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2022年5月の記事一覧
【劇評260】私たちは何を守るべきか。アーサー・ミラー『みんな我が子』が突きつける問い。
緊密な舞台である。
リンゼイ・ボズナー演出、広田敦郎訳の『みんな我が子』は、一九四七年に初演されたアーサー・ミラーの戯曲の可能性を見事なまでに引き出している。
戦争がいかに人間の尊厳を破壊し、家族のなかに深刻な対立をもたらすことか。戦時下では、よき人でありたいと願う宗教的な倫理が反作用のように動き出す。一方、自分の家族だけは豊かで幸福でいたいとする欲望もまた、頭をもたげる。倫理と欲望は、両立