《絵本レビュー》最後の散歩道
膀胱鏡検査をしてきました。というのも、毎年1月に膀胱炎になってまして。
先生が膀胱癌の検査やら膀胱鏡検査やらを進めてこられまして、まぁ初めてだし安心の為に受けたんですがね。
そこまでする必要性を疑う私もいたわけです。大人と社会の闇を感じます。
ということで今日は実際の介護殺人をもとにした絵本【さいごの散歩道】のレビューをしたいと思います。
〔文〕長嶺超輝
〔絵〕夜久かおり(絵本は今回初めて)
〔初版〕2019年3月
《ストーリーについて》
主人公ハルは車イスの母親の認知症介護のために仕事を辞めた。復職もできず区役所へ支援を求めても十分な助言を得られない。
遂には生活費も底をついたある日の散歩道、ハルが母に犯した事とは!?
この物語は、京都伏見介護殺人事件(実話)を基にした介護離職者ハルのフィクション。
《10コの好きなところ》
【表紙・裏表紙】
表は、幼少期のハルが母親の編み物を見ている様子が、描かれていて温かくも切ない。
【見返し】
漆黒な色の用紙で、ハルと母親のこれから始まる悲劇の転末を想像させられる。人の黒さ・社会の黒さ・感情の黒さである。
【題字の文字】
なぜに、〝さいごの散歩道〟の〝の〟だけ強調されるデザインにしたのだろう。しかも、黄色で….そこに希望をかけたかったのかな。
【絵】
悲劇の話であるのに、背景がすべて肌色ベースでずっと描かれてある。ハルやハルの母親の温かさが強調されているようにも見える。
ハルの母親が長めに編み上げた真っ赤なマフラーが印象深い。
【文】
母親と息子、2人の〝最後の散歩道〟のやりとりが、優しすぎて苦しい。
認知症の症状、それを介護する苦労が切々と表現されている。
首を絞めるシーンは特に切なさと共に社会に対しての怒りや絶望感を抱くほど。
【構成】
ハルの介護に対する苦悩→ハルが母親を殺害→裁判(異例の執行猶予3年の判決)→社会復帰
【キャラクター】
親子仲良しだったんだろうなって思わずにはいられない思い出が詰まっている関係性のように思える。
【舞台設定】
メインは河川敷、2人だけの世界観がより強調されている。
【しかけ】
冒頭に、ハルの母親が自分が編んでいるマフラーをみて『表のきれいなところだけ、あげられたらいいのにね』という部分に、この物語全てが詰まっていると思う。
【ハッピーエンド】
今回は何を持ってハッピーエンドか悩んだ。この物語だけでいうとフィクションなので、社会復帰になるのだろうけども、実話は事件の8年後に自殺している。
《読み聞かせをしてみて》
今回は71ページもあり内容も大人向けだったので娘たちがもう少し大きくなったら読ませてみようと思いました。
必ず読み聞かせしますので。娘たちがどういう風に感じるのか興味深いです。
私の感想としては、他人事ではないと感じるばかりでした….本を読みながら、あるページで号泣してしまいました。
《おしまいの言葉》
巻末に、【弁護士】【臨床心理士】【介護離職防止アドバイザー】による解説付きで〝どうすればよかったのか?〟がそれぞれの立場から書かれてあります。
介護は、社会問題でもあり誰にでも私にも身近な個人的問題でもあると考えます。
困った時は、お互い様の精神をもって広範囲の領域から支援やサポートが受けれる体制があればと。
そして、私たちもやはり、知識をつけておくことも大切だなと思いました。
人を頼るだけではなく自分で探す力も大切なんですよね。
なんでもそうですな。
人は1人じゃ生きていけません。
誰しもがお母さんから産まれてきたのだから。
〝人に頼らない事=自立〟とは違うんですよね。
自立って何だろう?
優しいとは何だろう?
では、またっ☆彡。