見出し画像

「200字の書評」(336) 2023.2.10



こんにちは。

いくらか春めいてきたような気がします。散歩中の道端やあぜ道には、小さな花が存在を主張し始めました。高麗川河川敷のビオトープ、土日には沢山の人が歩くようになってきました。春を求めてでしょうか。でも、ご油断めさるな。気温乱高下と降雪氷雨は春の得意技。花粉も乱舞しますぞ。

と思いたくなった朝、いつものように朝刊を取りに玄関を出ると鈍色の空、朝の冷気を取り込むために深呼吸をしつつ空を見上げると鈍色が曖昧になっている。小さな白い粒が舞い降りてくる。予報通り雪かと思う。傘をさしてゴミ出し、食事の合間に外を見ると雪景色になっていました。通勤通学の足が乱れなければ、受験生に影響が及ばなければ良いが。受験シーズンです、受験生がんばれ!

さて、今回の書評は経済に目を向けてみました。




加谷珪一「スタグフレーション―生活を直撃する経済危機」祥伝社新書 2022年

スタグフレーションとは不況下で物価が高騰するなどインフレ状態になることを言う。賃金は上がらず、物価の上昇に国民は悩む。本書ではグラフを多用し、平易な言葉で経済の原理を解き明かしていく。凡百な経済学者や御用評論家とは一味違う生活実感に繋がり、経済財政運営への批判も鋭く分かり易い。70年代のオイルショックと現在のインフレとの比較も興味深い。テレビ等では難解さを避け事実に基づく解説が光り、誠実である。




【如月雑感】


▼ 広域強盗事件の主犯と目されフィリピンに逃避していた4人が強制送還された。この報道が過熱し、朝から晩まで喧しい。狂暴な犯罪であり、世間を不安に陥れている集団なので、実態解明が待たれる。果たしてこの連中が首謀者なのだろうか。背後には別な組織があり、首魁がいるのでは?一方で気になるのは、この過熱報道の陰で、報ずるべき大事な何かが見逃されているのではないか。統一教会問題などは後景に退いている。気になる。


▼ LGBTに関する荒井首相秘書官の信じがたい暴言が広く報じられた。許し難い発言で罷免は当然。問題点は識者の語る通りだが、私は2点ほど気になる。①昇りつめたエリート官僚の知性と品性の欠如であり、謙虚さをどこかに置いてきたのではないか。教育はあっても教養はない、と言われるがその通りである。②官邸詰め記者相手のオフレコ発言だとされる。つまるところ身内意識がそこにはある。記者クラブ制度によって、権力に取り込まれがちなメディアの弱点も見え隠れする。アベ亜流のキシダをはじめ、自民党の病根は統一教会ではないのか。


▼ トルコ、シリア国境付近を震源とする大地震発生。死者負傷者を含む被災者は膨大で、すでに死者は2万人を超え実態はまだ確定せず。各国の救援隊が続々と駆け付け、日本からも派遣されている。地震大国の日本は救援復旧の経験豊富で、技術力や機材は充実しているはず。これに特化して国際的な救援に尽力するなら、世界からさすがは日本、と敬意をもって迎えられるのは間違いなし。畏敬の念を持たれる国に侵略しようとはしないと思う。軍事力に巨費を投ずるより、国際救助隊を常設してはどうだろうか。それはさておき、政府が機能しているトルコはともかく、内戦状態のシリアでは救援状況は不鮮明。特に反政府勢力の支配地域への救援隊の入国をシリア政府は拒否しているとのこと。被災者に政府系反政府系の別はないはず。心配になる。


▼ ウクライナ支援が増加する一方で、国際機関によるアジアアフリカなどの発展途上国への支援が減少しているとの報道がある。ユニセフ、世界食糧計画などによるイエメン難民をはじめとする中東、北アフリカへの人道支援金が大幅に減少している。ウクライナ支援には異存はない。しかし、もし欧米の白人優先思想や南北格差があるとしたら悲しいし、正義ではないのだ。シリア、パレスチナ、ミャンマーなど課題は山積み。




<今週の本棚>


山崎広子「声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか」NHK出版新書 2018年

人は言葉で考えるという。外部には言葉によって伝えられるのだが、その声とは一体何だろうか。喉の働きによってのみ発せられるのでは無く、体の各部位の働きにより脳によって言葉として発せられる。その人本来の声と作った声無理している声など、声にはその人の生い立ち、性格、思考が現れるとする。発声は人生の反映なのかもしれない。声を科学すると、人間が見えてくる。


今西乃子「コアラのなみだ―だれもいなくなったユーカリの森のこえ」合同出版 2022年

孫娘に読んでもらうつもりで購入。読んでいて引き込まれた。コアラの好むユーカリの木が語るコアラの生態と、山火事によって失われるコアラの住処。環境破壊へのさりげなき警鐘である。人間の罪深さが逃げ惑うコアラに重なる。


今野敏「欠落」講談社文庫 2015年

著者お得意の警察小説を久しぶりに手に取った。立てこもり事件は不可解な展開を見せる。程よいテンポで、警察内部の刑事部対公安部の例のごとき対立をからませて事態は進展する。人質となった女性刑事と、その同期の刑事たちは事態を解明できるのか。


繁田信一「平安朝の事件簿―王朝びとの殺人・強盗・汚職」文春新書 2020年

優雅な王朝文化は京都の内裏内だけのこと。地方には山賊海賊が跋扈し荘園の権利争いなど、不正と騒乱に満ちていた。都への税は滞り、催促されている。再利用された文書の裏に残された記録から読み取れる歴史は面白い。貴族社会の陰で武士の時代が迫っていたことが感じられた。




★徘徊老人日誌★


1月某日 気持ち良い一日になった。朝日に向かって深呼吸をしていると「お早うございます」と声がする、登校中の女子中学生が挨拶して通り過ぎていくではないか。「おはよう、気をつけてね」と挨拶を返した。何か心地よい。午後、散歩(徘徊)の帰り道、県道を渡ろうと横断歩道に立っていると右から来た車が止まってくれた、左からはかなり良い勢いで軽自動車が来ている、少し待たなくてはと思っていると件の軽も減速し停車。双方に手をあげ、軽く会釈して渡り終えた。何となく笑みの浮かぶ一日になった。


2月某日 1月分の電気料金を見て絶句。先月より1万円も高くなっている。寒さのあまり(年齢のせいもあり)暖房を多用したせいか。拙宅は灯油による床暖房、風呂は都市ガスを利用している、もしオール電化の家ならと思うとゾッとする。


2月某日 所用で川越へ。川越駅から丸広百貨店に続く商店街は買い物客で一杯。ワクワクしながら紀伊国屋書店を覗く、新刊コーナー、文庫新書売り場、2階の堅めの本がある売り場を順次歩き2冊ほど購入する。外の商店街は混雑しているのに店内は静かで客は少なく、寂しくなる。


2月某日 オリパラ疑惑、汚職に続き談合疑惑で逮捕者。ついにスポーツビジネスの元締め電通に手が及ぶ。胡散臭く利権の腐臭漂う。スポーツ界に君臨する森や政治家はどうなる。大物に迫れるのか。トカゲのしっぽ切で終わるのか。オリンピックの理想などは疾うの昔に消え去り、五輪貴族とスポーツ利権に群がる輩の伏魔殿と化してはいないのか。有難がるのはもうやめにしよう。




日替わりの天気、豪雪と乾燥の季節です。ついに関東平野も銀世界になりました。足元注意です。どうぞ自衛してお過ごしください。


いいなと思ったら応援しよう!