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「200字の書評」(300) 2021.8.10



こんにちは。

暦は立秋です。汗にまみれていると秋風を想い、凍える季節には彩の春を思う。エアコンのスイッチを迷いつつ入れながら、人間のご都合主義に呆れる。そんな、熱波に幻惑される今日この頃です。
コロナ蔓延は無能な政治を嘲るかのように、恣に国土を覆っています。人は失敗から学んで成長するものと思っていました。でも、スカもコイケも目先の有利不利にかまけて、昨年来の経験と世界の趨勢から何も学んでいないようです。

子曰く、賢を見ては斉しからんこと思い、不賢を見ては内に自ら省みるなり

「論語」里仁篇4-17

思わしくない人と同じことをするな、人のふり見て我がふり直せということでしょうか。また、

子曰く、政を為すに徳をもってすれば、譬えば北辰のその所に居て、周星のこれに共が如し

「論語」為政篇2-1

とも。
政治の要諦は徳にあると説いているのでしょう。古の知恵からは学ぶべきことは少なくありません。

さて、今回は世俗を離れて涯なき宇宙へ向けて、知性を研ぎ澄ます天文学者の実像についてです。




エミリー・レヴェック「天体観測に魅せられた人たち」原書房 2021年

寒気に凍え眠気に耐え、望遠鏡を一心不乱に覗く。天文学者のイメージである。それは一時代前、現代はリモートで観測機器を操作し届くデータを自宅でも整理できるという。著者は研究対象にとって最適な観測位置と機材を求め、世界各地の天文台と研究者を訪ねる。大口径光学望遠鏡、複数のパラボラによって構成される電波望遠鏡、時には望遠鏡を搭載した専用機での観測も体験する。研究をめぐる学者たちの人間性が垣間見られる。




【葉月雑感】


▼ 8月は平和を祈る月です。6日の広島、9日の長崎、そして15日は敗戦の日。でもこの月だけ特別でよいのでしょうか。忘れてはならないこと、有耶無耶にすべきでないこと、語り継ぐべきことなどは沢山あります。常に思い起こすべきだと思います。それでも大事な時期であるのは事実です。強行されているオリンピックの陰で曖昧にすまされてはなりません。金メダルラッシュが続けば、国民は失政を忘れてくれるだろうと嘯く要路の人がいます。どっこい、そうはならないよ。私の母は東京大空襲の被災者です。生前、「戦争はもう沢山だ、家を失ったのに何の補償もない」「○○ちゃんはどうしたろうか」などとよく語っていました。空襲を生き延びたので私がいるのだと、つくづく思います。いまの政界に戦争体験者はいません。威勢の良いことを言う前に、謙虚に歴史と向き合ってほしいものです。


▼ 朝早く目が覚めるようになりました。齢とはこんな事かと感じています。早起きの良さは、早朝散歩の爽やかさです。身支度をしてゴミ袋を出しがてら、6時前に家を出ます。日差しが強くなる前に40分ほどのみちのりを歩きます。持ち物は万歩計とラジオです。その日の気分により高麗川沿いのカエルの声と水に飛び込む音が聞こえる水田地帯か、国道407号につながる道筋の住宅が立ち並ぶ市街地のいずれかです。前にも書きましたが、田畑だったはずのところには建築中の建売住宅が軒を連ね、一方では空き家が目立っています。これは一体?
帰宅すると、風呂場で水を浴びて、お湯を沸かし薫り高いコーヒーを淹れて新聞を読みます。時には怒りと憤りで開くのが嫌になる日もあります(最近はそれが多いかも)。


▼ 国語力の低下が語られています。政治家、特に政府首脳のそれはそれは目を覆うばかりです。スカ首相は言語能力の不足と語彙の乏しさが顕著で、より悪いことに国民に理解を求める意識が欠如し、言葉の力の意味が分かっていないようです。読書をしてこなかった生い立ちが露呈しています。前任者同様、器でない人間の悲劇、いや笑えない喜劇でしょうか。




<今週の本棚>


前田海音「二平方メートルの世界で」小学館 2021年

病院のベッドはほぼ2m×1m、2㎡です。難病の少女は9歳、そこで思うことは何か。畳1畳と少々が彼女の世界、札幌の大学病院と言うと北大病院か札幌医大病院。地方出身の彼女は自分を入院させるために奮闘する家族のこと、学校のこと、入院中のほかの子どものこと、自分の将来。自分のことだけではなく、周囲への思いやりが暖かい。彼女の書いた文章が本になりました。孫娘に買ってあげました。


吉見俊哉「大学は何処へ―未来への設計」岩波新書 2021年

コロナ禍でリモート授業を強いられる大学の現状を切り口に、明治以降の大学と文教政策を検証していく。特に興味を惹かれたのは、戦後学制改革の旧制高校と大学が新制に切り替わる過程での高等教育の在り方をめぐる論議であった。高等教育の一翼としてリベラルアーツを担っていた旧制高校が、新制大学の教養部に吸収される是非。それに抗する南原繁東大総長らは、東大に教養学部を設置し、独自の教養教育を目指す。最近の即戦力を求める大学とは違う側面が浮き彫りになる。教養とは何かが問われています。




コロナウイルスは次々と新株に置き換わり感染力は段違い、ワクチン接種は遅々として進まず、医療現場は疲弊が極まっています。政府、行政は民に自衛を呼び掛け、居酒屋には営業自粛を強いています。抜本的な対策は打ち出せぬままに、国民・業者の自己責任にするつもりでしょうか。自宅療養ならぬ自宅放置、まるで棄民政策です。

どうぞ警戒心を最高度に上げて、この難局に負けぬようにしましょう。本日の暑さは危険、熊谷では40℃が予想されています。ご用心、ご用心。


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