- 運営しているクリエイター
2020年5月の記事一覧
『三都メリー物語』⑱
白い雪が、レイが着ている黒いダッフルコートに当たっては、溶けている。暗い夜の道は、足の裏の感覚さえ冷たさで奪う。レイのアルバイト先のイタリア料理店から緩い坂を下って歩いて15分のところに、3階建ての小さなカラオケショップがあった。イタリア料理店のメインデッシュシェフの30歳半ばで神経質そうで眼鏡をかけている青木とパスタ担当の27歳くらいだろうか、茶髪で顎にわずかに髭をはやしている細身の白井、ホール
もっとみる『三都メリー物語』⑳
外は、大粒の雪が降っていてイタリア料理店の前を通る道はうっすらと雪で白く道路と歩道の境目が日が沈むと分かりずらかった。
レイは、クリスマス・イブの夜にイタリア料理店で、皿洗いの仕事をしていた。予約がたくさん入っており、眼鏡をかけた神経質そうなシェフの青木は、メインディッシュのフィレ肉を焼いてはフライパンを洗い、またフィレ肉を焼いている。そしてその都度炎が上がる。
パスタの茹で汁を捨てる時