2021/08/14 絵本はオトナの心を自由にする
「2021イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」へ行ってきた。首都圏に居を構えてから、我が家の毎年恒例の行事となっている。
ことしは、国際コンクールに入選した世界23ヵ国76作家の作品が展示されていた。今回、初めてオンラインで審査されたそうだ。作家たちはデジタルファイルで作品を応募した。もちろん、絵本の原画は、紙に描かれていた。
作品紹介のプレートによると、さまざまな画材が使われていた。水彩、色鉛筆、鉛筆、マーカー、アクリル、コラージュ、オイル、デジタルメディア。
相澤史さん(日本)の「わたし、お姉ちゃんになります」は、混ざり合う色の表現が面白かった。
マリアノ・アラミさん(アルゼンチン)の「かわいいどうぶつたち空を飛ぶ」は、点のような無数の鳥たちが、空を飛ぶ様子が画面いっぱいに描かれていた。抱っこされていた乳児も「小さい鳥さんがいっぱいいる!」とはしゃいでいた。
国際色豊かなところが、この絵本原画展の魅力。シベリア鉄道の町、戦争から逃れて脱出をはかる難民、小麦畑の風景。
ジュリア・マリア・ベッリさん(イタリア)の「しみ」では、女の子が恐怖していた対象が「しみ」だと悟るシーンの原画が展示されていた。その次第に広がっていく「しみ」が、どんな結末をたどるのか。それこそ「しみ」のように心に残って、気になっている。
動物、夜、ひみつ、自然など、子どもが好きなモティーフのほかに、地球誕生の壮大なテーマの作品も。一枚の紙と一本の鉛筆があれば、どんな世界だって描ける。教訓めいたオチのある絵本はなくて、心の赴くまま、画材を駆使して描き出す世界。その自由さがいいいなと思う。
そこで思い出したのが、美空ひばりの『一本の鉛筆』という歌。1974年の広島平和音楽祭で初めて歌った曲で、ヒロシマをテーマにしている。
一本の鉛筆があれば 私はあなたへの愛を書く
一本の鉛筆があれば 戦争はいやだ と私は書く
一本の鉛筆があれば 八月六日の朝と書く
一本の鉛筆があれば 人間の命と私は書く
あしたは76回目の終戦記念日。一本の鉛筆を手にできる幸せをかみしめながら、何を書いていきたいのか、何を書くべきなのか、考えてみたいと思う。