今週の読書録
今週は短編集を中心に5冊読了。
リアル書店が近い環境に移住したため、少し前に発売された好みの作品とも遭遇するチャンスが増えました。
コンビニ兄弟2
本屋大賞受賞作家・町田そのこさんの「コンビニ兄弟」シリーズ。
先週に引き続き続編を読了しました。
シリーズ累計15万部を突破した人気シリーズとなっている「コンビニ兄弟」。
2巻目では兄弟の末っ子もレギュラーメンバー化し、さらにカオスな環境に。
傾国の美女という言葉はありますが、人並外れた何かを持つ人物の日常は平穏とは程遠い物…
yomyomでの連載もあるので更なる続編も楽しみです。
次の連載は今春予定とのことなので、年内の続編刊行も期待できるかもしれませんね。
話は戻って2冊目では恋をテーマに登場人物たちの日常が描かれます。
ラストはちょっと不穏な空気を漂わせつつ、続編につながるような伏線も。
早く続編を手にしたくなります。
テンポよく読めるのであっという間に読了。
読むと門司港に行きたくなるコンビニ兄弟シリーズです。
注文の多い料理小説集
料理をテーマにしたアンソロジーは大好きなジャンルです。
柚木麻子さんをはじめ7名の作家さんの作品が詰め込まれた1冊。
特に伊吹有喜さんの「夏も近づく」で登場するタケノコや鰻重の描写が好み。
甘辛いタレの後のおしんこ、その後のお茶は確かに食べた!という満足感があります。
ストーリーよりも美味しそうな食の印象が残る作品でした。
覚醒するシスターフッド
国内外作家10人の傑作短編集。
シスターフッドといえば『らんたん』などの作品で柚木麻子さんがお得意のジャンルの一つです。
らんたんの主人公たちが創設した恵泉女学園は惜しくも生徒募集停止のニュースが最近出ていましたが、日本の女子教育の一翼を担った存在だったようです。
柚木さんの「パティオ8」は、中庭付きのマンションに居住する女性たちを中心にしたストーリーで、『らんたん』が好きな方であれば気に入るテイストかもしれません。
その他にも桐野夏生さんなど国内外の作家さんの作品が一冊につめこまれているので、友情からLGBTまで関係性も多様な作品が揃っています。
食の描写についても国や地域で差がある様子が読み取れるので、多様な価値観をまとめ読みしたい方にはおすすめかもしれません。
令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法
起こるかもしれなかった近未来のデストピア小説。
自家酒造が一昔前の料理のように主婦の必須スキルとされている世界線や現金が使われなくなった世界線など、架空の想定ではあるもののサラリーマン川柳の小ネタなど随所で妙なリアリティが組み込まれています。
これまでの新川帆立さんのリアルな法律知識をいかした作品とは方向性が異なるフィクションらしいフィクション。
ブラックユーモアたっぷりの短編集です。
がらんどう
大谷朝子さんのすばる文学賞受賞作『がらんどう』。
はじめにあらすじを読んだ時には?でしたが、簡単に言うとアラフォー女性二人のルームシェアしているお話。
30後半になって一緒に住めるほど気の合う友人と社会人生活で巡り合えるのは幸運かもしれない。
推し活繋がりで縁が深まった二人は、価値観全般が合うわけではないのに家事分担も苦にならない絶妙な関係。
20代の時には考えもしなかった恋愛観や結婚観。
普通って何だろう…
一世代前よりも多様性が重視される風潮はあるものの、なかなか生育環境の普通の価値観からは逃れられない。
マジョリティではないかもしれないと気づいてしまう苦しさ、割り切るまでの葛藤、周囲からの目。
主人公のラストの選択が印象的な一冊でした。