「好き」の向こう側にある、食と人への想い フードライター みつはし さなこさん【インタビューvol,1】
みつはし さなこさんは「野菜ソムリエプロ」や「冷凍生活アドバイザー」など、食に関係する資格を持つ、フードライターです。
ただ目の前の仕事をするのではなく、食と人をつなぎたい―。インタビューを通じて「好き」の向こう側にある、さなこさんの強い想いに触れることができました。
自分が苦手だったからこそ、分かる部分もある
記事の執筆だけでなく、レシピ考案も担当するさなこさんですが、もともとは料理が苦手だったのだとか。
「食べること自体は好きだったんですが、結婚を機に初めて実家を出たので、当時は料理が全然できなかったんです。仕事で疲れていると面倒に感じてしまい、なかなか上達しなくて……。でも、子どもが生まれたら、夫婦だけのときよりも自炊の機会が増えるじゃないですか。あと、息子の持病も食べ物に興味をもったきっかけですね。栄養学をちゃんと勉強したいなって思うようになりました」
さなこさんは最初から食に関係する仕事をしていたわけではなく、もともとは会社員。栄養学の勉強をしているうち、野菜について知りたくなり、八百屋で働き始めるなど、少しずつ「食」の道にシフトしていきました。それでもすぐに、料理に対する苦手意識がなくなるわけではありません。
「資格を取ったからといって、料理が上手くなったわけじゃないんですよね。苦手を克服したのは、知り合いの料理教室に通い始めてからです」
それまでは、野菜の保存方法や特徴を知識としては知っていても、実際どう料理に活かすかが結びついていなかったとのこと。
「料理教室で、塩・火加減などの簡単な話を聞き『料理ってこんな感じでいいんだ』と思ってから、苦手意識がなくなりました」
さなこさんの目指す料理は「手を抜きつつも、食卓の時間にホッとひと息つける一品」です。冷蔵庫にあるもので簡単に作れるのに、ちゃんと美味しい。料理が苦手な人の気持ちが分かる、さなこさんならではの悩みに寄り添うレシピがたくさん誕生しました。
料理を仕事にしたい
八百屋のあとは家事代行会社で家政婦として勤務。共働きファミリーを中心に、作り置き料理を作っていました。そんな、さなこさんがライターを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
「料理を仕事にしようと考えたとき、料理教室をやろうと思ったんです。ホームページを立ち上げて、集客用にブログをしていたんですけど、全然上手くいきませんでした。そんなときYouTubeで、『ブログ経験があるならライターになれる』というのを見て、ライターに挑戦しようと思いました」
Webライターとしての初めての仕事は、クラウドソーシングへの応募と知り合いのつながりで獲得しました。
「知り合いっていうのは資格仲間です。Facebookで『メディアを立ち上げようとしている人がいるんだけど、誰かやりませんか?』と声が挙がりました。ちょうどライターを始めたタイミングと同じくらいだったので、応募しました」
ライターに挑戦し始めた頃から積極的に行動しているさなこさんですが、クラウドソーシングを経由せず、メディアに直接営業をするまでには時間が掛かったのだとか。
「クラウドソーシングの案件に慣れるまでが、結構大変だったんです。初めてだったこともあり修正も多くて、営業する余裕がありませんでした。それが少し落ち着いてからindeed(インディード)などで、他の仕事も探すようになりましたね。といっても、積極的に営業して仕事を一気に増やしたわけではなく、少しずつ広げていきました」
新しい案件でも、食べ物っぽい匂いがしたらやってみる
さなこさんは現在レシピ考案やインタビュー、写真撮影など、さまざまな案件を担当しています。初めての仕事に挑戦するとき、不安は感じないのか聞いてみました。
「やったことがなくても、食に関係しているなら、私が引き受ける意味はあるのかなあって感じます。資格で学んだ知識もあるし、八百屋さんや家事代行の仕事で、消費者や読者に近い人たちと関わってきた経験も自信につながっています。私自身、料理が苦手だったこともあり、いろいろな視点で見られるのが『強み』なので」
