見出し画像

「200字の書評」(330) 2022.11.10



こんにちは。

7日は立冬でした。暦は冬、薄くなったカレンダーに一層の寒さを感じてしまいます。お変わりありませんか。
4日の朝、テレビが叫び始めます。「北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。日本上空を通過する」と。Jアラートだそうです。その後の顛末はご承知の通り、哀れと言うか、お粗末と言うか⁉諸国に醜態をさらしました。オオカミ少年の故事を思い浮かべます。防衛力強化を狙う勢力には北朝鮮と中国は、格好の存在です。敵基地攻撃可能なミサイルの導入などは、まさに愚策の極みです。政治の力、外交努力によって攻撃されない関係を築き、地域安全保障体制を提言すべきではないでしょうか。

一昨夜は皆既月食でした。天王星もその影に入る珍しい天体ショーでした。皆さんご覧になりましたか。天王星は肉眼では見えませんでしたが、徐々に地球の影が月を覆い隠していく、不思議な光景です。寒さにめげず、暫し眺めていました。天体の動きに比べて、地上の人間の何と小さなことか。おおらかに、平和に生きていきたいものです。

さて、今回の書評は冷静に歴史を学ぶにはふさわしい一書です。




加藤陽子「歴史の本棚」毎日新聞出版 2022年

優れた歴史家の読書とは、疑問点を徹底的に追及し、博捜し読み込むところにある。専門の日本近代史だけではなく、選書の幅の広さと視点は透徹している。本書で取り上げたのは歴史を学んだ者の、推しの本であると著者は言う。国家の役割、天皇と言う「孤独」など5章57編が紹介され、文学にも及ぶ。私が読んでいるのは僅か1編、己の浅学さに呆れている。流れの心地よい破綻の無い文章に、書評とは斯くあるべきかと教えられる。




【霜月雑感】


▼ 松居直さんの訃報が飛び込んできました。言うまでもなく、児童書界の巨人です。彼の手になった本を、我が子や孫に読んで聞かせたことがあるはずです。ご冥福をお祈りします。


▼ テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」から玉川徹氏が消えてから随分になります。彼のいないこの番組の、何と間延びしていることか。上から目線の上級国民と学歴エリートの当たり障りのない緩いコメントの曜日と、ジャーナリズム出身者と生活感のある発言者の曜日とで落差があります。的確な発言をするコメンテーター出演の日は、場が締まります。萎縮の一層の進行を憂えます。


▼ 望郷の旅をしてきました。年に一度の墓参りの急ぎ旅です。両親親族の墓前に手を合わせ、親友とも言うべき友の命日の祭礼(彼の家は神道です)に参列しました。また、先に逝った友人宅を訪れました。悲しき思いの故郷の栄華は何処かへ消え、寂しき街になっています。それでも3日間車とともに付き合ってくれ、心のこもった歓待をしてくれた友人夫妻の存在は救いになりました。
帰宅の前日、市内が一望できる高台の公園に乗せて行ってもらいました。私の好みの場所で、亡き母もお気に入りで良く連れて行ったものでした。折から沈む夕日に照らされた釧路港は、イワシ漁の巻き網船団が一斉に出港し以前の風景を思い起こさせました。漁船の後から、海上保安部の大型巡視船がパトロールに出ていきます、悠然と進む白い船体は夕日に染まっていました。眼を上げると湿原の向こうに、遥かに紫色に霞む雌雄の阿寒岳が望めます。横浜には及びもつきませんが港の見える丘公園です。絵になる風景でした。
なお、地元では幣舞橋からの夕日は「世界三大夕日」と称しています。機会があったら釧路湿原を観光がてら、三大夕日を鑑賞してください。


▼ 米国の中間選挙は共和党勝利の様相です。下品極まりない、あのトランプが復権するかと思うと厭な感覚です。強権国家が増加の傾向もあり、民主主義という仕組みの脆弱性が気になります。ウクライナ戦争の長期化も予想され、人命の喪失と国土の荒廃が進みます。どこかで折り合いをつける落としどころは無いのでしょうか。冷戦期とはまた違う、コールド・ホット・ウォーではないのかと囁かれています。宇宙に比べれば、ちっぽけな地球での人間の争いの惨めさを見つめてほしいものです。「蝸牛角上の争い」の警句を思い浮かべます。




<今週の本棚>


布施祐仁「自衛隊海外派遣 隠された『戦地』の現実」集英社新書 2022年

イラク、ソマリアなどに自衛隊の海外派遣は数度に及んでいる。いずれも戦闘の収まった地域での復興作業が中心とされていた。副題にある通り、実は砲声が響き銃弾が頭上を飛び交う戦地だった。政府はそれをひた隠しにしてきた。情報公開によって得た資料から読み解く時、衝撃の実体が明らかになる。軍事力では世界第5位にランクされる日本の自衛隊。米軍の下請けになるのでしょうか。


有田芳生「統一教会とは何か」大月書店 2022年

自民党に浸透して政治を壟断しようとした統一教会の罪過はご承知の通りです。大学時代に原理研究会と称して、学生運動に対抗しようとしていました。それほどの勢力ではなったはずですが、巧みに政界に取り入って政策を左右していたとは。著者はその当時から取材を重ね、本質に迫っていました。


島田裕已「新宗教と政治と金」宝島社新書 2022年

戦前戦後勃興して旧宗教に飽き足らぬ人々を取り込んだ新宗教。戦後は財政力と動員力を背景に、政治に隠然たる影響を及ぼしていました。新宗教入門書としては手軽でわかりやすい。ただし、どこか第三者的で、突っ込みが浅い感じはぬぐえない。




先日インフルエンザのワクチン接種を済ませました。近日中にコロナワクチンの5度目の接種をする予定です。人類とウイルスとの付き合いは、宇宙と同様果てないようです。どうぞ健康第一でお過ごしください。 


いいなと思ったら応援しよう!