マガジンのカバー画像

推し芸術家シリーズ

23
運営しているクリエイター

記事一覧

大佛次郎とポール・ルヌアール

私の記事の中では抜群に多いビュー数(スキ数ではなく)を誇るポール・ルヌアール関連記事3点と言っても初回のみ1000を超えただけですが(笑) その第四弾を書く機会がやっと訪れました。東博以外のもう一つの所蔵先である大佛次郎記念館での展覧会がやっと実現したのです。 横浜在住の友人に教えてもらうまでは、全然気が付かず会期も残り少なくなってからやっと行ってきました。 大佛次郎記念館、もっと宣伝しろよ!です。すいてて良かったけど・・・ 先ずは行く前に腹ごしらえから。みなとみらい線馬

私の推し画家 vol.1(ジェームス・アンソール)

今回から、映画遍歴を絵画遍歴に変更して又語りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。 ところで表現主義の画家ジェームス・アンソールをご存知ですか?1860年、ベルギーのオステンドに生まれて、ムンクやクリムトと同時代に生きた画家です。実家が土産物店を営んでいた関係で、店で売られていた仮面をモチーフにした絵画を描いたことで知られています。私が好きな絵はこちら↓ 何と日本にあります。愛知県小牧市のメナード美術館が所蔵しているのです。「仮面たちに囲まれた自画像」1899年作

私の推し画家 Vol.2(葛 蛇玉)

美術展覧会が好きでよく観に出かけます。その中でも2006年の夏に東博で開かれた「プライスコレクション、若冲と江戸絵画」展は素晴らしかったです。2008年の同時期に開かれた「対決・巨匠たちの日本美術」展と共に心に残る展覧会でした。 そして、その中でもこの一点に釘付けになりました。屛風絵なのでタイトル画が左隻で右隻はこちら↓ 葛 蛇玉の 「雪中松に兎・梅に鴉図屛風」1774年です。展示は右隻と左隻が逆だったけど、今橋 理子先生によるとこちらが正解らしい。 どちらも、舞い散る

葛 蛇玉 その後

以前、押し画家シリーズVol.2で取り上げた葛蛇玉ですが、その後の研究成果を見つけました。日本美術史の碩学、佐藤康宏先生の新刊本の第16章「蛇玉山人のこと」に載っていました。図書館から重い本を借りてきた甲斐があったというものです。前回参照した2004年版の今橋理子先生の本では4点しか作品がないということでしたが、それから18年経って12点となり8点増えました。 掲載されているのは以下の通りです。 手前の後ろ向きで椅子に座っているのが蛇玉本人らしい。顔は分かりません。 図版

私の推し画家Vol.3(エミール・ノルデ)

最近、読んで面白かった本に作家の村田 喜代子(以下敬称略)の押し画家本 「偏愛ムラタ美術館」三部作があります。その二作目(発掘篇)にノルデが取り上げられています。以下引用、タイトル画↑「北フリースラントの夕暮」を彷彿とさせる文章です。北フリースラントは故郷のノルデ村に近くノルデが晩年に暮らした地です。 ノルデは福永 武彦の押し画家本「芸術の慰め」にも出てきます。 この本は私の愛読書ですが1970年刊行と古いので、もう古本屋か図書館でしか読むことができません。その中にこの投稿

私の推し画家 vol.4(岩佐 又兵衛)

辻 惟雄(つじ のぶお)の「奇想の系譜」を読むまでは、日本美術には疎かったです。若冲(じゃくちゅう)と聞いてもピンときませんでした。 2007年頃の事です。プライスコレクション展が2006年だから、その頃やっと関心を持ち始めました。 ちょうどその頃ネットサーフィンでtakさんのブログ「青い日記帳」に出会い(こちらは、今も現在進行形)そのご指南で京都に⁇年ぶりに行く羽目に。 若冲が晩年を過ごした石峯寺を見てから、相国寺承天閣美術館の若冲展で「動植綵絵30幅」を見てぶったまげ、

私の推し画家Vol.5(エドアール・マネ)

何を今さらマネと思われるかもしれませんが、何を隠そう大学では西洋美術史を専攻して卒業論文が「マネとモネにおけるリアリズム」だったので外すわけにはまいりません。ここで一言「マネとモネの区別が付かない方」はこれから先はハードルが高いと思われますので読まないでください。 言っておきますがモネは印象派の創始者ですが、マネは印象派ではありませんよ!印象派の敵対勢力であったサロンにこだわって出品し続けた人です。 印象派の理解者であり、影響を与えた人ではありますが・・・ 私が卒論でマネを

