クリエイターなど、対して後者は会社員を指します。
後者に属する私としましては、価値観の一つとして、仕事ができる人とは「聞ける人」だと思っています。個人個人得手不得手好き嫌いがあり、そんなやかましい塊が集団になって動く。そこで必要になるのは必ずしも凄腕のピッチャーではなく、キャッチャーだと。誰だってその人の仕事があって、自分の持ち場で忙しい。そんな中、自分より圧倒的な仕事量を抱えているにも関わらず、声をかけると必ず手を止めて話を聞いてくれる、もしくは後に約束を取り付けてフォローをしてくれる、誰でもそんな人に一度や二度、出会ったことがあるはずです。
前職で「9割モデリング1割創意工夫」と習ったのですが、何もこれはその場に限ったことではなくて、これは「9聞いて1話せ」ということでもあるんだと思います。その位の割合で関わっていると、ある日突然不思議なことが起こります。
1の受け取られ方の変化。自分の発言の価値が上がる。それは何も特別なことを言った訳じゃなくても、ミラーリング、「聞いてくれた」という好ましい印象がずっとお返しをするタイミングを伺っていた。偶然それが同じタイミングで集っただけのこと。プレゼンテーションの時、相手が顔を上げているか。どんな目で自分を見ているか。何より「聞こう」としているか。それこそが己のやってきたことの成果。一員になる、ということなのだと思います。そうして」「長い」
「え」
「だから長いって。これ何時間かかるの? すんごい遠回りして表題に持ってこうとしてんだろうけど、前提履き違えてたらどこへも辿り着けないぜ?」
「ぜ?(‥‥‥おかゆさん、一応女の子‥‥‥)」
「そう、前提。そもそもそれを言うなら『聞く』じゃなくて『聴く』だろうが。聴けてねぇよ。人の話どうこうってきちんと受け取ることからだろう。全部取りこぼしてんだよ。よく見ろ満塁だぜ?」
「はっ!」
「もう一回聞くぜ。『はたらくってなに』」
「だから『社会において何らかの」「違う」
「何でわざわざひらがな表記にしてんだよ。問題変わってくんだろうが。ひらがなにする理由は何だ。『聞きたい人間が漢字が分からない位のちびっ子』もしくは『働くって漢字の成り立ちに抵抗を覚えて、わざとひらがなに表記を変えた大人』だろうが」
「はっ!」
「で、お前はあたしが『激烈プリチーなサバトラ、明日で9ヶ月の子猫』だと知ってる。知った上で、さっきみたいな『ドヤ顔理論』展開すんの? 頭悪すぎだろ」
「ぐうの音も出ません。ぐう」
「バカにしてんのか。やり直せ。『子猫』に『はたらく』を説明するんだよ。ったく、訳分かんねぇんだよ。何で狩りしねぇくせに毎日当たり前に食ってんだ。特にお前、最近毎日干し柿ばっか食ってんじゃねぇか。俺にもよこせ」
「嫌だっ!」
「魚の切り身が泳いでる絵を描く子供笑ってる場合じゃねぇだろ。本来笑われんのはそうした大人じゃねぇか。目に見えないもんばっか進化しやがって。いいか。猫にどうやって毎日あったかいとこで食いもんに囲まれて生きてんのか明確に説明」「おかゆさん、ささみ食べます? 湯煎しましたよ」
「にゃあ❤️」
「にゃあ」
‥‥‥‥。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はっ、夢か! ごはんね。ちょっと待ってね。
ほんと、はたらくってなんだろう。
「こくみんぎむ。にんげんとしていきていくための、いちしゅだん」かなぁ。
このくらいでかんべんしてください。
ねぇ、おかゆ。
【この記事は「はたらくってなんだろう」をテーマに書き上げたものです】