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聖夜に思い出す人のこと
聖夜。
12月25日は、初恋の男の子の誕生日だ。
「誕生日おめでとう、そしてメリークリスマス」
とだけLINEを送った。すぐに短い返信が来る。彼らしいな、と思いながらスタンプを送って画面を消した。
小学生の頃から、お互いの誕生日にお祝いのメッセージを送り合っている。手紙、メール、LINEと形を変えながらも15年くらいそれは途絶えることなく続いていた。
元彼の誕生日はろくに思い出せない
土曜の夜、地下鉄のホームにて
「ふたつにひとつだよ」
その言葉を聞いたのは駅の改札を入ったところだった。見知らぬ駅で、帰るために電車の検索をしようとするわたしの横で彼は軽やかにホームに降りていく。そっちで合ってるの?と慌ててついていくと、真面目な顔で言い放った。たしかにホームはふたつしかないけれど。でも。戸惑いながら着いたホームで調べてみると、どうやら彼の選択は合っていたらしい。それを伝えるとふふんと得意げだ。
「偶然じゃ
プレゼントという名の救い
最近、なんかちょっとダメだと思うことが続いていた。風邪を引くし、肌は荒れるし。仕事が忙しくて銭湯に行けていないし、あの人から急に連絡が来たかと思えば返信が来ないし。何か悪いことの決定打があったわけではない。“なんかちょっとダメ”なことが続いていることがしんどかった。もやもやしていた。
そんな今日、ついさっき。プレゼント企画に当選した。
パソコンで悶々としながら文章を打っていたらふぉん、とメール
あまい、あまい、雲。
綿菓子をはじめてつくった。
ぶおおおん、と唸る機械からどんどん薄い雲が出てきて、そこに割り箸を入れて回していく。少しついてきたら、割り箸を動かさないでその場でくるくる回すだけでついてくるから柔らかい綿菓子になるのよ。教えてくれた人はまるで魔法みたいにあっという間に大きくて丸い綿菓子を作ってみせた。
すごいですね、とため息をつくみたいに言うとその人にじゃあはい、と割り箸を渡された。瞬間、慄く。
ヒロインとつまんない女
つまんない、あんたって本当つまんないね。
スクリーンの向こうでヤスコがツナキに言う度に、その言葉が刺さった。血を流しながら夜の街を走るヤスコはつまらなくなんかなくて、本当に美しかった。
疲れないようにしてるんでしょう。
その通りだ、何も言葉が出ない。疲れないように、傷つかないように、笑っている。
『生きてるだけで、愛。』という映画をわたしは完全に、つまんないと言われる男ツナキの視点から
宇宙に伸ばしていた手
将来の夢がない子どもだった。
小学4年生の頃、親たちの前で「わたしの夢」というテーマでスピーチをする会があった。先生が将来の夢について考えておいてね、とにっこり笑ったときに「あーあ、また出たよ」とげんなりした覚えがある。
小さい頃から幾度となく繰り返されてきた「大きくなったら何になりたい?」「将来の夢は?」という質問が大嫌いだった。周りの子はきちんとその時その時で自分がなりたいものを見つけて答