私の推し画家Vol.6(鈴木其一)

前々回No.4(岩佐又兵衛)での「洛中洛外図屛風」舟木本が岩佐又兵衛作と決定されるまでの経緯は↑この本に詳しく書かれています。2008年に辻先生が「舟木屛風は又兵衛だ!」と認めてから8年で国宝になったわけです。 そう言えば「豊国祭礼図屛風」も又兵衛工房作で又兵衛が全て描いたのではないらしい。これからの研究が待たれます。 さて今回の押し画家、鈴木其一も2006年のプライスコレクション展で初めて知りました。「何と鮮やかな色!」が第一印象です。タイトル画↑「朝顔図屛風(左隻)」は

私の推し画家Vol.7(アルベルト・ジャコメッティ)

タイトル画像「ヴェネツィアの女 I- IX」1956年 「ジャコメッティ展」国立新美術館 2017年出品作 だいぶ以前の事になりますが、某週刊誌の「お尋ねコーナー」に という記事を見つけました。石井好子さんの事がこの本の中に書かれているのは知っていましたので、まだお読みになっていないのなら、お譲りしてもいいけど…大切にしている本なのでどうしようかな?と思っているうちに、次々号だったかに というような記事が載り、ああ良かった!と安心しているうちに石井さんは程なくして亡くな

私の推し画家Vol.8(藤田 嗣治)

オリパラも終わって一段落ということで、シリーズを再開したいと思います。ビッグネーム登場ですが、この方を日本人にするか、フランス人にするかどうか迷うところです。晩年にフランスにレオナール・フジタとして帰化なさっているので…でも単にこちらの都合なので、こだわりません。私の好きなフジタは下記の作品。 「私の部屋、アコーディオンのある静物」1922 油彩、キャンヴァㇲ       130x97 パリ、ポンピドゥ・センター所蔵 この一年前にも似たような作品を描いてサロンに出しています

私の推し画家Vol.9(クロード・モネ)

何を今さらモネと思われるかもしれませんが、しつこいようですが卒論でマネとモネを取り上げた身として外すわけにはまいりません。 でも今回は視点を替えてまいりたいと思います。 マネがサロンに落選した時に、それではどんな絵が入選していたかというと たとえばアレクサンドル・カバネルとかジャン=レオン・ジェロームのこんな絵↓ でも、これらもそれなりにいいんですよね!特にジャン=レオン・ジェロームには、オリエンタリスムが入っていてそれまでの歴史画とは違うし、動物画はライオンキングみたい

私の推し画家Vol.10(狩野 永徳)

締めは永徳で2007年に相国寺承天閣美術館の若冲展に行ってから日本美術に興味を抱いて同じ年の秋に京都国立博物館の狩野永徳展に行きました。狩野派の何たるかもまるで分からないまっさら状態でしたが、あれから15年、今ではまだまだ未熟ではありますが、いっぱしの歴女を自負しています。 きっかけとなったのは↓黒田日出男先生のこの本 現在、上杉本洛中洛外図として米沢市上杉博物館にあるこの作品の制作年と制作者について解き明かしていて、それが今では定説になっています。 それによると、永徳23

ポール・ルヌアールを知ってますか?

Auguste Renoirではありません。 19世紀フランスで活躍した素描画家Paul Renouardです。美術史家Linda Nochrinが1989年に出版した「絵画の政治学」の第6章「ファン・ゴッホ、ルヌアールとリヨンにおける職工の危機」にこの名を見つけて感慨に浸った次第です。最近文庫がでました。 ↑タイトル画「酒場」素描39.3x54.6 東京国立博物館蔵 何故、東博に作品があるのか? 東博で2006年にこんな展覧会をやっていたんですね!残念ながら見逃しました

ポール・ルヌアール その後

以前、こちらに書かせていただきましたポール・ルヌアールの作品を再び観る機会がやっと訪れました。実に41年ぶりのご対面でした! 場所は東京国立博物館平成館1階の企画展示室「ー創立150周年記念ー時代を語る洋画たち」展会場です。残念ながら7月18日までしかやっていないので観に行かれない方の為に画像を貼付けますので、どうぞご覧ください。 実は私もつい最近Twitter経由で知った次第です。 以上6点、初めて観る作品ばかりでした。東博さんありがとう! たとえ199分の6点(199