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苦しいものを背負わせるために産んだんじゃない。
「その薬は、お母さんを元気にしてくれる薬なの?」
純粋な疑問をまっすぐにぶつけられたとき、私はいつも言葉に詰まる。長男は私を心配して言ってくれているだけで、困らせようとしたわけではない。しかしその質問に笑顔で即答できなかった私の顔を見て、彼は慌てて自身の発言を打ち消した。
「あ、やっぱりいいや。わかった」
本当は納得も理解もできていないことを、「わかった」ということで”この話はおしまい”と打ち消そうとする。長男のこの癖は、私の幼い頃とよく似ている。
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誰しもが、本音をどこにでも吐き出せるわけではない。むしろ吐き出せずに溜め込む人たちのほうがはるかに多いと感じている。
忍耐力があり、自制心が強い。そして何より、争いを好まない。
そういう人は「やさしい」と称されることが多いが、「自分にやさしくする」ことはあまり得意ではない。本来であれば何よりも優先すべき自分自身を、いつだって後回しにしてしまう。
「言いたいことがあるなら、言えばいいじゃん」
そう思う人が大半だろう。しかし本音を言わせてもらえば、「言えるものなら言っている」
言えないから苦しいし、言えないから悩むのだ。言えるようになるには、本人の努力だけでなく適切な治療や訓練が必要な場合もある。心の持ちようだけでどうにかなるのならいい。しかし、本音を言うことによって何かが大きく壊れる経験をしてきた人が自力でそこに辿り着くのは、決して簡単なことではない。
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先日、精神科の初診を終えた私は、2種類の薬を処方された。一つは就寝前に飲む眠剤、ベルソムラ錠20mg。もう一つは不安時、フラッシュバック時に飲む頓服薬、クエチアピン錠。
先生の判断で、薬は睡眠のリズムをつくるために最低限用いる程度にしましょう、とのことだった。
私に必要なのは、服薬よりもカウンセリングによるトラウマ治療であるらしい。私自身もそう感じていたので、不必要に多めの安定剤で終日意識を薄める生活をせずに済んだことに、少なからずホッとしていた。
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