それさえ叶えてくれたら、もう他には、何も要らないから。
「お母さん、覚えてないの?」
「おかあさん、わすれんぼうだなぁ」
長男の声は、不安そうだった。ちびの声は、面白がっているようだった。違和感を感じとる力は、年齢のこともあってか長男のほうがはるかに鋭い。
記憶の蓋が開く。脳内に流れ込んでくるビジョンが、全て私の作り上げた妄想ならいい。あれが現実だと証明されてしまっても、私は正気を保てるだろうか。振り子のように心が揺れる。数日後に控えている精神科の診療日が、どうにも恐ろしい。
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今日はプライベートでとても嬉しいことがあっ