しばしため込んでいた小説をまとめ読み。
今回は小説5冊を読了。
祝宴
温又柔さんの『祝宴』は、中国や台湾にルーツがあり日本で生活する家族を核にしたお話。
次女の結婚式の夜、自分が最も理解していると自負していた長女からのカミングアウト。
家族とは?普通とは?似たような環境でも人の数だけある普通。
普通とは比較するからこそ考える価値観かもしれないと感じた作品です。
芦屋山手お道具迎賓館
高殿円さんの連続刊行作品からまずは『芦屋山手 お道具迎賓館』。
戦国時代有数のミステリーである本能寺の変と付喪神化した織田信長縁の茶道具たちをテーマにした異色の小説。
高殿さんファンだけではなく、茶道具や歴史好きにも楽しめる作品かもしれません。
幻の茶器が当時はお茶漬け用の茶碗にされていたなんて?!
諸説あるものの、歴史の側面がコミカルに描かれた気軽に読める一冊です。
上流階級 富久丸百貨店外商部 4
同じく高殿円さんの『上流階級 富久丸百貨店外商部』は気づけば既に4冊目。
メディア化もされた作品だけに幅広いファンがいそうな本作ですが、主人公は着々とステップアップを重ねています。
同世代の身としては、今回の体調不良もリアルに感じた要素の一つ。
世相と働く女性の実態を反映させながらも、華麗な別世界を共存させる高窓さん作品の中でもお気に入りのシリーズです。
働き続ける女性が共感できるようなエピソードが重なり、自分がもしも入院手術が必要になった際には誰に保証人を頼むだろうか?と考えてしまいました。
人との繋がりについても思いをはせるようなストーリーで一気読みしてしまう安定の面白さ。
ラストは早くも続編を期待させる流れで、また1年後のお楽しみです。
島津三国志
井川香四郎さんの『島津三国志』は、鈍器サイズの650ページ超え。
島津家中興の祖として有名な島津義弘。
戦国時代好きならば一度は目にする島津ファミリーの幼少期から老年期まで、九州の一大名から九州の雄といわれるまでに拡大した一族に焦点を当てた本作。
関ヶ原の戦場突破はクライマックスではなく冒頭に配置され、大河ドラマのような構成で描かれる流れに、厚さも気もせず夢中で読み進める。
昔語りの聞き手はまさかの人物で、歴史好きには楽しい演出も。
一橋桐子(76)の犯罪日記
『一橋桐子(76)の犯罪日記』は最近メディア化で人気の「三千円の使い方」、お気に入りの「ランチ酒」シリーズの作者でもある原田ひ香さんの作品。
こちらもメディア化されただけに本屋さんでも目立つ位置に積まれていました。
少子高齢化に伴い、実際に起こり得そうな展開。
まだ働けるものの、年金とパート収入だけでは心もとない…孤独な高齢者がたどり着く先は。
原田さんらしいリアルさがありつつも、少しの救いがあるラストにちょっとほっこりする作品でした。