臼井遥比

ライター。主にエッセイ。1995年横須賀生まれ。 2024年2月からニュージーランドに滞在中です🇳🇿 Instagramでは日常の写真を投稿しています📸

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最近の記事

カオス恋しき一時帰国

日本への一時帰国に成田に向かう飛行機内、もうすでにオークランドが恋しい。イギリスの風情残る街並みに、いろんな肌の色の人たちがいろんな言葉を話して、いろんな国の食べ物を食べているオークランドは、毎日が混沌としている。 ある時バイト先にかかってきたアジアンヘイトの電話について思い出す。中華系のタピオカ屋でのバイト中、客が注文をするふりをしてアジア人を罵る電話を受けたことがあった。怒りよりも何よりも、これが差別かと驚いたのだった。 「職場にヘイトの電話がかかってきたんだよね、び

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    • 着の身気ままにニュージーランド vol.7 〜なぜなら現地人だから〜

      フットサルがしたくなった。もともと毎週末、地元のサッカークラブの練習に行っていたから、ボールを蹴らない生活になって恋しくなってしまった。 ある晩、ホストマザーのシェリーンにこの辺でフットサルできるところないかな、となんとなく聞いてみたら、「きっとあると思うわ、ネットでもなんでも探してみたらいいし、楽しみねぇ」と言ってくれた。検索したらバスで15分くらいのところに女性向けのフットサルクラブがあって、この週に活動があると書いてあったから、水曜日に行ってみることにした。 学校か

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      • 3カ月めの備忘録

        こっちにきて丸3カ月。 カバンを盗まれたり乗ってた車が事故ったり。日本での経歴なんて何も役に立たない現実に絶望したり、自分の語学力のなさにうんざりする毎日。 でも一方で、友達と言える関係の人たちがたくさんできたり、頼るといつも「家族なんだからいいんだよ」と言ってくれる人がいたり、帰る場所があったり、物価の高さに一緒に絶望できる仲間がいたりして、相変わらず人に恵まれているなぁと実感する。 日本では出会ったことのなかったムスリムとの暮らしは、案外自分と違わないことに気づいたし

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        • 着の身気ままにニュージーランド vol.6 ~ホストマザーの女優デビュー~

          「私、女優になったのよ!」 ホストマザーのシェリーンはある晩、私にそう言ったのだった。私たちは間もなく夕飯を食べ終わるころで、窓から差し込んでくる夕陽がきらきらと彼女の褐色の肌を照らしていた。 シェリーンは教育専門の講師だったはず。平日はいつも自宅でパソコンに向かっているのを私は見ていたし、女優である片鱗を見たことも聞いたこともなかった。 一体どういうことかと、私が目を丸くして何も言えないでいると、彼女は「明日あなたに見せるわ!」といって夕飯を片づけ始めた。 結局なかな

          着の身気ままにニュージーランド vol.5 ~授業と朝、バターの味~

          朝6時に起きて部屋のドアを開けたら、隣の部屋で暮らすミシェルに初めて会った。ホストマザーであるシェリーンの友人だ。さっぱりと短くそろえた金髪、白い肌に青い目、鼻が高く大柄のミシェルは、階段を降りるところだった。私を見て「おはよう、よろしくね」と軽やかなイギリス英語で言い残し、まだ日が昇る前に仕事へと向かっていった。 身支度をして、シェリーンの言ってくれた通り昨日の夕飯の残りをタッパーに詰めさせてもらってお弁当に。それから湯を沸かしコーヒーを用意して(インスタント)、焼いたト

          着の身気ままにニュージーランド vol.5 ~授業と朝、バターの味~

          着の身気ままにニュージーランド vol.4~ワクドキな学校初日~

          7年ぶりの学生生活が始まる。たとえ世界のどこにいたとしても、入学する前のあのそわそわする感じは同じなんだと実感した。半年間の語学学校生活で、語学は上達するだろうか。そしてどんな人に会えるだろうか、友達はできるだろうか。 入学初日、学校には8時までに着かなければならない。オークランドの中心地にあるので、バスで向かう。2日前、ホストマザーのシェリーンがバスの乗り方を教えてくれていたしと必要なAT HOPカードはすでに購入してある。 朝6時ごろ、部屋の外からシェリーンが「ハル?

          着の身気ままにニュージーランド vol.4~ワクドキな学校初日~

          着の身気ままにニュージーランド vol.3 ~新生活準備~

          ホストマザー・シェリーンと軽く挨拶を交わしてから、荷物を運び入れ、家の説明を受けた。ここがバスルーム、ここがあなたの部屋。冷蔵庫やキッチンに置いてあるものは、基本的になんでも食べていいわ。 でも「洗濯は一人につき、1週間に1回よ」と、かなり厳しい決まり。オーストラリアでもニュージーランドでも、洗濯は週に1回程度、というのが習慣らしい。「もしも急ぎで洗濯したいものがあったら他の人が洗濯する日に一緒に入れるといいわ。でももちろん、困ったことがあったら言うのよ」。 オーストラリ

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          着の身気ままにニュージーランド vol.3 ~新生活準備~

          着の身気ままにニュージーランド vol.2~ニュージーランド上陸編~

          春節の時期と重なったからか、上海発オークランド行きの機内の中は満席だった。ダウンジャケットと片方のリュックが収納に入らなかったので、リュックを足元に置き、上着を膝の上にかけて座った。もちろんエコノミーだから私の膝から下はもう、ほとんど身動きが取れない。 中国なまりの英語のアナウンスを聞いていると「当機はこれから11時間半後にオークランド空港に到着予定です」と流れた。11時間半も乗るのか~とちょっと驚いてしまった。いや、本来驚くべきところでは決してないのだけれど、何時間乗るの

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          着の身気ままにニュージーランド vol.2~ニュージーランド上陸編~

          着の身気ままにニュージーランド vol.1

          2024年2月、28歳留学生活が始まりました。ニュージーランドで出会ったフレンドリーで個性豊かな人々と、さわやかな海と豊かな緑に囲まれる毎日。その断片をエッセイとしてお届けします。 夏空のオークランドニュージーランドに入国してから1週間がたった。この数日、いろんな方から「ちゃんと食べてる?」「眠れてる?」とありがたく心配の連絡をいただいた。ありがたいことに、ごはんはモリモリ食べているし、毎日昼寝をしているにもかかわらず、夜もちゃんと寝ている(寝すぎかも)。 1週間前、夏色

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          着の身気ままにニュージーランド vol.1

          三省堂神保町本店

          夜、会社を出るといつもどっしり構えていた三省堂本店がないのが、なんだかさみしい。 あんなにも東京が嫌いだったのに、気づいたら東京で働いて7年。東京をしばらく離れると思うと、恋しくなる。神保町はエチオピアのカレーは辛さ20倍までしか挑戦できなかったし、キッチン南海には結局行けていない。名店スヰートポーヅは1度しか行けぬまま、ひっそりと閉店してしまった。 なんとなくまだ帰りたくない日は、やさしくネオンが光る三省堂で、ゆっくりとその本の海の中をさまよった。そして帰り道はきまってい

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          三省堂神保町本店