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企画参加¦掌編小説¦織光彩

名前も顔も知らない、画面の向こう側のひとを頭に浮かべてみる。だめだ、やっぱり怖い。わたしは、脳裏によぎったものを打ち消すかのように、大きな音を立てて、パソコンを閉じた。

ぼーっとしながら、ふと、窓の外に目をやる。鳥が飛んでいる。鳥が飛んで来る。まっすぐと。わたしに向かって飛んで来る。

「え?!えっ…?飛んで来た…」

わたしに構うことなく、その鳥は急に喋り出した。

「僕、"時間鳥"って言うんだ。なにかを創るのが怖いと思うなら、文章を書くのが怖いと思うなら、面白い世界に連れて行ってあげる。さあ、僕の背中に乗って。」

「ん……?!じかんどり…?!え?喋った?!」

頭が追いつかないまま、わたしはいつの間にか空を飛んでいた。今まで、大きく見えていた世界がとても小さく見える。真上から見る、わたしの世界。

「ここだよ。ここは、"なんのはなしです課"と、呼ばれている国なんだ。」

「なんのはなしです課…?」
言葉をなぞるようにして、口に出してみる。

「ここは、自由なんだ。なにかを書いたら、必ずこの国の王様が受け取ってくれる。そして、ユーモアと優しさを含んだ言葉を贈ってくれるんだ。」

「書いたものを必ず受け取ってくれる…。すごいね。この国の王様はどんな人なの?」

「イケメンだという噂もあるが、それが本当かどうかは重要ではないんだ。女好きだという噂もあるが、女に好かれているのかどうかは分からない。重要なのは、本当かどうかではないんだ。」

時間鳥というものが、何を言っているのか分からなくなったわたしは、この国を上から見下ろすような形で見渡した。

オレンジ。ピンク。黄色。真っ赤。青。緑。色々な色が混ざっている。全てが喧嘩し合うことなく、光り輝いている。

「この国の王様は、想像力がとても豊かなんだ。この国に迷い込む人もみんな。ことばを紡いだり、妄想したり、しりとりを始めたり、歌ったり、その日あったことを呟いたり、書くことを、なにかを創ることを全力で楽しむんだ。」

「……全力で楽しむ…。」わたしは、もう一度呟く。相手の反応ばかりを気にして怖くなっていたけれど、でも。

「この国で、なにか書いてみようかな。王様が受け取ってくれるなら、怖くないもんね。」心がふっと軽くなった気がした。

いつの間にか、時間鳥はどこかに行ってしまったようだ。わたしは、しばらくこの国で彷徨うことにした。

Fin-【972文字】


こちらの企画に参加させて頂きました⟡.·*.

#色見本帖
#織光彩

【織光彩】
もしも、「#なんのはなしですか」に色があるとしたら。織物のように色が重なり合い、光を放つイメージで織光彩しょっこうさい。「色んな個性が光り輝く色」。

こんな風に濃い色に見える人もいれば
こんな優しい色に見える人もいる。
一人一人の個性があって。
柔らかくて温かくて
喧嘩することなく
一つ一つが輝いていて。
織光彩ってこんな色。

CanvaでAIと一緒に画像を作りました🫧

⚠︎︎勝手に「時間鳥」を登場させて頂きました。

#なんのはなしですか

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