母は母であり同時に作家だった。 「そんなにも病みつきになるのはどんな瞬間を知っているからなの?」 怪我を知ると母はそう聞いて私の中に眠るページに手を伸ばす。 「まるで凪みたいだ。それにしても、その瞬間にもう出会えないなんて誰が決めたの?」 ページを捲るには充分な言葉だった。