それじゃあ年末食料が足らないな、大真面目な顔で胡椒餅を食べながら鬼丸が呟く。じゃあ買い出しだな!大規模なショッピングセンターまで行こうそしてそれはデートだ!千弦その考えいいぞ!お楽しみのために俺らも楽しむ、乗っかってくれる奴でよかった、胡椒に咽せる顔見ながらそんな風に思った(完)
伊達さんからです、俺にそっと袖の下のお札を握らせて席を立つと、ひょいっと雅宗先輩をおんぶした。伊達さんだけ担げばいいんで大丈夫、ハルちゃんは設楽に手を引かれ、それではお二人とも年末に、挨拶して店を出てった。まだちょっと飲み足りないので鬼丸とここで二次会。なに追加しようか鬼丸(続)
じゃあ今日は診察終わったら一緒に買い出し行こう、それいいな!思わず二人で浮かれまくる。一緒に行くのは久しぶりだから寄りたいところが山ほどだ。しかも鼻のきくバージョン鬼丸と一緒。ムフン。顔中に俺フレーバーを擦り付けてやりたい衝動を抑えて、夕診の片付けを滞りなく終え、さあ出発だ(続)
オレの家ではビーフシチューに炒飯を合わせるんです、設楽衝撃の告白。洋風に中華ありっちゃありだが合うのか?年に数回のご馳走なのでダブル好物の相乗効果で肉が少なくても大丈夫なんです、大家族楽しそうだけど大変なんだな。設楽のビーフシチューうんまいよ、雅宗先輩も太鼓判、是非作ろうか(続)
僕もビーフシチュー食べたいな、とハルちゃん。よかったらハルさん(ハルちゃん)達も来な!俺と鬼丸の同時の叫び。じゃあ年末年始遊び行ってもいいん?雅宗先輩長期休暇ウチで過ごす目論みだな。いいよな千弦、鬼丸も賑やかなのが好きだからな全然大歓迎だぞ!よろしくお願いします、設楽の御意(続)
ちょっと早いけど忘年会だお疲れ様だ!わーいいタイミングう!すでに出来上がりつつあるハルちゃんと雅宗先輩と大ジョッキで乾杯。ハルちゃんビール珍しいね、TPOでお酒を選ぶんですよンフ、酒宴大歓迎の店長が頼んでないのに宴会セット持って来てるじゃないか。鬼丸が料理画像見て嬉しそうだ(続)
軟体動物に該当するわけではありませんが柔らかい体を硬い殻で身を守っておりまして陸上・汽水域に生息するいわゆる甲、ハルちゃんのノンブレス冴え渡ってんな。雅宗先輩はさ一見柔らかそうな見た目だけど意外に硬い壁作ってるんだ、そんで中身ふにゃふにゃ、さすがちいたん俺のことわかってるう(続)
俺食べたいものあってさ。夕飯リクエストかどこ寄ろうか。いやクリスマスとかでいいんだ。今から食うやつじゃなくて未来的なリクか。ビーフシチュー作れるか千弦?全然想定外な答えだな。俺は一度も上手く作れたことないんだ。それでウチじゃ出ないのか。よし鬼丸俺が作ってやろうビーフシチュー(続)
わあいお誘いありがとね!伊達組が鎮座。ちいたんから連絡もらったから来た!隣で頷く設楽。で既に呑んでるのねハルちゃん。びっくりしたあ、え鬼丸知らずにここ入ったのか?何か頭の後ろがヘンな感じになったんだよ、もはやオカルトの域だな。それでレシピ幾つかあげてみたんだけどね、早速会議(続)
写真を何枚か撮って雲母さんと伊達さんに送ると、怒涛の返信が。何どうしたの可愛い、言葉の嵐をすり抜けて、フクに紹介された友達です、送信。物置に置いてある段ボールが気付けばこの子仕様にカスタマイズされている。お前いい家じゃないか、子猫はフクに鼻先で小突かれながら小さな声で鳴いた(続)
肉料理って言ったら俺らの他には雅宗先輩とこだからメール打っとくとして、今何食べようかって話しようとしたら鬼丸がいきなり店入ってった。いつもの台湾料理。気に入るとそればっか食べる、そういう男子だったわそういえば。んで席座ると店長がいつものを運んでくれる。まずは大ジョッキだな!(続)
その中で目に留まったのは時短でできちゃうやつ。それ設楽家のやつなんだってさ、設楽は大家族だからかうま早大容量に詳しい。何時間も煮込んだやつもいいけどこれ試してみたいな、すると鬼丸がビンゴみたいな顔してる。あこれで正解なんですね。一通り説明受けて画像貰って、じゃあ仕切り直して(続)
