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岡山再発見はワインから

今回はなぜ岡山との2拠点を始めたかについてのお話を。

言ってしまえば、生まれ故郷と東京との2拠点という単純なことなのですが、実はずいぶん前に実家は千葉に移転し、岡山との縁はすっかり薄れておりました。


岡山と私

故郷だけど故郷じゃない

父は北海道、母は東京生まれで、両親共に大人になってからの岡山暮らし。若き両親は、いわばヨソモノ移住者として、岡山で暮らしていたわけだけど、なぜ岡山だったのかは不思議な縁としかいえないそうです。

私は、岡山市で生まれ、小5で倉敷市へ引越して高校までを過ごしました。他の家とは違い、お盆とお正月は、母の実家の東京へ。私にとって、おばあちゃんちに行くとか、ひと夏の懐かしい思い出と言ったものは、東京の下町のイメージ。両親とも岡山弁を操れないので、私も変な岡山弁に。家庭料理の味付けはもちろん、お雑煮も東京風でした。

大学進学をきっかけに上京したのも、親戚がたくさんいて安心という思いも。そのまま東京で就職した時も、岡山にいつか戻るという気持ちはありませんでした。岡山の同級生たちとも東京で会えたりしたので、それほど寂しい気持ちにもならなかったのです。

夏休みも、倉敷に帰るよりも父方の祖父や親戚に会いに北海道に行く方が楽しくて。倉敷にデンマークのチボリ公園ができた頃には何度か遊びに行ったけど、いつの間にかなくなってしまったし…。

そのうち父が退職し、両親は千葉へ移転。母にとっての故郷である東京に近い場所で老後は暮らしたい、という希望からです。一人も親戚のいない岡山に住み続けるより、兄弟姉妹が近くにいる首都圏に戻って来たかったんだと思います。そんな訳で、私の実家は急に千葉に変わったのだけど、大人になってから行く新しい両親の家は、まるで実家感がなく…。

自由に動ける強みを生かして

一方、フリーランスになってから、全国あちこちに出張に行くことが増えました。新潟、山形、福岡、熊本、広島、高知などなど。個人旅行でも、各地の温泉や窯元を訪ねたりして。日本はどこに行っても、その地その地で美味しいものや魅力的な人・モノに出会え、都会とは違う時間の流れや空気感にほっと癒される瞬間がたくさんありました。東日本大震災を経て、都会だからの不便さにも気づいたからかもしれません。

で、地方に行く度に、PCひとつあればリモートワークができる、つまりはワーケーションができると気づき、どこかに拠点ができたら楽しいだろうな、どこが良いかな?などと考え始めていました。いっそのこと、エアビーを活用してフランスに長期滞在しようかな?とも。コロナ禍よりもずっと前で、そんな考えがまだ一般的ではない頃です。

岡山とワイン

そんな時にやってきたのが岡山への出張。福岡のあるクライアントさんを岡山のワイナリーにアテンドするという嬉しい仕事です。その時(2017年)にお邪魔したのが、岡山市のラ・ グランド・コリーヌと、新見市のドメーヌ・テッタ。今ではどちらも有名ですが、グランド・コリーヌの大岡さんはフランスから岡山に移住したばかり、ドメーヌ・テッタはこれからファーストビンテージを出すという頃だったと思います。

これまで、山梨、長野、ボルドーのワイナリーを巡ったことはあったけど、岡山では初めて。岡山ではマスカットなど食用の葡萄が名産ですが、後継者問題などで耕作放棄地が増えていること、それを何とか再生できないかとワイン用葡萄を作っていることなどを知り、自然派ワインがブームになっていたのもあって、とても興味深く話を聞きました。どちらもその熱い情熱に触れ、岡山のワインはこれからどんどん発展していくだろうなと確信しました。ワインって、人を動かすものがありますよね。

それぞれのワイナリー、当時の様子です。
まずはラ・ グランド・コリーヌ👇

まだ苗がこんな感じでした。今はどうなってるかしら
大岡さんがフランスで作ったワインを自ら注いでいただき感動!
葡萄畑の近くの耕作放棄地。今はどうなったかな?

