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老人と赤い花柄の傘

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この物語は人にはターニングポイントがあると思い描きました。 主人公の私(シュニン)はやる気がない人ですが老人に出会って自分を変えていく話です。 コロナウイルスの混乱で私の周りも世…
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#何気ない日常

小説 老人と赤い花柄の傘11 終雨

小説 老人と赤い花柄の傘11 終雨

『次は天気予報です。今日の天気は晴れのち曇り、にわか雨があるでしょう。
傘を持ってお出掛けください。』

そろそろ昼のニュース番組が終わる時間だな。
私は「よいしょ」とソファーから立ちあがる。
腰を擦ると「歳には勝てんな。」
独り言を言った。
ピンポーンとチャイムが鳴った。
鍵がガチャガチャと開き玄関のドアが開く。
「じいじい。」
可愛い声が聞こえてきた。
「お父さん。公園に行くでしょう。
傘持っ

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小説 老人と赤い花柄の傘8 八雨

小説 老人と赤い花柄の傘8 八雨

休日の真昼の電車はかなり空いている。
今の時期は尚更か。
私は朝の夢の続きを思い出していた。
確かあの赤い花柄の傘の事を聞いたような聞いてないような。曖昧だ。
私は自分の記憶の悪さに嫌気が差す。
なんだかんだ思いながら会社に着いた。
会社の自販機でブラックの缶コーヒーを1本買う。
自分が飲む為のものではない。
(やっぱり居ると思った。)
職場のデスクにつくと後ろの席の同期が休日出勤していた。
よく

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小説 老人と赤い花柄の傘7 七雨

小説 老人と赤い花柄の傘7 七雨

「デジャブか?」
夢の中で呟いた。
公園の木々も紅く色づいてきた頃、大きめの受注を貰えたので報告がてら私は老人がいるかも知れないあの公園に足を向けた。
老人は孫のボクとボール遊びをしていた。
「こんにちわ。」
私は老人に挨拶する。
老人は「こんにちわ」と返してくれた。
「今日はちょっと大きい仕事が貰えたので報告にきました。」私が誇らしく言った。
「良かったですね。」と笑顔で老人が言葉を返してくれた

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小説 老人と赤い花柄の傘6 六雨

小説 老人と赤い花柄の傘6 六雨

家に着くと買ってきた雑誌と本を黒い革の鞄から出してソファーにポンポンとリズム良く置いた。
いつも通りに洗面所に行くと手洗い、うがいをする。この生活にだいぶんとなれた。
いや、慣れさせられた。
Tシャツ短パンに着替えるとキッチンに行く。
「疲れた。金曜日だもんな。」
独り言を言いながらスーパーで買ってきた食材をエコバッグから出すと冷蔵庫に卵、ビールをポンポンリズムよくまた入れる。

「腹減ったな。白

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小説 老人と赤い花柄の傘3  三雨

小説 老人と赤い花柄の傘3 三雨

「もしもし、俺やけど。」
「俺って誰や?詐欺やな。お断りやで。」
私は久しぶりに母に電話した。

「詐欺って息子に酷いやん。俺ってわかってるやろ。番号出たし。」
私が言うと母は大爆笑して「ごめん。」と謝る。それから立て続けに質問してくる。
昔から母は矢のように言葉を飛ばしてくるが、かなりパワーアップしていた。
「どうしたん?珍しいやん。あんたから電話なんて?具合悪いんか?仕事大丈夫なんか?彼女でき

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小説 老人と赤い花柄の傘2  二雨

小説 老人と赤い花柄の傘2 二雨

「じゃあ、管理職だったんですか?」
私が老人に聞くと遠慮がちに答えが返ってきた。
しかも、話を聞けばかなりの大手企業だった。
「部長まではいきましたね。
ワタシなんて務まるかなと思ってましたけど、何とか定年までは頑張れました。」

「凄いですね。僕なんてまだまだ主任止まりですよ。しかも、大手なんて羨ましいです。」
私の言葉に「まだ、お若いから大丈夫ですよ。」と老人は言う。
私は若いとは言う歳ではな

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小説  老人と赤い花柄の傘1   
一雨

小説 老人と赤い花柄の傘1 一雨

老人と赤い花柄の傘🌂  一雨

「しまった。電車行ったか。」
駅の改札口で立ち止まった。
私は会社に一度戻るのを諦めた。

“打ち合わせが長引いたから*午後一の会議は欠席します。そのまま客先に行きます。”
と会社にメールを送る。
”分かりました“とだけ返信が早く返ってくる。

駅のコンビニで昼食のおにぎりと緑茶を買うと、駅の近くの少し大きな公園を見つけ日陰のベンチに腰掛けた。

風が心地よく木々

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