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東日本大震災後に減った好奇心を育む地域の遊び場 機会をつくり得た“小学生の変化”(一般社団法人まるオフィス)

助成先団体の活動内容や、被災した地域の現在の課題をご紹介する連載シリーズ。

今回は、宮城県気仙沼市で活動をする「一般社団法人まるオフィス」です。

一般社団法人まるオフィスは、“地元の課題を学びに変える”ことを目的とし、気仙沼市の中高生の探究学習支援や、気仙沼市への移住・関係人口創出事業を行っています。今回ご紹介するのは、2023年度から始めた小学生向けプログラムです。

まるオフィスの加藤航也さんに、現在の気仙沼市の子どもたちにおける課題や、支援によって子どもたちや地域に起きた変化についてお話を伺いました。

一般社団法人まるオフィス 加藤航也(かとうこうや)さん

1989年生まれ。福井県福井市出身。2011年、東日本大震災の学生ボランティアとして宮城県気仙沼市に関わる。その後関東での会社員勤務を経て、2015年、気仙沼に移住。同年、一般社団法人まるオフィスを現代表や仲間と共に立ち上げる。

東日本大震災後の人口減少や環境の変化が 小学生の機会喪失につながっている

宮城県気仙沼市では2010年には434だった出生数が、2022年には215と、この12年で半分以下になりました。(参考資料:気仙沼市役所 市民生活部市民課)この急激な少子化によって、小学生の放課後の過ごし方にも変化がみられています。

かつては放課後に子ども同士で、空き地に集まったり野山に入って遊ぶなど、子どもの居場所が地域の中にありました。しかし近年では、近所に同世代の友だちが少なかったり、子どもだけで遊べる安全な遊び場の減少によって、放課後の多くの時間を家の中でスマホやタブレットを見て過ごす小学生が増えています。子どもたちの放課後の過ごし方が限られることは、友だちと協働して何かに挑戦をする、地域を知る、冒険をして好奇心を育むなどの、小学生のうちに経験できると良いはずの大切な機会の喪失にもつながります。

また、同じ理由から、運動不足による体力低下も課題として挙げられています。気仙沼市では、震災後に子どもの安全のために自家用車での通学が急増したり、閉校した学区からスクールバスで通学する児童もいるため、日常的に体を動かす機会が少なくなっていることも原因と考えられています。

地域の資源や大人たちの手を借りながら 好奇心を養う「放課後たんけん」

今回ハタチ基金の助成金をいただいたことで、気仙沼市唐桑地域の小学生を対象とした放課後プログラム「放課後たんけん」の企画運営を実現することができました。

子どもたちが平日の放課後に思いっきり体を動かし、地域を探検できるプログラムです。

月に3回実施し、現在各回50名ほどの小学生が参加しています。学年を超えて遊び、はしゃぎ、時には喧嘩をしながら、それぞれが思い思いの時間を過ごすことができているようです。

放課後たんけんでは楽しく体を動かす「運動あそび」と、食をテーマに地域を探検しそれを表現する「地域たんけん」という2種類のプログラム​​を行っています。

「運動あそび」は、跳ぶ、走る、投げるなどの基礎的な運動を遊びながら楽しく続けることで、子どもたちに身体を動かすことの楽しさや友だちと協働し競い合う楽しさを伝えるプログラムです。宮城県女川町で運動遊びの活動を行なっている株式会社つなぐと連携して実施しています。ドッチビーやリレーなど普段馴染みのある運動だけではなく、ポートボールやキックベースなど、やったことのない運動にも楽しそうに取り組んでいます。

遊びながら楽しそうに体を動かす児童の様子。

「地域たんけん」は、唐桑地域に豊富にある「食」をテーマに、地域を探検するフィールドワークのプログラムです。フィールドワークでは、地域の農家さんや住民の方にフィールドを提供してもらいながら活動をしています。これまで、りんごや菜花の農家さんを訪問したり、地域の方に案内してもらいながら野草や山菜を探しに行きました。普段だったら山菜を家では食べないという小学生も「おいしい」と言ってたくさん食べている姿がみられました。

また放課後たんけんの運営には地域のお母さん方やボランティア、インターンの学生も関わっており、小学生が多様な大人と触れ合う機会にもなっています。

地域を散策して山菜を探す子どもたち。

放課後に体験したことが日常へとつながる 子どもたちの大きな変化

このプログラムを通して、子どもたちに、3つの変化が見られました。

1つ目は、放課後も友だちと遊べることで、小学生同士の関係性がより深まったことです。「こんなにたくさん友だちと遊んだのは初めて!」と楽しそうに話してくれる1年生の子が印象的でした。

2つ目は、運動不足の解消です。それにより保護者からは「(子どもの)寝る時間が早くなった」という声も聞かれました。

3つ目は、自分が住んでいる地域への理解が深まったことです。普段スクールバスで通学をしている小学生が、「初めて歩いた道があり、地域のことに詳しくなれた」と言ってくれました。

まだ始めてから1年未満ですが、小学生や保護者からも継続を望む声をもらっており、プログラムの価値を感じています。

寄付者の皆さんへのメッセージ

ご支援をいただきありがとうございます。

小学生の放課後をもっと魅力的に!というと、なかなか課題としては認識されづらいかもしれませんが、猛暑日などの危険な気候の日が増え、熊などの野生動物が増加している状況で、子どもだけで屋外で遊ぶということが難しくなってきている現状があります。

そんな状況でも、子どもたちが自分の地域で思いっきり遊び、探検できる環境づくりを、気仙沼から東北や全国に広げていけるよう、これからも取り組んでいきます。今後とも応援のほどよろしくお願いします。

ハタチ基金
「東日本大震災発生時に、0歳だった赤ちゃんが無事にハタチを迎えるその日まで」というコンセプトの下、東日本大震災発生直後から20年間継続的に、被災地の子どもたちに寄り添い支援を行う基金。皆さんからいただいたご寄付は、東北被災地の子ども支援団体に届けています。
詳しくはこちらをご覧ください。

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