『バザールカフェ ばらばらだけど共に生きる場をつくる』を読んで
とあるSNS投稿から
本との出会いは、結構「突然」にやってくる。
もしくは「偶然」だったりする。
今回の本は、著者の一人のSNSからだった。
多くの知人がよくいく場所。
わたしはまだ行けていない場所でもある。
なので、あくまで本を読んだ感想でしか、書けないのだけど、感想を書いてみたいと思わせる、そんな本だった。
信念に基づく実践
よく、「理念」「ミッション」みたいなことばで、実践を語ることがある。
それは、自身の「理念」でもあるし、所属する組織、いわば法人や会社組織の「理念」でもある。
わたしの所属先で言えば、「地域福祉の推進」とかそういうことばで語られる。
でも、これって、正直「ピン」っとこない人の方が多い。
実際に、うまく説明できないことが多い。
自分の法人なのに。
自分の仕事なのに。
この本で語られている実践は、理念とか、ミッションとかそういうことばではなく、集う人の「信念」のようなものを感じる。
カフェでの理念が、ひとりひとりに浸透して、それが「体現」されている場。
体現される方法は、いろいろあってみた感じは「バラバラ」だ。
でも、人を大事にし、ありのままでいることを肯定するという大きな軸が貫かれていて、これは理念というよりも信念ということばの方が、ピッタリな気がする。
それでいて、どの筆者も同じことばでその場所を語らない。
どの言葉も、その場を言い当てるには「一部」や「側面」になるからかもしれない。
そして、その一部や側面であることを理解しているからなのかもしれない。
「距離感」の一つのこたえ
こういう仕事をしていると、後輩からも、実習生からもよく言われる。
「相手とどういう距離をとったらいいのか」
新人であれば、なおさらかもしれない。
実際にわたしもそう思っていたこともある。
地域福祉の現場では、住民やボランティアとの関わりが大きい。
その中で、「先輩の○○さんは、こうしてくれた」とか聞くこともある。
“じゃあ、自分もしなきゃいけないの?“
“必要かどうかわからないけど、やったほうがいいのか“
“いや、明らかにそれって必要なことじゃない気がするけど“
みたいな、葛藤もあるし、○○さんはいい人で自分はできない人みたいに感じることもある。
でも、一定の経験年数を重ねると、一つのこたえにたどり着いた。
相手と自分の距離感は、「相手」と「自分」が決めるもの
そもそも、ソーシャルワークって人と環境との交互作用。
寄り添い、人や周囲環境との関係構築を行っていく対人援助。
線を引くとか、距離を取るとか、それってソーシャルワーカーは画一的である必要ではない。
ここが、ソーシャルワークの「引き継ぐ」ときのむずかしさの一つかもしれない。
正直、この本でのソーシャルワークは、ほんと、一線を超えちゃってて、たぶん、真似できない。
でも、わたしのたどり着いたこたえと照らし合わせると、違和感はない。
ここでの実践者とそこにいる人の距離は、その人たちが決めていると読み解けたし、なによりもそのことにそれぞれが理解していると感じられたから。
誰かはやってくれたのに、いうセリフは、真に相手との関係ができていないからこそのセリフなのかもしれない。
多様性のなかの「自覚」と「自戒」
わたしは、自分が多様性を認める価値観が薄いのではないか、と感じることがある。
どこかで人をステレオタイプ的に判断してしまっているし、自分のフィルターがあることもわかっている。実際に、そういうフィルターをかけて物事を見てしまっていて、注意されたこともあるし、そうなってしまうぐらい視野が狭く、そうして自分を守っていることもわかっている。
それでは何にも守れないし、解決しないのだけど。
思考はなかなか変えられない。
年齢を重ねれば重ねるほど、むずかしいとも思っている。
でも、その「傾向」に気づいていること、は大事だなっと思う。
以前、ドラマ「silent」で、手話通訳をしている人にこんなことをいうセリフがあった。(ちょっと正しいかは自信がない)
“優しそうですもんね“
福祉の人って、優しい人だと思われることがある。
誰に対しても。
でも、そんなことはない。
自分の家族には優しくないし、仕事が詰まってくればカリカリする。
完璧でもないし、もっといえば、失敗も自分が至らないこともいっぱいある。
相手と向き合うことが難しいと感じて、逃げたくなることもある。
ソーシャルワーカーも人である。
でも、弱い、できないことを晒すのは勇気がいる。
たぶん、ソーシャルワークや福祉など対人援助職の人でなくてもその感覚はあるんじゃないかな。
自分ができないことを人に知られるのは怖い。
それって、実はみんな持つ感情だ。
それを公開できるか。
自分も人であり、弱いんだと自覚して、その上に謙虚に自戒をし続ける。
そうありたいと思っている。
改めて、自分がどうありたいのか、も考えさせられる本だった。
ソーシャルワークも丁寧に解説されているところもあり、福祉に関心がない人も読みやすい。
一気に読めて、深く、福祉とは、多様性とは、社会的包摂とはも考える機会にもなる。
社会的包摂と経営にも、少し言及されていて、「現実」的なことも晒してあるのも、いいと思う。