【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 夏は黒 積みタイヤ越し影揺れて 傘下のしら雪 少女の肩こぼれ 夏。積み上げられた黒いゴムタイヤから生理的に見たくないほど暑さ感じる。そこにしゅっとした可愛い子が傘したのしら雪のような肩半球だして行き過ぎたら救われる。
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 アパートの壁の染みまで花に見え 初めて自分の嗚咽聞いた日
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 ガラス灯のさんざめく息 夜の声 秘密の押し入れビー玉かしまし
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 なんだキミかと見あげた溺れ月 お箸でぷすり とろり飲み干し
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 わたしから各駅停車は出ていません あなたから迎えの電車が来ないのです
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 君沈む湖の底エメラルド 宝石にして秘密のポッケへ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 築地からお魚がえりの海の匂い 涙も宙返りして空へ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 君が去年蹴った小石は死んでない 生きてじっと君を見ている
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 真四角の天井から畳まで 滑り落ちる銀河観てるずっと
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 いいかげんメトロノームの泣き声察しろ自由音符気持ちアンプ メトロノーム ずっと正しく泣いていた ずっと正しく泣いていたんだ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 謝るよ 悪かったって本当に 才能の塊でごめんよ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 紅信号のない河渡って花手紙夜のポストに抱かれて散って
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 あつらえたビルのまにまに夏が降る すべてのコインロッカーに遺書
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 甘エビの下着脱がせばもう濡れて 吸いつく湿り気に震える舌
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 今すぐに座蒲団脱いで服を着て 毛玉吐いても生きてきた人生
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 膝のした15センチの海抱いて 青い海月に溺れてみせる
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 ボク探しミトコンドリアと赤血球 細胞膜を隠し撮りする じゃっかんのうしろめたさののぞき窓 からだぢゆう光るプレートに透けて ※電子顕微鏡で探したのかな
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 がんばったナメクジには砂糖をあげて 負けて泣くほうひとりでに海
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 オサカナだ!ねえパパ見てよ!オサカナさん! ああホントだねうまそうだ、「え…」 (子供白目・字余り)
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 その口の中にドクダミ飼っている 十五万株くだらないほど
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 “猫でんで”はるか東の かの国で 夜な夜なでんでとはずむ鞠猫(まりねこ)
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 うどんだね 白くてまぶしい うどんだね つるりと光って 喉の奥へと
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 「ありのまま でいい」というその欺瞞 抗うためにある「ありのまま」
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 「レレレのレお出かけですか?」と問う君に かける言葉が見当たらぬ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 ヘケケケケ!隣の部屋で鳴いている 心なくしたあわれな父よ
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 図書館で本の尻尾とふたりきり 沈む夕陽とどんぐり数え
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 いくらかはケチャップ星の受付で 聞けるらしいよ地球の値段
【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 豆腐になるのを諦めた不埒猫「抱いておしまい!」にがりつぶして