見出し画像

私の推し画家Vol.7(アルベルト・ジャコメッティ)

タイトル画像「ヴェネツィアの女 I- IX」1956年
「ジャコメッティ展」国立新美術館 2017年出品作

だいぶ以前の事になりますが、某週刊誌の「お尋ねコーナー」に


矢内原 伊作著「ジャコメッティとともに」(筑摩書房)という本を探しています。お持ちの方があればお譲りください。 石井 好子(シャンソン歌手)

という記事を見つけました。石井好子さんの事がこの本の中に書かれているのは知っていましたので、まだお読みになっていないのなら、お譲りしてもいいけど…大切にしている本なのでどうしようかな?と思っているうちに、次々号だったかに

「ジャコメッティとともに」はお陰様で手に入れることができました。
お手数をおかけしました。

というような記事が載り、ああ良かった!と安心しているうちに石井さんは程なくして亡くなられてしまいました。何が言いたいかというと、石井好子さんが探しても手に入りにくかった貴重本をこの私が所蔵しているということです。

画像1

1969年初版

で、この本に何が書かれているかというと、矢内原さんという哲学者がパリ滞在中に彫刻家として著名なジャコメッティと知り合い、彼のモデルを務めた時の交友録です。この中で石井好子さんは、矢内原さんのお友達としてジャコメッティに紹介されてジャコメッティ夫妻と一緒に食事したり、彼女が出演する劇場に招待したりして草の根外交に努めておられます。
勿論、ジャコメッティの制作の様子も克明に書かれています。彼のおしゃべりから伺える深い教養と芸術に対する考え方は示唆に富んでいて、夢中で読んでしまい、そうして出来上がった作品がこちら↓


ジャコメッティ「矢内原」

矢内原 1959年
24.3x19.2cm 油彩・キャンバス
ジャコメッティ財団所蔵

矢内原 伊作

矢内原 伊作 1956-57年
81.4x65.2cm 油彩・キャンバス
ジャコメッティ財団所蔵

どちらも油彩画で彫刻と同じように、突き詰めて描いていくとこうなるようです。他にもデッサンや油絵が数点あるようです。
旧ブリジストン美術館改め2020年に開館したアーティゾン美術館の所蔵品にも「矢内原」1957年 油彩 キャンバス 92.0x73.0(作品No.150)ありました。「ディエゴの胸像」(作品No.151)という彫刻作品もありますね。ディエゴはジャコメッティの弟でこの本の中に度々登場します。他に登場する人達もピカソ、マチス、サルトルに始まりトリスタン・ツァラやジャン・ジュネ、日本人の朝吹 登水子まで綺羅星のごとくです。

あれは、1980年頃鎌倉の小町通りを歩いていると、着流しの矢内原氏をお見かけしました。すぐにわかりました。向こうは勿論気付いてなかったけど…
著名人というと、1970年にこれも鎌倉の近代美術館で開かれた「ムンク」展の会場で川端 康成氏に偶然お目にかかった事があります。これも、すぐにわかりました。「星月夜」という作品の前でじっと動かずに見入っておられました。私は性格上長く絵の前に留まる事ができないたちなので、それこそ一瞬の絵との出会いを大切にしていますが、何時間でも留まっていられる方は凄いと思います。お二人とも、既に鬼籍に入られてしまいましたが。
辻 惟雄先生をお見かけしたこともあります。滋賀県のJR石山駅からMIHOMUSEUMに行くバスに当時館長だった辻先生が乗ってこられて約1時間ご一緒しましたが、お声がけできずに終わりました。
懐かしい思い出です。