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◆「漱石にとって、言語は―日本語は―けっして自家薬籠中のものであったためしがない。言語は、いつも、どうにも手なずけられぬ生きものたちだったにちがいない」(佐藤信夫『わざとらしさのレトリック』41頁)。きまじめすぎる認識者ゆえにレトリックを強いられる、並外れた修辞的表現者。

◆「悪しきコノテーションは、類推と暗示によって、決して自然でも当然でもないものを《自然らしく》《言うまでもない当然なこと》と思い込ませる。それが、勝ち誇る言述となって固形化し、ドクサとなる」(佐藤信夫『わざとらしさのレトリック』274-275頁)。範型のアナロジー濫用への警戒。

◆「標準的な意味分節の標準的な構造化にあてはまらないような現実(もしくは虚構的現実)を、あえて構造化してみるひとつの手だては、別のカテゴリーに属する意味分節とその構造性を借用してみることである」(佐藤信夫『わざとらしさのレトリック』31-32頁)。諸範型を近位項として対象をみる。