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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2025年1月の記事一覧

【劇評368】藤井隆、入野自由が人間の愛を問う『消失』。

【劇評368】藤井隆、入野自由が人間の愛を問う『消失』。

 ケラリーノ・サンドロヴィッチの世界に生きる藤井隆を観た。

 今回、KERA CROSSで上演された『消失』(KERA作 河原雅彦演出)は、KERAの主宰するナイロン100℃公演のために、二○○四年に書かれ、一五年に再演されている。劇団員の大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、松永玲子に、八嶋智人が客演している。どちらも同一キャストで上演されている。KERAにとって知り尽くした劇団員の技術、

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【劇評365】新春の歌舞伎座。繭玉と鏡餅に彩られためでたき狂言の数々。六枚。

【劇評365】新春の歌舞伎座。繭玉と鏡餅に彩られためでたき狂言の数々。六枚。

 あけまして、おめでとうございます。新年は、歌舞伎座昼の部から。

「対面」は、曽我物というだけではなく、五郎十郎はじめ多くの役柄を網羅している。それだけに、新しい年の歌舞伎座を背負っていく役者の顔見世の要素を兼ねている。新たな気持ちで見る「対面」は、五郎に巳之助、十郎に米吉とまことに清新な顔ぶれで、祝祭感にあふれていた。

 上演年表を辿ってみると、私の記憶にある「対面」は、現在の松緑が二代目辰

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