私は今、猛烈に迷っている。
長年吸い続けた煙草を
喫い続けるか
否か
喫煙という行為がどこまででも追いやられている世の中で
禁煙する理由を見つけることは容易だ。
引き上げられた税金による金銭的な問題
他者にまで及ぶ健康被害
黒い肺、落ちる灰、漂う匂いによる清潔感の欠如
それを理解した上で、喫い続ける意味を見出すことは、甚だ難しい。
そんなとき、この本をふと手に取ってしまった。
それでも煙草を喫い続ける。
そこには無理な言い訳なんかじゃなくて、れっきとした文化として
煙草への愛が、意義が、綴られていた。
経済活動を営むことを強制させられる資本主義社会において、自分自身の日常の中に「空白」、「閑散の時」といったものを、定期的に見つけて作り出すということは難しい。
少し極端な主張ととらえる人もいるのかもしれないけれど、こうやって、私たちが、今日において親しんでいる本を書いた人たちと煙草に密接な関わりがあったことは、素敵な一種の文化なのではないかと思う。
これからいつまで、煙草という文化が続くのかはわからない。
今にも消え入りそうな予感しかないけれど
けれどというよりだからこそ
喫うことがままらない世の中の片隅で
もう少しだけ、けむりにまみれて生活をしていたい。
そう思える一冊だった。