伊達さんあれだな奢ってくれたなラッキー、すげ嬉しそうだな鬼丸。お二人さんさっき胡椒餅届いたんだけど食べるか?店長カットインにより俺らの食欲倍増。めったにないやつだからありがたく頂こう。ビールも追加して改めて乾杯だ。イカ団子がサービスでついて来た。このヒリヒリ感が本当いいよな(続)
フクはリード抜けしてはよくここの裏庭に転がってたりする。その都度捕まえてお向かい宅まで送ってやるんだが、実はこんなふうに普通に来たり帰ったりできる。フクはフンッと鼻を鳴らすと、こっちを振り返りながら誘導していく。え何なの何があるの、フクはお向かいさんの畑の物置に入っていった(続)
空の色が変わったと思ったら朝晩冷え込むように。いつものマンション最上階の家では感じられない「体感」。今日は何かしら代休。しかもオレ一人。年末はどうしても三人揃うことは難しい。玄関を出ると向かいの柴犬フクが行儀良く座っていた。何だお前珍しいな、柴犬にしては大きな頭を撫でてやる(続)
そしてそのふにゃふにゃは溶けて流れたりしないんです、そうだなでも設楽ここデレるとこじゃなかったな、そしたら今まで鬼丸と話してたハルちゃんが、え?ふにゃ◻︎ん?それは外で言うやつじゃないな、このままだと完全に潰れるといけないから解散な、鬼丸は強いからいいが設楽がちょっと大変かな(続)
暑すぎた夏から一気に秋そして冬。一気すぎないか、だからなのか秋から冬にかけての例のやつ、花粉の方々も一気にやってきた。今日も朝から鬼丸は沈んでいる。暗くなってるというのではなく、こう、全体的に重い感じ?動きとか。俺のアメージングボイスにも反応が薄い。鼻水洪水だしな仕方ないか(続)
とりあえず子猫を抱えてフクと一緒にお向かいさんの家を訪ねると、譲ってもらったのだがどうにもあの物置が好きなようで母屋に戻ってこないらしい。トメや他の猫とは上手くいっているようなので、一旦物置に戻すことに。その間フクは子猫が気になってソワソワ。大丈夫だよ連れてったりしないから(続)
ハルちそんなにキノコ好きだったん?そう聞くと、この煌びやかな光を纏う植物いえ菌類の生態系を直に感じたく、始まっちゃうノンブレス。前祝いでしたねぱあっと行きましょうか、待って俺の秘蔵のお酒並んでんのちょっとお!お肉もキノコもお酒も山ほどの大収穫。そう勿論お前達もよ、な秋の1日(了)
お向かいさんの敷地に入っても、オレらは獣医なので犬猫絡みだと逆に歓迎される。物置の中、フクが得意そうに座るそこには一匹の真っ白な子猫。どうしたんだフクその子は、するとフクは鼻を鳴らし顔中を子猫に擦り付けている。子猫は無反応を装った我慢顔。ワンちゃんの愛情表現は重めだからなあ(続)
ビーフシチューから美味いもの談義へ。ハルちゃんと鬼丸は台湾カステラとワインにシフトチェンジ。だあからあ俺は言ってやったのよおハルちゃんが大好きだってねえ、雅宗先輩安定の絡み。先輩さ酔うといっつもソレだな、通じてるのかわかんないけど、ふにゃふにゃしながら設楽に物理で絡まってる(続)
ていうのが毎年恒例の鬼丸情報だったのだが、どうも様子が違う。動きが緩慢なのは単純に眠いからで、何より鼻水が出ていないプリティ鼻の下。花粉症大丈夫か?俺の言葉に、千弦俺今年は何ともないかもしれない、うわ嬉しそうな顔。美味いチョコ食った時みたいな。何がどう効いたのかはあれだけど(続)
鬼丸の「美味しいものセンサー」が鼻効いてると全開になるから、どんなリクエストがくるか楽しみだな、焼酎かチョコレートか、裏をかいて高いスモークソーセージかもしれない。何が来ても応えてやる、それがスパダリである余裕ってやつだ。千弦さっきから誰に話かけてるんだ?それは自分自身にだ(続)
それにしてもこの二人は仲良し。ダイニングの椅子がベンチタイプてのもあるけど、横並びでそんな密着しなくても。今日は赤ウィンナー沢山てお願いしたった、やだそれ俺の大好物じゃないのいいの?真々部さんの好物だったんですか和尚、ママはそういうのが好きなんやよ、赤いの黄色いのみたいなの(続)
やるなママよ、和尚の不敵な笑い。てか全然カッコよくないし。お薬嫌いなオジサンが無理くり飲まされたみたいなってる。達ちゃんはこうでもしないと薬飲まないからね、コドモですか。さあさあお布団行ってね忙しいんだから、コドモですか。和尚は大人しく部屋に戻っていった。夕飯どうしようかな(続)
