バスの窓からスーパー入口が見えた。 自動ドア横の消毒液交換が終わり、店員が固定している。 誰のため?お客様のため。 バスでお尻がへばりついた、間接的な僕も、その店員さんから見たらお客様の一人。 利害関係ばかりで博愛の精神が少し足りないのは僕だと思った。
鬱屈とした気持ちを抱えながら帰ると、誰かに聞いて欲しいと思う。だが、その熱量は自分が思うより果てしなく高い。 帰って数分で怒鳴られる。 昇華できなくなった僕の思いはすぐに怒りに変わる。 働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり。意味を変えて納得する。
誰も食べなくて、冷蔵庫に冷えていたスーパーの焼き鳥。 温めて、真横一文字に串を頬張り、肉を引き抜く。 その時に口の両端が汚れた方が美味しい。動物は串を使わないはずなのに、動物の野生の勘が僕に戻ってくるみたいだ。 行儀がいいというのは何かを我慢してる。
同じバスに乗ると、人の行動特徴に気付く。 二人席を一人で占領するおばちゃん。 華奢な女性の隣限定で座るスキンヘッドの大柄な男。 後部座席に座る男、僕。 みんな毎日必ずそうするから笑ってしまう。 魂胆は必ずある。気付かれないようにする。だが、バレてる。
好きなことやろうと様々な媒体で文字が並ぶ。 今は瞬時に世界の隅々まで知れる。無数の中から趣味も探せる。 だが、ネットもない時代は数少ない活動で楽しいと思ってたはず。 暗闇の中で寝るしかなかった人たちこそ充実した毎日を過ごしてた気がする。 現代は切ない。
会社でもらった金券を使うため、期限最終日夜のコンビニへ向かう。 全台セルフレジにし、店員さん一人が品出ししてる。 そんな中、煙草やお酒のため、度々有人レジに戻さないといけない。少し苛立ってる。 僕は金券とともに、ポイントを付けるのも気が引けた。
館山の大好きなスーパー銭湯。 高濃度炭酸泉温泉が特に体に合った。 効能は血行促進などと書かれている。実感はないが、信じてみたくなる。汗が吹き出す。 世の中実感がないことばかり。その中で信じることが明日へとつながる。 湯上がり後、ノンアル炭酸で清める。 #その中で信じる
三連休が影響するのか、金曜朝のバスはいつも乗る人が何人かいない。 四連休を計画しているのだろう。 いつもの同士がいなくなったようで、少し寂しい。いつの間に仲間化してたのだろう? 連休はどうせ明日から休みだしモードを早くから作り出す。嬉しい。
たっぷり寝た後で目を覚ますと、同じ日常。 また昨日をぶり返しそうになるが、グッと我慢する。 これが、起きたら温泉宿だったとか、せめて日曜だったら気分も違うが、そんな簡単に日曜はやってこない。 いる場所が度々変わる旅人になりたいと思った子供の頃を思い出した。
信号が変わり、大勢の人が待ってましたと歩き始める。 その側には、警備員のおっちゃんが口をつぐみ、ムスリとした表情で動かない。 勤務開始の7時までのあと数分を大事にしているのか。 人間の表情でこのムスリが、何故できたのか分からない。威圧だけとしたら無駄だな。
秋の交通安全週間らしく、アピールするように週末は交差点に警察官が立つ。 やれ、横断歩道に人が通る時にピー、曲がってよしピーというように、やたらと笛を吹きまくる。 そんなのは知ってると言わんばかりに、車は渋滞する。 気まぐれでやられてると思うとピーだ。
くたびれた食洗機から、新品のコーティングされたビニールが剥がれてきてる。 傷が付かないよう放っていた。 CDのビニール、新車の座席ビニール、リモコンもそうか。 新品はビニールで守られ続けてる。僕らはその後も守り続けてる。 今日は汚いので思い切り剥がした。 #ビニール解放
