「雪化粧」 # シロクマ文芸部 # 毎週ショートショートnote
「雪化粧だわ。綺麗だから虎ちゃんも見においで」
ママは朝一番でカーテンを勢いよく開けると、思わず感嘆の声を上げた。おっぱい山を背景に辺り一面が真っ白に染まる銀世界。
「ねぇママ、ゆきげしょうって何 ? 」
小学1年の僕にはそんな難しい言葉は分からない。
「今、外に見えてる景色のように、雪が積もって、景色がとっても綺麗な真っ白になることよ。あ、あんなところにお友達のさんごちゃんが歩いてるじゃない。随分早い登校ね。虎ちゃんもお菓子食べたら準備してすぐ行くのよ」
ママがその白い手で何やら大きな箱から美味しそうなお饅頭を取り出す。何だかすごくいい匂いがする。
「ママ、これなに ? 」
「京都の三羽烏おじさんが送ってくれた大阪のお土産よ。月化粧って言うんだって。『大阪みやげと言えばこの月化粧か551の肉まんかたこ昌のたこやきや』って言うてはったよ。さぼてん主婦さんも前に同じこと言ってた気がする。大阪では有名なんやろねぇ。隣町のスズムラさんにもお裾分けしないとね。あのお宅は旦那さんが会社の課長されてるから、配送ロボット、『ドローンの課長』で運んでもらいましょう」
「虎ちゃん、食べた ? もう行かないと、はい玄関で靴履いて」
無理矢理、僕に靴を履かせて家のドアを開けた瞬間だった。◯沼◯美子風のおばちゃんがちょうどジョギングで家の前を通った。
「ママー、見て見て、ゆきげしょう ! 」
「そうそう、綺麗でしょう。指さしてるのは何 ? ···」
「や、やめなさい💦あれは厚化粧って言うの ! 」
ジョギング中のおばちゃんとママの視線が一瞬合い、2人は雪化粧ばりに顔面蒼白になった。
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2つの企画に参加させていただきました。
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※ 優谷美和さんのヘッダー画像をお借りしました。
※ 続気楽な散歩。さんの画像をお借りしました。
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