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ひとり時間、大人のわたしに酔う夜
サイゼリヤで飲むグラスワインは、値段以上の価値を持っている。
旦那が夜飲み会になった時、寂しい顔をしつつも、心の中では「よし。サイゼリヤに行こう」とニマニマしている。鳥貴族でも日高屋でもない、サイゼリヤ。
店に足を踏み入れると、部活終わりの学生たちの賑やかな笑い声や、家族の温かい話し声が耳に飛び込んでくる。そんな喧騒の中で、わたしは、ひとり、座ってグラスワインを頼む。
ワインが運ばれて来ると、ふっと肩の力が抜ける。周りの会話を聞くでもなく、スマホをいじるでもなく、ただぼんやりとテーブルの上を眺めているだけでいい。グラスの中のワインは、光を反射して、ゆらゆらと揺れている。
高級なレストランで緊張しながら飲むワインよりも、この場所のほうが、わたしにはしっくりくる。気取らない味が、わたしの日常と似ている気がして、心地良い。
一口含む。ほどよい酸味と、少し軽めのボディ。あぁ、これが好きだ。付け合わせに頼んだのは、「青豆のサラダ」。とろとろの温玉に、粉チーズの塩気が、ワインをもう一口誘ってくる。
近くのテーブルでは学生たちがにぎやかに笑い合っている。ふざけた調子でピザを取り合う姿が、微笑ましくて笑ってしまう。わたしも歳を取ったんだなあ。しんみりと感傷に浸りながら、ゆっくりとひとり時間を楽しんだ。
いつの間にかワインはグラスの底を見せていた。追加するべきか少し悩む。でも、今日はこの一杯だけで十分だ。
明日のわたしに少しだけ余韻を残しておきたいから。
レジで会計を済ませて外に出ると、冬の冷たい空気が頬をなでる。喧騒の中で飲んだあのワインの味が、まだほんのり舌に残っている。
サイゼリヤのワインは、日常の贅沢を教えてくれる。気取らず、けれど心を温めてくれる場所。
「ひとりでワインを慎む大人な女性」気取ったバーには行けないけれど、サイゼリヤなら、わたしはかっこいい大人になれる。かっこいい大人になれる自分に酔いたくて、ついつい足を運んでしまう、そんな場所。
こちらの企画に参加させて頂きました⟡.*
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お酒の中では、ワインが一番だいすきです。
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