憧れても得られぬものは、 自分の中で、架空のものとして、描き出すしかなかった。 私の小説は、そうして紡ぎ出され、 やがて天からおろされるような必然的物語として、私の中で文章になっていたのだった。 世に出ることはなくとも、誰に知られずとも、 また、物語を紡ぎたくなった。
あえて言わなくてもいいような、 自分にとって大切なことを、 特に親しくもない人に、うっかり話してしまい、 覆水盆に返らずな、モヤモヤな気分になってしまった。 悪口とか邪言ではないけれど、あえて言うことではなかった。 玉櫛笥は、ひそかに秘めて開かぬもの。 ひとりしずかの境地。