同じお店で同じものを食べられる幸せ。 毎日だと辛いが、一週間くらい空けて食べると丁度美味しい。舌が、脳が忘れかけているからか。 タルタルをたっぷり付けて食べる。前も同じことをしたのを、口に入れて思い出す。 昔食べた忘れられない味の反対。 #最近食べてまた食べたい味
ドーナツ店はショーケース前で行列ができている。 みんな選ぶのと並ぶのに夢中でなかなか進まない。見てると、面倒臭くなってくる。 早く選ぶ、逃げたいと僕は思ってしまう。 ショーケースはアトラクションではないので、みんな早々に飽きやすいのも分かった。 #ドーナツショーケース
江戸川の土手に上がると、天気も相まって気持ちが良い。 見晴らしの良い場所に来ると、自分の気持ちも見晴らせる気がしてきた。 スポーツサイクルの人たちも集まり、談笑してる。普段着の僕も、今日だけは仲間っぽい気持ちになる。 自分ではない自分になるの大事。 #江戸川を見晴らす
口内炎と恋は似てる。 深く傷付けた瞬間からしばらくその傷が痛む。 治り始めた頃から痛みに慣れて、当たり前のように思える。 だが、急に滲みたりして、その傷を大きく思い出す。後悔する。早く治れと切に願う。 治った後はニアミスでもしないと思い出さない。 #口内炎と恋は似てる
寒くて身震いするから、風呂に早くも飛び込んだ。 何て天国!部屋の寒さをいとも簡単に打ち消してくれる。体が温まる。 この間まであちあち言いながら入っていた湯船から、簡単には出られない今日。 風呂があるから一日やり切れるのかも知れない。そんな有難みを知る。 #風呂の有難み
乗ったことのないバスに任せて、知らない道を走る。 電光掲示板を見てると、知らない地名や建物ばかり。 日本全国名前のない土地はどこにもない。 昨日のドライブでもカーナビが全て知らせてくれた。 昔からみんなが分かりやすいよう、名前を付ける親切心。至れり尽くせり。 #地名
段々雨が強くなってきた。 路地から合羽を着た人の乗る自転車が出てくる。 どんな高価な合羽でも、顔には何も対処なくびしょ濡れだ。 傘差し運転がなくならない訳だ。 前を見るため、顔は濡れても仕方ない。 こんな進化しても、まだ笠地蔵辺りから変わってないの笑う。 #合羽の運命
小雨の早朝、自宅近くでフードを被り、前屈みの男が歩いてくる。顔は見えない。 どこかで見たことある気がする。 すると、向かいの家の門を開けた。 お向かいさんだ! 顔は見えなくても、人は何故か勘づくことができる。 頭は常に知り合い照合してるのかも知れない。 #知り合い照合
旅先では店員さんに生活感を感じないことに気付いた。 今日は館山のコンビニバイトの女の子たちが家に帰る気がしなかった。 自宅近くは生活感に溢れている。 だが、旅先は生活を感じないよう自分で蓋をする。 とは言えSAのインフォメーションは19時丁度に電気が消えた。 #旅先生活感
隣のおっさんがスポーツ新聞を広げている。 一面はドラフト会議を経た若い選手の笑顔。 合格発表みたいなものか。違う世界にいる僕はあまり分からない。 自分の周りはつながっているようで、雑然と横にありはだけだと思った。 そこにいかに興味を持つかかとふと思う。 #ドラフト世界
これまで行列のラーメン屋が、今夜は空いていた。店員も一人だけ。 よく見ると、端の席は壊れたまま。壁紙は剥がれてきている。 栄枯盛衰を感じる。 みんな色んな影響を受けて、上がったり下がったり。 だけど、何が原因かは絡み合って本人にはなかなか分からない。 #栄枯盛衰の原因
地下鉄で電車を待って座っている。 通り過ぎたスーツ姿のおじさんはビジネスバッグの他、手土産の紙袋を持っている。 デジタル化が進んでも手土産で印象が変わるアナログな社会。 座って一息ついたおじさんはまた立ち上がり、紙袋を揺らしながら行ってしまった。 #手土産ありきの社会