和尚もう大丈夫なんですか?ああ俺あ寝て起きたらなんでも治るんよ、和尚は赤ウィンナーの増量リクエストすると真々部さんのいる客間へ向かった。麺を茹でる間に玉ねぎとウィンナー炒めてケチャップを…集中してて気づかなかったけど、いつの間にかダイニングに二人がきちんと座ってた。てか気配(続)
なんだいい匂いするな、和尚が覗きに来ちゃった。ここで食うわ腹減った、ダイニングのイスにすわって丼にレンゲを突っ込んでる。なのに真々部さんは笑ってる。このおじやは達ちゃんの好物なのよ、残りを茶碗に入れてくれた。ジャンクぽいけどなんだか懐かしい味。ジャンクだなとか思ってるでしょ(続)
お料理得意じゃないけど、そう言いながら真々部さんはだしパックとお湯とご飯を鍋に投入。あだしパック出さないと、いいのいいの一緒くたでそんで卵入れるのよ、お醤油とかは?味付けはねこれ(の◻︎たま)と海苔。あっという間におかゆかおじやかが完成。だしパックをつまんでポイして丼に盛って(続)
ジャンクというよりB級グルメですね、よっちゃんのご飯には敵わないけど、この丼は思い出食いってやつなのよ、そうそうマズウマな、和尚が丼を平らげ笑っている。マズウマって何よ達ちゃん!食べたんなら薬飲んで寝ちゃいなさい、俺あ薬いらねえ、な和尚の隙をつき錠剤を口に放り込む真々部さん(続)
珍しく早々に可愛い言ったったのに何その不満げな顔は。いつもはもっと引っ張るのに、やだなあ引っ張ってないってもお、でもほんとキレイなキノコよねえ。持って帰ってハルちゃんにも見せよう、きっと喜びますね、ハルちゃんの名前出したら通常モードなったよかった。テント出て山道を家に向かう(続)
お夕飯は普通に作ってくれて大丈夫よ達ちゃんは一時間くらいしたら起きてくるから。え具合悪いんじゃ、起きたら全快してるわよ面白いでしょ、ケラケラ笑いながら真々部さんは仕事をしている客間へ。半信半疑でナポリタンの支度を始めたら、本当に和尚起きてきた。あー寝た寝た、おっナポリタンか(続)
こないだダウン出しといてよかった、な気温。それでも風のない夕暮れは群青に沈んで、見上げた空には輝く星。賑やかな商店街を目指して手を繋ぐ。そういえば12月はクリスマスだな、プレゼント買わないとな。今年は何が欲しいとか、結局正解はないから相手の動向を伺うんだ。嗅覚の戻った鬼丸の(続)
そういや首のとこがスースーすると思ってたんだ、達ちゃんは自分に無頓着なのよ、真々部さんが珍しく真顔で嗜めている。ママよお前仕事は、いいのよまだ時間あるから。よっちゃんちょっと手伝って?俺にこっそり耳打ちして一緒に台所に。達ちゃんって病院の薬受け付けないから食事でいきましょう(続)
今日はかなり寒暖差があって寒いのに和尚はいつもの作務衣。寒くないですか?んなもん全然だよ、ちょっと失礼して額に手を当てるとかなり熱い。ちょっと熱ありますね、ほらあやっぱりい!真々部さんが何故かキレ気味に和尚の部屋に布団を引き始めた。そんな大袈裟な、そんな和尚を無理くり布団に(続)
カラフルなのもあるけど美味しいのよなかなか。大皿に盛ったナポリタンをテーブルに置く。ポテサラときゅうりも添えて。こういう喫茶店風のご飯でもすごく喜ばれるから作る方も嬉しい。食べっぷりもいい。和尚もう大丈夫そうですね、するとニカッと笑ってみせる和尚。口の周りケチャップだらけで(続)
ナポリタンかカツサンド、出来るまでどて煮と般若湯で繋いで…台所でシミュレートしてたらかなりの勢いで真々部さんがやってきて、達ちゃんが何か変なのよう!そんなバカな、縁側の和尚に特に変わった様子はない。何だお前らどうした?真々部さんが和尚が変だと、達ちゃん薄着なのに手が熱いの!(続)
朝の読経、境内の掃除。寺に住んでいる猫達にご飯をあげていたら、よっちゃんお早う、優しげなおネエ言葉は和尚の幼馴染、キャラクターデザイナーの真々部さん。今日はここでお仕事させてもらうのよろしくね、袋いっぱいフルーツの差し入れ。お礼を言いながら今日の献立を考える。B級グルメだな(続)