ドメーヌ・テッタ👇

ワインのエチケットにも描かれているパンダちゃん
岡山出身、片山正通さんデザインのワイナリー
ワイナリーのテラスから葡萄畑が一望できました

そしてやっぱり人との出会い

同じ年の初夏、別の仕事で、またまたドメーヌ・テッタへ。日本のワインをさらに深く学ぶきっかけとなり、本当に楽しい仕事でした。

ワイナリーの屋上で開催されたイベント

そこでは、ワイナリーで働く人だけでなく、ソムリエやシェフ、陶芸家、コーヒー屋、ファッション系の人(岡山といえば、やはりデニム!)、建築家などなど、ワインを囲んで面白い人たちと一度に出会い、そこに集まる人の輪の大きさと深さに感動しました。都会でなくても、こんなに食に熱く、面白い人たちがたくさんいるんだ!という衝撃を持って。

生粋の岡山人、東京や海外と岡山とを行き来している人、東京から岡山に移住した人、それぞれ違いはあるけれど、いや、その違いがうまくミックスされて、何とも素敵な空気に包まれていたのです。ここにも、自分の好きなこと、やりたいことに情熱を持って突き進み、生き生きと楽しんでいるカッコいい大人たちがいたんだ!と。もちろん、それまで気づいていなかった私の目が節穴だっただけなんでしょうけど…。同時に、岡山が故郷って嬉しいなぁ、私はやっぱり岡山が好きだなぁと実感しました。

故郷再発見

という訳で、自分のルーツである岡山をもっと知りたい!せっかく知り合った面白い人たちにまた会いたい!という気持ちが高まり、岡山通いが始まりました。瀬戸内芸術祭や岡山芸術交流など、自分が幼い頃にはなかった芸術祭で文化的な魅力に触れたり、幼い頃に住んでいた町を歩いて内田百閒を読んだり(百間川の近くなんです笑)。

知り合った人たちが教えてくれる場所は、観光地とは異なるリアルな魅力に溢れていました。実家が岡山からなくなってから薄れていた縁を、大人になってから取り戻すような感覚で、人付き合いも含めてすべてをアップデートしていった感じです。行く度に新しい発見があって毎回ワクワク。運良く、仕事での接点も増え、広島や岡山での出張の度に日程を伸ばしてワーケーションを楽しむようになりました。巡り合わせってあるもんですね♪

岡山再発見に大いに役に立ったのは、岡本仁さんのこのガイドブック👇

岡山通いの中で好きになったひとつが、毎年秋に美星町で開催される音楽フェス「STARS ON」。これについては、またおいおいお伝えしようと思います。


そうしてるうちに、コロナ禍の到来。緊急事態宣言が続く東京からエスケープするように、さらに岡山へ。いよいよ2拠点生活を本格化しようと決めたのです。と思ったら、千葉の両親が立て続けに入院。介護生活も始まりました。長くなりそうなので、続きはまた次回に。


映画コラム

アレクサンダー・ペイン監督 『サイドウェイ』

最後は、恒例の映画のお話。

今回はワインの話が出たので、やはり金字塔はこれでしょう。アカデミー賞で脚色賞を、ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞している名作です。

「大人になっても不器用なままでいいじゃん。ワインとワインを楽しむ仲間さえいれば。」と思わせてくれます。ノックで始まり、ノックで終わるのも良いですよねー🍷

これまで何度も観たし、何度も励まされてきました。日本公開されたのは2005年。ちょうどその頃から、ワインを飲み歩くようになり、その後、ワイン屋で働いたこともあり、今思えばいろいろと影響された1本です。

アレクサンダー・ペインといえば、オムニバス映画『パリ、ジュテーム(Paris, je t'aime)』(2006年フランス)の最後を飾った作品も大好き。

もうすぐ最新作が公開されるので、そちらも楽しみ。サイドウェイでも主演を演じたポール・ジアマッティと20年ぶりのタッグなんですね。



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