第10話 くすぐったくて、あったかくって。
〜前回までのあらすじ〜
高校二年生のさと子さんはパンが大好き。パン作りが趣味なおばあちゃんと二人暮らしをしています。おばあちゃんの友達のおっちゃんのパン屋さんで、さと子さんはバイトを始めることになりました。その帰りに、家に着くとでっちゃんがいたけど、沈黙が続いてて…
雨音に包まれた部屋の中で、黙々とピザを食べ続けるでっちゃんに、いつも通りのおばあちゃん、、、誰1人口を開かない中、さと子は沈黙に耐えられなくなってきていた。
ここで、ふと、さと子は思いついた。
黙っているでっちゃんの話を引き出そうとするのではなく、まずは自分の話をしてみればいいのでは…?
ちょうど今日、パン屋でバイトを始めることにしたところだ。話したいことはたくさんある。
それに、でっちゃんの話は、でっちゃんが話したくなったときに聞くのが一番いいだろう。
そうと決まれば…。
「あのね、でっちゃん。私、パン屋でバイトを始めることにしたんだ。」
…ずっと俯きがちだったでっちゃんが顔をあげた。
「あ、そうなんや…」
返事をしてくれてちょっと安心。よし。このまま…
「うん。おばあちゃんのお友達のお店で、oliveって名前のとこだよ。もしかして知ってる…?」
「うん。」
「え、まじで?! 」
「うん。ちょっと変わったパン屋さんで有名で、人の紹介で会いに行った。あの人すげぇよ。あと、パン、マジうめぇよ。」
「そ、そうなんだ…。知らなかった。あのカエルみたいなおっちゃん、すごい人だったのか…。」
「(ブフッ)…カエルって…。たしかに!笑」
あ、、今日、はじめてのでっちゃんの笑顔だ。
よかった。
「おばあちゃん。oliveのおっちゃんって有名だったの?」
「そうよ〜。期間限定でいろんなイベントやってるから、ここらへんでは有名ね。」
「そ、そうだったのか…。」
このやり取りを聞いてびっくりしたのか、でっちゃんはこう聞いてきた。
「え、逆に、こんなに家近いのにさと子はoliveのこと知らなかったの?」
「う…うん。今までおばあちゃんの作るパンにしか興味がなかったから…。(苦笑)」
それを聞いたおばあちゃんは、目尻を下げて首を少し傾けた。かわいい。
「私が作るパンが大好きなのは嬉しいけど、他のパンもぜひ食べてみて?(笑)」
「うん…。(笑)」
気づけば、テーブルの上のピザは、残り一枚になっていた。
その一枚を丁寧に三等分に切り分けて、三人でせーので口に運び、もきゅもきゅもきゅ とみんなで食べた。
このときの、目を合わせてると、なんだか心がくすぐったい感じが好きだ。
あぁなんか、今日で一番、ピザを味わいながら食べているかもしれない。
味噌味の、もちもち生地のピザさんは、上に乗っかってるピーマンが、私の口の中で『オレの苦味って…お洒落だろ?✨』って言ってる気がして、なんだか笑えた。
そして、最後にまた、三人で手を合わせて、、
「「「ご馳走様でしたー!!」」」
ご馳走様でした。もう一度、心の中で呟く。
ありがとうの気持ちでいっぱいになる、この瞬間も、好きだ。
外はもう雨がやんでいて、窓から外を見ると、星がチラチラと光っていた。
モワ〜っと空を覆っていた雲も、もうどこかへ行ったらしい。
ちょっと爽やかであったかい気持ちでお皿を片付けていたら、ふと気付いてしまった。
「え、てか、oliveのこと全然知らないままバイト始めちゃって大丈夫かな…。」
私は少し不安になったのだけど、おばちゃんはニヤニヤしながらこっちを見ている。
「大丈夫じゃない?(笑)行って驚いてきなさいな。」
なんだろう、この意味ありげな表情は。
「わ、わかった…。」
やっぱり少し不安は残るけど、それよりも、下の方から込み上げてくるワクワクの方が大きかった。これから、楽しいことが起きる気しかしないぞ…!
でっちゃんの方を見ると、でっちゃんは、窓から外を見つめていた。 窓に添えている右手に、ほんの少し、力が入ってるのが分かる。
今なら、なぜ家の前にいたのか、聞けるかもしれない。
もう一度、聞いてみようかな…
つづく
ーーーーーーーーーーー
パンをこよなく愛する高校2年生のさと子さん。パンを作るのが趣味なおばあちゃんと二人暮らし。それが、ある日、パン屋さんをやることに…?!気まぐれ更新中🍞
望月遥菜が書く初の小説です。
ーーーーーーーーーーー
#小説 #連載 #連載小説 #パン屋 #パン屋さん #パン #土曜日 #土曜 #雨 #家 #ピザ #モチモチ #生地 #味噌 #ピーマン #苦味 #お洒落 #ご馳走様 #晩御飯 #好き #美味しい #ごちそうさまでした #ご馳走様でした #キラキラ #目 #おばあちゃん #高校生 #女子高生 #星 #外 #雨音 #沈黙 #会話 #有名 #カエル #おっちゃん #くすぐったい #心 #丁寧 #三等分 #せーの #みんな #お皿 #片付け #夜 #星空 #夜空 #窓 #右手 #手 #不安 #雲 #期間限定 #イベント #今日 #笑顔 #名前 #返事 #安心