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ベートーヴェンを毎日聴く196(2020年7月14日)
『ベートーヴェン/ソナチネの2つの楽章 WoO50』を聴いた。
ベートーヴェンを毎日聴く196
— Harayan (Herbert von) (@HarayanV) July 14, 2020
ソナチネの2つの楽章 WoO50。1790〜92年
約2分半と短いが2楽章制。終楽章は30 秒ほどなので断章なのかも?直後に生まれるピアノ・ソナタ作品への橋渡しになるだろうが、第1番はこの作品に比べるとかなり革新的に思えるような差を感じる。 pic.twitter.com/P0Qf09jVqY
この作品は生涯の友となったウェーゲラーのために作った作品。ウェーゲラーはベートーヴェンの死後、フェルディナント・リースとともにベートーヴェンの回想録を出版している。
この回想録については「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」の中でスリリングな展開の中出てくるし、リースを主人公とした「ベートーヴェンの愛弟子: フェルディナント・リースの数奇なる運命」でも触れられている。どちらもとても面白いのでぜひご一読をお勧めしたい。(双方とも、かげはら史帆:著。「ベートーヴェンに関する伝説的覚書」として記載)。
ウェーゲラーがピアノを弾いていた、ということをこの作品によって知った。自筆譜には指使いの数字が細かく記載され「私のためにベートーヴェンが書いて指定した」とも書かれている(1ページ目の右余白)
この自筆譜。ベートーヴェンの苦労の跡が見える面白いものでもある。このソナチネは2曲あるが、まず1曲目は2枚目(1枚用紙の表裏の裏)から始まっている。そのまま曲を書き進めるが、曲の終わりが最後に入りきらなくなってしまった。なので1枚目に戻りその5段目の冒頭から2小節に追加して書いている。
1枚目の4段目の1小節までは、実はすでに別の曲が書かれていたのである。ではこの別の曲はソナチネの2曲目かというとそうではなく、クリスティアン・フリードリヒ・ダニエル・シューバルトという作曲家の作品をベートーヴェンが書き写したものらしい。これはベートーヴェンがウェーゲラーのピアノ練習のために選んだものなのであろう。自分の作品以外を推薦するのも珍しいのでないだろうか。
話はそれるがクリスティアン・フリードリヒ・ダニエル・シューバルトという人物。フランツ・シューベルトの有名な歌曲「ます(鱒)」の作詞者でもある。「ます(鱒)」は作詞:シューバルト、作曲:シューベルトという紛らわしいものなのである。
ではソナチネの2曲目はどこに書いてあるのか?それはシューバルトの曲が終わったあと、1枚目の4段目の2小節めから始まる。でも下の5段目の冒頭2小節にはソナチネ1曲目の最後が書かれている。なので、4段目を書いたあとの続きは、ソナチネ1曲目の最後の部分あと、途中で現れるト音記号に続いて書かれた。
でも、最後の最後、どうしても足らなくなってしまった。なので付け足して小さくしてなんとか収めた、という次第。
なんとも場当たり的な楽譜の書き方は微笑ましくも思えるが、せっかく指番号まで丁寧に書いてもらっても、こんな複雑で細かい楽譜、もらったウェーゲラーはどう思ったのだろうか?