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小説 これは私の夢のはなし

🐑#009 ママとわたし

温かな中でプカプカとわたしは浮かんでいる。
わたしはひものようなモノにおへそが繋がられている。温かすぎて眠くなる。
ふぁとあくびをすると、外で笑い声がした。

「あっ 今ね。動いたよ。」
*外の声の主*が誰かと話している。

「あなたの時もよく動いてたけど。
    元気でいいじゃないの。」
*誰か*が外の声の主にそう言う。 

「ごちそうさま。また来るわ。」
と遠くで聞こえる。
カランカランとドアが開く音の後に誰かが言う。
「有り難うございました。」

「忙しい?電話切ろうか?」
外の声の主がソファーに大きなお腹を気遣いながらよいしょと座りながら言った。
「今、お客さん帰ったところ。」
誰かが「大丈夫大丈夫。」と付け加えて言った。

「ちょっと不安。お母さんの時はどうだった?お兄ちゃんと私を産んだ時?」
外の声の主が誰かに不安そうに言っている。

「あなたの時は二人目だったからまあ大変だったけど時間はかからなかったわよ。
廉の時は大変だったわ。お父さん、店に居たし“すぐ帰って来て”って電話してもうバタバタ。」

誰かが外の声の主に笑って語る。
外の声の主はへえと相槌を打つ。

「そう言えばお兄ちゃん電話かけてきて突然。
“ハルっていう女の子が夢に出てきておまえに似てるんだ。ハルちゃんおじちゃんだよ。”とか言うだもん。それを旦那に言ったら、ハルかぁって影響されちゃってさ。本当に単純なんだからこまるよ。ホント。」

外の声の主と誰かは笑いながら楽しそうに話している。わたしを外の主が優しく撫で擦る。

「廉らしいわね。あのこ、親には自分から何にも連絡してこないんだから。きっと妹の事は心配なのね。ハルって可愛い名前じゃないの。
 お母さんは好きよ。ハルちゃん、おばあちゃん      ですよ。もうすぐ会えるわね。」
誰かは嬉しそうに声のトーンが上がる。

「もう。お母さんまで。やめてよ。」
外の声の主はケラケラと笑う。

「あなたの好きなサンドイッチ用意して待ってるから、安心して産んで赤ちゃんと帰ってきなさい。お父さんなんか真ん中のテーブルに赤ちゃん用の椅子置いて、もう気が早いんだから。」
誰かが外の声の主に笑いながら言った。

誰かの横から低い声の咳払いが聞こえる。
「余計な事言うなよ。」
照れながら呟いているらしい。

「店の?お父さん早いよ。まだ産んでないし。
   久しぶりにお父さんの煎れたコーヒーとお母さんのサンドイッチ食べたいな。
  この子連れて帰ったらおもいっきり甘えよう。」

外の声の主は子供のように誰かに言う。

「お母さんになるんでしょ。もうこの子たら。」
外の声の主に誰かは優しい声で言う。
「そうでした。」と外の声の主はエヘヘと笑う。


「あらもう、こんな時間。また電話するわね。
    身体に気を付けてね。冷やしたら駄目よ。」
誰かは外の声の主を気遣いながら慌ただしく言った。

「うん。わかってる。ありがとう。またね。」
外の声の主は寂しいそうに言う。
携帯を切ったあと外の声の主はため息をついた。

クゥンと犬がお腹にいるわたしを鼻でつつく。

「赤ちゃんを心配してくれているの?」

外の声の主は犬の頭を撫でながら言う。
わたしも犬をお腹の中から撫でる。
犬は目を細めて嬉しそうに外の声の主の横でフセをする。


「赤ちゃんも撫でてるのかな。」
外の声の主は犬に優しい声で呟いた。
犬は外の声の主にクウンと甘える。


 わたしはわたしの母になる人に呟いた。

「ママ、寂しくないよ。わたしがいるよ。」

わたしはママから生まれて人生が始まる。
そしてすべての夢を忘れてしまう。
ふと、*夢の人を思い出した。
彼は虚構の人ではないならだれかの大事な子供になったのだろうか?
これから沢山の人にわたしは出会う。
沢山の苦悩や悲しみが待ってる。
夢や希望も握りしめた手に持ってる。

「大丈夫だよ。」わたしは小さく呟く。

👶これはわたしの夢のはなし👶

*外の声の主*  わたしのママ
*誰か*  わたしのママのお母さん

あとがき


これは私の夢のはなし#001~#008 をよろしければそちらもご覧ください

👶これは私の夢のはなし👶をお読みいただき有り難うございます。
どなたかの目にとまれば嬉しく思います。

また夢のはなしでお会いできれば幸いです😃

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