さなこさんが新しいタイプの仕事でも、「私は大丈夫」と思えるようになったのは、先ほどのクラウドソーシングの案件がきっかけでした。
「指定されたキーワードについてリサーチしながら執筆する、SEO記事の仕事だったんです。食材を解説するテーマの仕事ですが、実際にはあまり詳しくない食材もありました。でもやってみたら『調べたら何とかできそう』と思えて、新しいことに挑戦するハードルが下がりました」
その後さなこさんはインタビュー案件を獲得するため、資格仲間のコミュニティで企画として呼びかけ、自ら実績を作りました。取材案件の獲得はもちろん、仲間同士の理解やコミュニティに入っていない人への認知につながりそうなところも、挑戦するきっかけになったようです。
自分だけでなく、周りの人たちにも目を向けているところに、さなこさんの人柄を感じます。
「これが正しいのかな」って分からなくなることもある
「食や料理」に関わるジャンルに絞り、順調にライター活動をしているように見えますが、ここにきて気持ちが揺れることも多いといいます。
「資格を持っているので『活かさなきゃ』という気持ちがあり、食に関係する仕事をしてきました。自分としては楽しく活動していても、『ひとつのジャンルにこだわらなくても良かったのかな』と思うこともあります」
いろいろな分野で活躍するライター仲間を見て、自分のスタイルに迷うこともあるそうです。
「葛藤も多いですが、いまは『食』に軸を置きながらできる仕事の幅を広げて、『理想の働き方』にもっていくのを目指しています」
自分が好きなことは、やっぱり楽しい!
どんな働き方にも、メリットとデメリットがあります。とはいえ、「自分の好きなことを仕事にできたら......」と、憧れをもつ人は多いはず。「食」ジャンルに絞って活動を続けるさなこさんに、特化ライターの魅力を聞いてみました。
「シンプルに楽しいです!『食』に軸足をおくことで、自然に情報が集まってくるのも魅力ですね。それによって食材の知識にも深みが出てきて、説得力が増しました」
あまり興味のないジャンルの特化ライターになることについても聞いてみると……。
「興味がなくても、文章をかみ砕くことに楽しさを感じるなら問題ありませんが、私はその前の段階でアウト。単価が良かったとしても、単純につらいです(笑)」
たしかに、人によって働き方の優先順位はいろいろなので、向き不向きがありそうです。
「書きたいジャンルが決まっていないなら、いろいろやってみて、自分に合いそうなものを深堀していけばいいと思います。特にライターを始めたての頃は挑戦しやすいですし。『何か違うかも』と途中でシフトチェンジしても、やったことは実績にもなります。それこそ『経験あります!』ってSNSで発信したりポートフォリオに書いたりすれば、仕事につながるかもしれません」
経験がなくても、とりあえずやってみる。どうしても上手くいかなければ、他の方法を試してみる。
ちなみに、現在は仕事の営業ツールとしても役立っているInstagramですが、実は何度も挫折したそうで……。
「頑張ったけれど自分では絶対できないと思ったので、専門の人のコンサルを受けました」
明るく話すさなこさんは、何だか試行錯誤の過程も楽しんでいるように見えます。
30%は伸びしろ
インタビューの最後に、今の働き方の満足度について聞いてみました。
「100%中70%くらいですね。働くペースを意識して守っているから、80%ではないです。あと30%は伸びしろ!反省だらけですけどね」
笑顔で語るさなこさん。今後は取材の仕事も増やしていきたいのだとか。
「今度から、築地でお買い物代行をしている会社のカスタマーサポートもするんです。現場を見たり、SNS運用もしたりできるかもしれなくて。そこの人たちと仲良くなって取材につながったら嬉しいですね」
自身の「これから」について語るさなこさんは、希望に満ちています。これまで感じていた料理に対する苦手意識も、好きなジャンルに絞ってライターを続ける葛藤も……。確かな「足跡」として、さなこさんの強みや自信につながっていました。
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