いい感じに焼けた頃合いに設楽が皿に取り分けてくれる。大きい肉は切ってくれるていう。お前気遣いすぎやん何なん、ぱっと来てぱっと食べた方が美味しいじゃないですか、うんまあそうだけど、こいつはほんと世話焼きだなあと思う。すると俺の携帯にメッセージ。もうすぐ帰りますなハルちゃんから(続)
松茸と栗とあと焼いたらよさげなの持って庭のベンチのとこに。設楽がバーベキューコンロ出して早速獲物を並べている。よく冷えたビール開けてのんびり待つ。足元には蚊取り線香。今なんかいいカガクの力のがあるだろうに、この煙臭いのがいいんだよねえ。ぱちぱち爆ぜる音と白い煙が空に昇ってく(続)
雲母さんにも見せたかったんです、設楽は例の小瓶を差し出した。恐る恐る手に取ったハルちゃんは不思議そうに眺めた後、トランス状態に(集中しすぎて何も聞こえなくなってる)きっと頭の中ですごい勢いでノンブレス解釈が炸裂してるんでしょう、ハルちゃんの分を小皿に取り分けながら設楽が言う(続)
夢中になってるハルちゃんが〝戻ってくる”までは見守るだけ。設楽がいい具合に焼けた肉や松茸を皿に乗っけてくれる。おまビールとかがいんじゃないの?お願いします、ビール取りに行ってついでに冷蔵庫で見つけたイカの一夜干し。一気に居酒屋まあいいか。庭に戻ったらハルちゃんも〝戻ってた”(続)
想像してみて欲しい。スーツ、しかも超名のある風の。そんでおろしたてのウェリントンフレームのメガネで超美形の俺のハルちゃんがよ?瓶詰めのキノコテラリウムをまじまじと眺めてるの。例えバーベキューコンロで炙った松茸を頬張りながらでも。オレは思うのよ、なんて綺麗な子なんだろうってね(続)
そのまま手引っ張られて再び裏山方面へ。えなんで戻るんよお、見せたいものがあるんです、林の中にある設楽の隠れ家テントに。暗くならないうちに帰りたいんよ、大丈夫ですほらこれ、設楽が出してきたのは小さなガラス容器。そこにはテントの暗がりに映え、緑色に発光する物体が。えっと何コレ?(続)
コツコツ、靴音。すると門の方からすごい勢いで誰か来た。キャー怖いー!すみませんエンジン調子悪くて電車使いました、息荒げのハルちゃん帰還。いい香りですね、嬉しそうなハルちゃんにウェットティッシュを差し出して、車出したのに、声をかける設楽に、ありがとうございます、ただいまのキス(続)
スパダリの道は一日にして成らず、よねえ。伊達さんはいつからそうなろうと思ったんですか?金木犀の写真をカシャーカシャーしてる俺に真面目に聞いてくる。忘れちゃったけど気づいたらそうなってたん、元々自由気まま、でも相手に対してはいつも真摯、例えそれが複数でも。気遣いしいですか成程(続)
伊達さんが金木犀がお好きなので、ハルちゃんがそう言って庭師の小越くんに頼んで植えてもらったと。そっかあ嬉しいん、伊達さんの好きなものはオレらは常にリサーチしてますんで。気づかないとこでそうやってサプライズ用意してくれるお前らの事イイなあって思うよ思う。貴方はスパダリですから(続)
三人で行こおキノコちゃんの国。ハルちゃんはビックリ顔で数秒固まった後破顔、すごい破顔。伊達さん設楽くんすごく嬉しいです、キャー言う勢いでハグそしてハグ。今予約入れました、全員のスケジュール完全把握なんよねウチのコンシェルジュ設楽。今度からコン設楽て呼ぶわ、御意、じゃあ前祝い(続)
伊達さん設楽くん松茸もお肉もとても美味しいです、いつの間にかお皿が空に。追加分をじっくり焼いてる設楽はハルちゃんの好きそうな重めの赤をグラスに。まあ外で呑む時はぐい呑みみたいなやつね。この可愛いキノコはどこかで採取されたんですか?いえ実習に行った先でオレの靴に付いちゃってて(続)
こないだ実習で行ったとこでシューズの裏に菌糸付いてたみたいで。え培養したん?多分踏んじゃって何とかならないかと。見事再生したねえ可愛いねえ。オレがですか?んやキノコがよ。再生できたオレは可愛くないですか、だからキノコだよ、オレは可愛くないですか、禅問答かな。わかった可愛い(続)
ハルちゃんはこの家に来てからキノコ類が大好きになったらしい。裏山の松茸とかもあるけど、ご近所さんから沢山貰えるんよキノコ!見た目あれだけど絶品、的な。恐る恐る口にした時のハルちゃんの顔がほんと百面相みたいでねえ面白かったん、あごめん可愛かった、よね。今じゃ毎日のように食卓に(続)