朝クリーニングを出して、店を後にする。 後ろで、レジの通常仕上がり日設定を間違ってたと声が聞こえてくる。 本日仕上がりの僕は何かできないかと、もう一度店に戻る。 だが、大丈夫と言われて、店を後にする。 昔から困った人が見逃せない性分だ。それが遺伝してる。 #それが遺伝
おまかせ刺身定食が美味しかった。ただご飯が少し疲れていた。 魚の名前は、釣った時も捌かれた後も分からない。 多分鯛じゃないかな、鱸はこれかと半信半疑で美味しく食べている。 持ってくる人も自信がなさそうな時が多い。 釣った人と捌いた人だけがきちんと知ってる。 #魚の名前
館山自動車道は空いている。 制限速度までスピードを上げて進んで行く。 一人音楽を聴きながら、車を運転することの楽しさを思い出した。自分のペースでSAに寄る。エド・シーランが何だか沁みる。 途中法定速度関係なし車や改造バイクの集団。みんな道路を楽しんでる。 #道路を楽しむ
家族が寝ている間にしたいことは沢山ある。 少し早く起きて、その時をどう使おうかと考えていると、ドアが開く音がする。 計画は頓挫する。 何故起きて数秒後からやらなかったのか。 起きた音がした瞬間から、今日の生活は始まる。洗濯物を吊りながら思った。 #家族が寝ている間に
ストレスが溜まると、肉を食べたくて仕方なくなる。 DNA的に、相手を倒して喰らいつく動物的感覚を得たいのか? 相手をやっつける感覚はストレス発散させる好戦的な状況だ。 どんなに野菜を油っこく食べようとこの感覚はごまかせない。欧米食は確かに理に適っている。 #好戦的な肉食
コピー用紙を数えていると、突然の痛みに襲われる。 人差し指が切れて血が流れ出す。 「痛っ」と言葉が漏れ、傷口の指をくわえた。 なんて自然な動き! 子供の頃から変わらない! 血が滴るのを防ぐのか、唾で消毒か。 このご時世だから、後からくわえたのは正解か悩んだ。 #唾で消毒
夕暮れの道を行く。 どこかから微かに焼いた魚の匂いがする。もうどこかで夕御飯が始まりかけている。 自分の時間軸をその家庭に近付ける。 一緒に生活するため、今日玄関を開けたくなる。 夕御飯の匂いはいつも安心する匂いだ。一日を終えるための儀式な気がする。 #夕御飯の匂い
しばらく会えなかった人と偶然会い、応援の言葉をもらった。 何があっても、何も変わらない自分でいるようにと。 その言葉がただただ嬉しかった。 巡り合わせとは不思議。 神様がいるような時間続く。 何が変わっても、自分らしくいようと思えた時間だった。
電車で座席が埋まっている時は、ルーレットである。 いかにも途中で降りそうな人前に立つかを、みな心がけている。 だが、ルーレットの枠は皆目を閉じていて、その様子が分からない。朝からギャンブルをしてる気分。 満員電車程ではないから、まだ楽しめる公営賭博。
大事にしてたものを手放してしまうと、緊張の糸が切れるように力が抜けた。 もうどうにでもよくなることもできないくらい、力が入らない。 人間は何かにすがる。自分でそのすがるものを見つけ、大事にしながら生きている。 それは他人にいともたやすく踏み躙られてしまう。
まだ6時半なのに、道路にボトルカーが停まる。 小雨も降る中、業者は補充する飲料をカゴに入れていた。 涼しいが、飲料の供給は続く。 動作が少し荒々しいのはこの後回ることを考えてるからか。 今思えば、24時間や早朝深夜営業も当たり前だ。感謝を忘れかけてるな。
車から見える建物を見るのが好きだ。 しかし、運転すると、大掴みな風景なのが辛いところ。 今日は他人の車に乗ることができ、首都高をあちこち見渡す。 ふいに新宿区のマンションで、ダブルベッドにしわくちゃなシーツが見えてドキリとする。 他人の生活覗いてみたいのかも。
