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言の葉の詩集🌿
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2023年8月の記事一覧

壁

人間、この空虚な壁から突出した生きもの

ひとつ出来た
ふたつ出来た

真空の階段を少しづつ昇り
その肌のぬくもりもいつか忘れてしまうのに
笑顔を汲んで
いつも満たされたくて踠いている奥のおく

こんなにも嬉しかったことや
こんなにも悲しかったことが

忘れるという仕業の前に
もろもろと崩れて落ちて

フロントガラスの向こうに
積み重ねてきた日常を探すが
何処にも見あたらない

すべて壁が持ち去っ

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ニンゲンミ

ニンゲンミ

人間み人間見
私は見てきた

人間み人間実
それは卵子と精子の実

人間み人間身
身を挺し

人間み人間味
生を世を味わいつくし

人間み人間水
水から這いで
土に帰る

ニンゲンミ
胸をはって
言えるだろうか

殻

彼は、それまでの彼と違っていた
まるで神々しい
物腰がこの世の人でない

七日目に姿を消した

彼の部屋には
背中の割れた半透明の殻
彼は彼を抜けでたのだ

窓を放つと熱風と
蝉の鳴き声が
飛び込んできた

殻が風に揺れ
乾いた音を立てていた

おごそか

おごそか

ピアノの調律をしていると
「おごそか」な気持ちになれるんです
とテレビの中の人が言う

平日に「おごそか」が新鮮だったので

狭い台所にたって
「おごそか」に米をといでみた

神苑の玉砂利をいく
神主たちの足音が聞こえてきた
早朝の汚れない空気が流れて
指の先々たちがひんやりする

ミルク色の水が
すこしづつ透明になっていく
こころも透明になっていく気がして

「おごそか」はひらがなだった

「お

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いきた

いきた

今日も生きた
今日を生きた

誰のためでもなく
自分の為でもない

生きた

生きていていいと許したので

生きた

お腹が空いたから
眠いから

生きた

脳みそを削ぎ落とし
ナマで生きた

醒めない夜

醒めない夜

午前1時のポストに
投函された朝の音
夢に谺し波紋が広がっていく
耳が目を凝らして 
朝を見つけようとするが
朝はなく
時計が嘲笑っていた
終戦記念日の朝に

戦争に加担した音楽家、詩人、画家、
加担せざるを得なかった音楽家、詩人、画家

屈しなかった音楽家、詩人、画家は

拷問死

メディア操作の世界はもう朝だという
忍び寄る朝に未だ夜は醒めない

水

あふれる
透明な水
ぽぽ
ぽこぽこ
ぷわ
ぷわぷわ

あふれるのは何処から?
それはカラダの中から
カラダの奥から

讃えているよ水を

言葉の呪いがある
言葉は音だから

気をつけよ

水を濁らせること