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ICT教育を再考する。

ICT教育という言葉は、学校現場にも世間にも、すっかり定着したように思う。けれど、その言葉ほど、ICT教育は実体として学校現場に浸透しているわけではない。ICT教育を導入するメリットや、学校現場で導入しづらい事情などを、ここでもう一度考えてみたい。

ICT教育の目的

まず、何のために学校現場にICTが導入されるのかを確認したい。文部科学省によると、ICTの強みは以下の3点であるとされている。

1. 多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめ表現することなどができ、カスタマイズが容易であること
2. 時間や空間を問わずに、音声・画像・データ等を蓄積・送受信できるという時間的・ 空間的制約を超えること
3. 距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができるという、双方向性を有すること

これだけを読んでも、正直あまりピンと来ない。まず1については「近所の班を偵察に行こう」という活動や、大きめのホワイトボードに班の結果をまとめて黒板に貼る、個人の意見を短冊に書いてグループ化しながら黒板に貼るなど、従来のアナログな方法で解決できそうな気もする。

2・3については、ハイテクなタブレットや電子黒板を導入しなくても、実物投影機に児童が書いたものを映したり、たまにパソコンをテレビに繋いで動画等を見せるくらいで事足りるのではないか、と思ってしまう。今どこにでもある、年配の先生でも使いやすい設備だけで何とかなるのなら、それでも良いのではないか。文科省の文言にはいつも、リアリティが欠けていて、つい批判したくなってしまう。

本格的にICTを導入することのメリット

それでも、私はICTには可能性があると思っている。なぜなら、実際にICTを効果的に活用した先生の事例を見てきたからだ。それは、私の教育実習先のクラスだった。子どもたちは、タブレットを毎時間使うのは当たり前、電子黒板で授業が進むのが当たり前、タブレット上でのデータの共有や、電子黒板を使った発表などもお手の物といった感じだった。そこで確かに感じたメリットが3つあった。

一つ目は、児童の関心を引きやすいことだ。電子黒板に一斉に画像や文字が表示されると、子どもたちの食いつきが良い。テレビだと少し小さかったり、光の加減で見え難かったりするのだが、電子黒板は大きくてどの席からも見やすい。ポンポンと次から次へ画像や文字が表示され、それに合わせて音読をしたり、クイズに答えたりといった活動は、どの子どもも集中して取り組んでいたように思う。画像だけでなく、音やタイマーなどの演出も効果的に取り入れることで、集中度がさらに増していた。

二つ目は、手間取らずに意見の共有ができることだ。例えば、友達の作文や絵日記を読むといった活動では、相手が読み終わるまで待ってあげたり、席を移動したりすることがあるため、多少バタバタとする。しかし、タブレットを使えば、自分のペースで友達の作品をどんどん読めて、さらにはタブレット上で感想を書くということができる。

三つ目は、教師だけでなく子どもたちが画像や動画の提供者になれることだ。タブレットを片手に植物の観察に行って写真を撮り、自分のフォルダの中に保存すれば、自分だけの植物成長記録が出来上がる。また、友達に発表するときにも、自分の撮ってきた写真を元にして発表することができる。さらに、自分の撮ってきた写真を電子黒板に映し出し、見て欲しいポイントをマーカーで囲うなどすれば、同じ視点を共有しやすくなる。

小学校3年生のクラスだったのだが、その先生のICTの使い方は、完璧だった。自称、県内で一番ICTを使える先生だった。子どもたちも、ICTを活用する授業に完全に慣れ切っていた。小学生は臨機応変な対応力がまだ付いていないので、基本的な授業の流れは同じようにする方が良い。だから、ICTを導入するのなら、どの授業でも本格的に活用して、子どもたちにとってICTを当たり前にするのが良いだろうと思う。

ICTを使いづらい、学校の事情

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