『文芸ムックあたらよ 第貮号・特集:青』 初読感想文1
昨年、未読感想文を公開しましたが。
未読。つまり読んでいない状態でお話ししたわけです。
というか、発売前だったので。
『文芸ムックあたらよ 第貮号・特集:青』。
発売しました。
拝読いたしました。
ということで初読感想文です。
初読なので読み込みがちょっと浅いかもですが。
ちなみに。
1月19日文学フリマ京都でも販売されるそうなので、気になった方はぜひ。
1 青というテーマ。
『文藝ムックあたらよ』は。
第一号が『夜』。
第二号は『青』。
というように毎回テーマがあります。
このスタイル。楽しくて。
テーマに合わせた装丁もおしゃれで美しく。
小説、短歌、エッセイ。
それから第二回あたらよ文学賞受賞作品も、読者投稿もテーマは青。
たくさんの作品が「青」という一つのテーマで描かれます。
様々な表現法による青のヴァリエーション。
例えば海。あるいは青い宇宙船を表題にした連作短歌。
青にまつわる小説、または数学の問題集青チャートを取り上げたエッセイ。
チョークの青。青空。青い地球。青い血。
ブルーハワイ。青い塩。ブルーチームというIT用語。
殴られて目の中で光る(!)青や「留年して青春」の青。
蛸の青、鯖の青までさまざまなイメージが繰り広げられる物語の数々。
なるほど確かにそれも一つの青の形だと納得させられたり。
え? それも青? と驚かされたり。
美しいもの、面白いもの、ときに切なく苦しいものまで。
ページをめくるごとに楽しくて。
私にとってはこのスタイル。意外な効果もありました。
普段、私は古い海外文学ばかり読んでいるのですが。
(しかも再読が多いので読書範囲が極端に狭い。)
今回このムックを拝読するにあたって、いつもはほとんど読まないジャンルのものもいつの間にか読了していました。
テーマの「青」。
さて、このジャンルならどんな青になるんだろう、と興味が湧いて。
というかジャンルなど気にするまでもなく青の変奏に興味を惹かれて。
私にとっては他ジャンルを読むための入り口としての効果があったかなと。
そういう意味でもなかなか面白い企画だと思いました。
2 最終選考会と受賞作
「定義に囚われない面白い小説であればジャンルは問わない。」
と、募集要項にもあった通り。
受賞作品のジャンルも様々。バラエティに富んでいます。
美しいイメージ溢れるダークファンタジーとか、再現度高めのアイドルファンのお話とか。
編集長の百百百百さん(ささももさんとお読みするそうです。)が『今っぽさ』を感じるとおっしゃっていたのですが。
確かにさまざまだけれど「今っぽい」かも知れません。
また。最終選考会の様子が30ページ近く掲載されています。
投稿する側としてこれは本当に嬉しいことです。
1次選考、2次選考、最終選考に至るまでの過程もnoteで公開されていて。
毎回丁寧で温かい批評が大変有り難かったのですが。
ムックでは。
最終選考に残った作品を一つずつ取り上げ、選考委員の方々がお一人ずつ丁寧に講評をしてくださっていて、とても勉強になりました。
選考委員の方同士で結構意見が分かれていたり、熱い思いを語られていたり。
たくさんの作品を丁寧に読み込んでいくのは大変なことだ思い、頭が下がりますが、とても楽しそうにも感じられて。
こんなふうに決まっていくんだなあなんて面白く拝読しました。
また。
受賞作品と一緒に最終選考会の様子が掲載されるというのは、応募者としてだけでなく、一読者としても面白いかも知れません。
講評を読むと作品に興味が湧きます。
私は講評を読んで気になったらすぐ、その受賞作品を探して読む、ということを何度も繰り返し、講評と受賞作品を行ったり来たり。
気がついたらほとんどの受賞作品を読み終えました。
逆に受賞作品を読んでから講評を読んでも違った面白さがあるかもしれませんね。それもやってみればよかったなと後から思ったのですが。
どちらでも面白そうです。
二重に作品が楽しめると思います。
また、最終選考に残った作品は全て丁寧に講評されています。
残念ながら掲載されなかった作品もあるのですが、講評を読むとそちらの作品も読んでみたくなります。そこで探してみたのですが。
noteで公開されている方がいらっしゃいました。
繊細で切なく美しい青の物語。
素敵なお話しでした。
第二回あたらよ文学賞は一人一作の応募なので、きっとどの作品もその作者の渾身の一作。
「渾身の青」なのだと編集長もおっしゃってましたが。
本当にそうだなと思いました。
それから私のことで恐縮なのですが。
拙作『降る雨の如く』(渡瀬十四という筆名です)を佳作に選んでいただきました。
読んでいただけたら、そして感想等いただけたら嬉しいです。
佳作を受賞された守崎京馬さんが『降る雨の如く』の感想をnoteに上げてくださいました。
とても丁寧で素敵な感想で、大変光栄です。
本当にありがとうございました。
お許しを得たのでリンクを貼ります。
気を引き締め、精進したいと思います。
今回は、テーマと文学賞に絞ってお話ししましたが。
ムックの冒頭には『物語のつくり方』と題して、各方面で活躍されている作家の方々の座談会の様子が掲載されています。
こちらも興味深く拝読いたしました。
物語を作る作法とかこだわりはさまざまですね。
勉強になりました。
昔の作家の物語ばかり読んでいる私ですが。
「文藝ムックあたらよ」のおかげで拙作を読んでいただいたり、他の「今の」作家さんを感じたり、貴重な体験をすることができました。
編集長の百百百百さんに、選考委員の皆様に本当に感謝いたします。
さて次回なのですが。
私は単なる応募者の一人なので、掲載された作品を語る立場にはいないんじゃないかとか、どの作品がいいとか言うなんて本当に恐れ多くて躊躇われるのですが。
すごく好きだなと思った作品が幾つかありまして。
せっかくなので「この作品のここが好き」というお話をしたいなと。
いや本当に烏滸がましいのですが。
あくまでも批評とかではなく作品に対する「好きな気持ち」を表現させていただければ。
ちなみにそれは。
ある日突然赤ピーマンが青く見えるようになってしまった女性が原因を求めた果てにたどり着いた答えは? という話、と。
(ささやかな日常描写が丁寧で、不思議な現象との絶妙なバランスが好きです。)
ほぼ全文七五調(!)の古めかしく流麗な文体で語られる悲しい姉と弟の物語、と。
(文体のリズムが心地よくて、でもお姉さんの過酷な生涯とそれでも曇ることのない優しさに涙しました。)
コロンビアでマジックリアリズムを実現させる魔術師。に出会った男性。が日本の公民館で講演するのを聴きに行った僕。が体験したちょっと不思議なお話。
(この入れ子構造みたいな形がすごく好きです。)
この三作の「ここが好き。」をお話ししたいと思います。
次回。
『文芸ムックあたらよ 第貮号・特集:青』 初読感想文2 この作品のここが好き
①ファビアン『#00a0e9』
②守崎京馬『零れ藍』
③マルクス・ホセ・アウレリャノ・シノケス『マコンド』
2025年1月21日公開予定です。