朝のクリーニング店から出てくると、下着の男が歩いていた。電話をかけている。 神輿がさ… これで変質者ではないと気付いた。見ると、鯉口シャツと股引きで歩いてる。 新参者は地域になかなか溶け込みにくい。 地域と密接につながれるイベントが独特衣装なのもあるかな。
以前同じ職場だった同僚。でも、名前がどうしても思い出せない。 それは相手も同じで、目が合った瞬間に気付くが、すぐに目を逸らす。 微妙な仲に長い時間が重なると、知らない同士になってしまう。 だが、失礼なくらいすぐ駆け寄ってくれた若手もいた。単純に嬉しかった。
キムチチャーハンとチキンラーメンを食べて、気を失うように寝ていた。 炭水化物は眠くなり、やる気を失わせるが、寝ている間は不思議と幸せだ。 血糖値が上がることで、満腹感がそうさせるのだろう。 幸せの感じ方は人それぞれ。毎食現実逃避型の幸せも捨てがたいのだ。
カップのチキンラーメンに湯を注ぐ。ややふやけた麺を啜り込む。 子供の時と同じ味だ。 食べている情景が浮かんでくる。実家の台所での生活にまつわるにおい。 記憶とにおいはどこかでつながっている。 ラーメンは美味しかったけど、こんなに細い麺だったかと思う。
夕焼けから逃げるように、電車は走って行く。 面倒な仕事が次々とくるが、誰から感謝もないと心も少し萎れてしまう。 そんなこと誰もが分かっているのに、社会人の掟とやらでスルーしている。 何かをやっても、有難うではなく当たり前と言われる世界。進化の成れの果て。
バスの降車ドアが開いてから時間が経つと思った。 見ると、手すりに掴まりながら、おじいさんが降りようとしていた。 足はヨタ付き、歩道への一歩が遠い。 それを運転手は見極め、長めの時間を取ってからドアを閉める。 何だか当たり前なのに、その優しさが嬉しかった。
朝いつものルーティンをやっても、時間が余った。出発時間まであと数分。 ぼんやり野球の記録を見て過ごす。 さて、出発というところで、大抵忘れ物に気付く。 バタバタ探して、結局いつもより遅い。 抜けているという言葉が嫌いだ。抜けてないのは張り詰めてて嫌だ。
土曜の朝清掃車が幹線道路を走って行く。 席には三人が並び、エンジンとともにみんな左右に揺れながら左折する。 三人席なのに車幅のせいか、肩を寄せ合っている。 何だか洋画に出てきそうな近さで、これから一悶着ありそうだ。 なんてこと考えながら、車で先を急ぐ。
出勤時間に降り出した雨。駅前は傘で覆い尽くされる。 駅構内に入るところでは、みんな割と乱暴に傘をたたむ。雨の鬱陶しさを改めて感じる。 ところで、傘の上手いたたみ方がいい年して分からない。 時に、新品みたくたたむ人がいるが、陶芸家みたいに思えて尊敬する。
海老名SAは入口手前が渋滞してたが、駐車場は割りかし空いていた。 SAの中はお盆商戦開始で、有名菓子の前には看板とサンプルを持った店員が現れる。 お互いすぐ側で、自社の良いところを訴えている。 サンプルもかなり戦略的に渡されている。日本は今日も平和だ。
最近は博物館が好きだ。宇宙誕生の説明とか珍しい岩石を見てる時が嬉しい。 茨城県自然博物館へ行って来た。ゾーニングが上手にされ、オリエンテーリングみたく歩く。 天井の高い、整然としていない順路、その迷宮感が僕は大好きなのだ。 美術館にはない感覚だな。
土曜の朝はいつものペースを乱すことができる。 朝食に豚骨ラーメンが出てくる非日常が、ささいなことだが嬉しい。 いつもおにぎり一つで仕事だからな。 凝り固まった平日のペースを、ガラリと変えてしまえる休日。 戻せるか心配になるが、乱さない方がどうかしてるな。
咳止めになるかと、生まれて初めて龍角散の飴をなめてみる。割とマイルドな味だった。 年寄り臭いと敬遠してきた。世の中はまだ知らないことばかり。 子供の時、おばあちゃんにもらった包みのまま溶けた黒糖飴を敬遠した。ペタリと付く。 何だかそんなことが心に刺さる。